下
これは本日3本目の話です。上と中を先にお読みください。
翌朝、目が覚めると時計の針は10時を指していた。
あと少しでも寝ていたら遅刻するところだ。慌てて出発する準備をしたところで、昨日まで悩んでいた事がすっかり解決していることが分かった。
単に雫に告白する……失敗するかもしれないという事が怖かっただけか。結局成功するか失敗するかの二択でしかないのだから。なら、成功するかもしれない方を選ぶしかない。
よし、花火が上がったタイミングで告白しよう。
そう決めて時計を見ると、もう時間が11時45分を指していた。
そろそろ出ないと雫が来ちゃうな。そう思って外に出ると、ちょうど雫が鍵をかけているところだった。
「おはよー、雫」
「あ、かっちゃん! おはよう」
今日の雫は始めて秘密の場所に行ったときと同じ白いワンピースを着ていた。
前にお気に入りの服だと教えてくれていたので、なんだか嬉しい。
顔にでも出ていたのか、雫は「なんだか嬉しそうだね?」と言ってにこやかに笑いかけてきた。
「それで、今日はどこに行こうか」
「えっとね、お祭り始まるまで秘密の場所に行きたいな」
ダメ? とちょっと上目遣いで聞いてくる。もちろんダメなわけが無かった。
いつもの様に商店街を歩いていると、肉屋のおっちゃんがにやにやしながら声を掛けてきた。
「おう。今日は美味い串焼き出すから、食いに来いや」
そう言ってから、おっちゃんは俺の耳に顔を近づけると小さな声で「ま、がんばれや」と言って去って行った。
おっちゃん以外には誰にも会わずに、北の山に着くと雫は慣れた足取りで秘密の場所に続く道へ足を踏み入れていく。
秘密の場所に着くと小さく伸びをしながら、雫は川の脇に腰掛ける。
「そう言えば、今日のお祭りってお神輿とかってあるの?」
確かに神輿は祭りには欠かせないものだろう。だけど今日の祭りは少し違う。
「いや、今日の祭りには神輿じゃなくて、何ていうんだろう。踊り? 舞? みたいなやつと花火と屋台だけだよ」
「え! 舞があるの? 見てみたい!」
「いいけど、たぶん雫が思ってる程面白いものじゃないぞ?」
そう言うと、雫は「そうなの?」と首をかしげる。
「えっと、この町には天狗が居るって言われてるんだけど。その天狗が今日降りてくる日なんだよ。その天狗に奉納する舞だから、古めかしい感じなんだよ」
それを伝えるが「でも気になる!」と言っていたので、あとで少し覗きに行ってみようと決めた。
そんな風に色々話していると、もうすぐ祭りが始まる時間になっていた。
「そろそろ行くか」
そう言って雫の手を引いて立ち上がり山を出たところで、雫が「あっ!」と声を上げた。
「どうかしたか?」
「あ、あのね。秘密の場所に忘れ物しちゃったから、取ってくる!」
そう言って雫は走るようにして来た道を戻り始めた。
「俺も一緒に行くよ!」
そう声を上げると、「大丈夫! すぐに戻るから!」と雫の声が返ってきたので山の入り口で待っていることにした。特に危ない道もないし、すぐに戻ってくるだろうと思って。
それから何分経っただろう。普通に歩いても片道10分しない距離なのに雫は祭りが始まる時間になっても戻ってこなかった。
行き違いになるかもしれないけど、心配になったので秘密の場所に向かって歩いていった。
秘密の場所に着くと、そこに雫の姿はなく静寂が俺を迎え入れた。
「あれ? どっかで行き違いになったか?」
そう思って急いで山の入り口に戻るがそこにも雫の姿はない。
居ると思ったのに、そこに居なかったのでもう一度秘密の場所に行くがやはり雫の姿はなかった。
「どこに……いったんだ?」
それから俺は雫を探して秘密の場所から山の入り口まで探しまわったり、商店街の入り口にいた人に聞いてみたが、結局雫を見つけることが出来なかった。
……あの時一緒に行っていれば、そう思った俺は急いで公衆電話に向かうと家に電話を掛けた。そうして、警察などにも連絡が行き、一夜掛けて雫の捜索が行われた。
