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団地の怪  作者: 佐良夏生
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終幕 2

 同日、同時刻。

 秋山まりあの住む部屋のドアの前に、長い髪の女性が立っている。顔は俯いていて見えず、髪は梳かしていないのか、乱れて肌に張り付いているような有様だ。足は裸足で、身につけている黒のシフォン素材のワンピースは、所々が朽ちてしまっていた。若い女性がそんな姿で出歩くとは到底考えられず、この女性が普通の存在ではないことが分かる。

裸足のつま先は土で汚れ、何を思ったのか、そのつま先でドアをコンコンと蹴り始めた。

 コン、コン、コン。コン、コン、コン。

 一定のリズムを保ってドアを蹴るその足先は、やがて赤く染まる。音が鳴るほどに足先を打ち付けているせいで、つま先の皮膚は破れ、血が滲み初めていた。

「ねぇ、ねぇ、ねぇ、なんで助かったのかなぁ。私と同じになるんじゃなかったの?」

 同じ言葉を繰り返すその女性は、変わり果てた姿の青木美帆だった。ドアの奥から聞こえるまりあと幸代、二人の笑い声を聞いた美帆は、唇をぎり、と噛み締める。

「ずるい、ずるい、ずるい、ずるい、ずるい、ずるい、ずるい、ずるい、ずるい、ずるい」

 髪を振り乱して前後に揺れ始めた美帆は、飽きることなくつま先でドアを蹴り続ける。

 何度も、何度も、何度も。

 決して誰に気づかれることがなくても。

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