戦闘~6~
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空からの攻撃。後方から迫る敵。きっと四面楚歌とは、こういう状況のことを言うのだろう。
そんな中で私は、アローンさんたちに感謝していた。
皆が体力をつけるよう、いろいろ訓練を課してくれたから。おかげで立ち止まらず、走り続けることができる。
だけどセドナーが倒れた今、平野まで逃げ続けることは無理。
なにか別の……。
ちょうど少し飛べば掴まれそうな、太い木の枝が前方に見えた。
「………………」
この枝に飛び移れば……!
枝に手を伸ばし掴むと、懸垂の要領で体を上げる。そしてすぐに枝の上へ飛び移り、素早く弓を構える。
思った通り! ここは後ろから迫るディランたちが、よく見える。
ひゅん!
水の矢を放つ。
ディランたちは思わぬ方向から飛んできた矢に対処できないまま、水をかぶる。
たかが水だと思うかもしれないが、いきなり眼前に現れた水の塊を浴びれば、誰でも目を閉じ、動きを鈍らせる。
さらにもう一度彼らの足元に水の矢を放ち、足場に泥濘を作る。
この隙にと地面に飛び降りる。地面は土なので足を痛めることなく、また走り出すことができた。その直後……。
「また……!」
空から降ってきた矢が、何本も地面に刺さる。
それでも幸い、ホーベル王国は弓矢の訓練を、兵士にあまり課していないようだ。ディランの部下と同様、魔法使いたちの弓矢の腕も、お世辞にも上手とは言えない。
ただ数があれば、まぐれでも当たる。一本の矢が腕をかすめ、そこに熱が走るが、耐えて走る。
立ち止まるな、立ち止まるなジャスティー。動きを止めれば、恰好の標的となる。足を止めれば追いつかれ、殺される! 生きたければ、走れ!
己を叱咤激励するが、ディランたちは執拗に迫ってくる。女王の命令を遂行しようと、必死なのだろう。
馬と人間の足では比べ物にならないので、距離は縮まるばかり。
振り向けば、ディランの部下たちが弓を構えている所だった。
「……っ」
また手頃な枝を見つけ、今度は鉄棒の要領で体を曲げて、くるりと回転させるように動かせ、放たれた弓矢を避ける。
そのすぐ真下を、ディランたち一行が駆けていく。急には止まれなかったようだ。
「はっ!」
体を回転させ勢いをつけ、ちょうど真下を通りかかった敵の後頭部を蹴ると同時に、手を離し、着地する。
後頭部を蹴られた敵は、脳が揺さぶられた影響か、馬の上で崩れた。
「くそ! 小娘が、一丁前に!」
馬を止めたディランが忌々しそうに叫ぶ。
「言ったはずよ、ディラン! 私はアローン様とアコッセ様の弟子だって! 最高の武人である彼らに訓練を受けたもの! 簡単にやられはしないわ!」
口ではそう反論したものの、ついにディランたちに追いつかれたと焦る。
この距離では、魔法具の弓矢も使い物にならない。魔法が炸裂する前に、彼らは眼前に迫るだろう。
となると……。私の武器は、普通の弓矢。短剣。地理の利。
これらをどう生かせば、ここを切り抜けられる⁉ どうすればいい⁉ 考えろ、諦めるな!
ディランの合図に従い、三人の敵が馬から降りると剣を抜き、私に向かってくる。
まずい! さすがに三人連携の攻撃では、私の腕で防ぐことは難しい!
それでもアローンさんの教え通り、目を閉じることなく、敵を見据える。
……防げないではない。防ぐしかない! それしか私の助かる道はないのだから! やるしかない!
「あああああああああ!」
奮起しようと大きな声を出しつつ、短剣を構えると……。
「爆ぜろ!」
女性の声が響き、光の筋が敵の間を走ったと思うと、爆発が起きる。
「きゃあ!」
思わぬ爆風を受け飛ばされそうになるが、受け止めてくれたのは……。
「間に合って良かったわ、ジャスティー」
「……ルーチェ」
私の両肩を抱き微笑むのは、ルーチェだった。
「ロッシ様から聞いたわ。アコッセ様のもとには、ジュビーが向かったから大丈夫よ」
本当に……。本当にルーチェが来てくれた。嬉しくなり、唇が小刻みに震える。つんとのどの奥が痛くなる。
「弓矢を引く魔法使いが空を飛んでいたから、すぐに居場所が分かったわ。一人でよく耐えたわね。立派よ、ジャスティー」
「ルーチェ……。助けてくれて、ありがとう……」
ぽろりと、私の目から涙が落ちる。
ぐすりと鼻を鳴らし、ディランたちがいた方を見れば、爆発により発生した黒煙が晴れていく。
そこには誰の姿も、馬の姿もなくなっていた。ただ真っ直ぐ横に走った、焼野原が続く光景に変わっていた。
これがルーチェの魔法……。
圧倒的なまでの破壊力を前に、恐怖に震え、涙は止まった。
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