――翌日、雫が見つかったという報告を母さんから受けた――
傷は一つもない姿で、山の裾で見つかった。
ならすぐに会いに行こうと思って外に出ようとしたら母さんに腕を掴まれた。
そして、「行っても意味ないのよ……もう」と言う。
どういう事だかよくわからなかったので、腕を振りほどいで急いで外に出た。
外に出ると雫のお父さんが立っていて、挨拶をしようと近づいたところ無言で俺の事を殴って去って行った。
意味が分からない……どうして俺は殴られなくちゃいけなかったんだ? 確かに迷子になってしまったのは俺のせいだけど……。
そう思いながら雫を探して町を歩いていると、色んな人がある噂をしていた。
引っ越してきた女の子が天狗に連れ去られた。
というものだった。他にも噂はあったが、どれも似通ったものだった。
俺はその噂を聞いてから母さんが言っていた事を、思い出すと嫌な考えがふつふつと鎌首をもたげる。
だが、そんなのは馬鹿な考えだと頭を振り、俺は一日かけて雫を探して町中走り回った。だけど、結局雫は見つからず家に帰ると母さんに叱られた。「しっかり気をもて」と。
3日後母さんに、雫のお通夜をするといわれて家から連れて行かれた。
式場に着くと、誰もが俺を責め立てるような視線を向けているような気がして居心地が悪かった。雫に会わせてくれと言ったが、誰も良しとしてくれず、俺は雫が待っている気がして外に飛び出した。
きっと雫は俺が探し出してくれるのを待っている。そう思って町中を駆けずり回った、どこをどう走ったのか記憶には全くなかったが、気が付いたら家の前の公園にいた。
ちょうど夕暮れ時だ。そう思って町を眺めていると背後から「……かっちゃん」と声がかけられた。
急いで振り向くと、祭りの日と同じ格好をした雫が静かに立っていた。
「雫……よかった」
そう言うと、雫は「ごめんね」と言って立ち去ろうとしたので、俺は慌てて声を掛けた。
そうしないと、またどこかに行ってしまう気がしたからだ。
「どこに行っていたんだよ、雫。もう、俺を置いて行かないでくれよ……」
俺が呟くと、振り返った雫は悲しそうな表情をしてから「……うん」と頷いた。
それから、夕日が沈むまで雫と色々な話をした。
いつもの様に楽しく話していたのだが、どことなく雫が浮かない顔をしていたので、どうかしたのか聞くが「何でもないよ、かっちゃん」と言って笑みを浮かべる。
だが、その笑みはいつものとは違うものに見えた。だけど、俺は雫が目の前にいて、俺に笑いかけてくれているという事だけで十分だったので、さして気にならなかった。
夕日が完全に沈むと雫は「今日は帰らないと、ね」と言って俺が家に入るのを見送ると、小さく手を振ってくれた。玄関のドアを閉めてから雫に言い忘れたことがあったので、急いでドアを開けるが、雫はもう帰ったのか、そこには居なかった。
しばらくすると、母さんが返ってきた。
なんでちゃんとお別れしなかったのか言及されたが、「お別れするって誰と?」と聞き返すと母さんは、どこか呆けた顔をして「え?」と呟いた。
「誰って雫ちゃんとちゃんとお別れしないと、でしょ。かずや?」
「雫とお別れって、さっき雫と話してたけどちゃんと、またねって言ったよ?」
母さんは、一瞬目を見開くと「それってどこで?」と聞いてくる。
公園でだよ。と答えたが、母さんは返事もせずどこかへ行ってしまった。
どうしたのだろう? そう思ったけど眠気が襲ってきたので自分の部屋に行きベッドに倒れるようにして、眠った。
翌朝、目が覚めると母さんはどこかへ出かけてしまったらしく、だれも居なかった。
手早く家を出る準備をした俺は、公園へ向かった。雫がそこで待ってくれている気がして。
だが、公園に着くが、そこには誰も居なかった。
昼から会う約束もしていないし、仕方ないだろう。やることもないし、商店街に行こう。
そう思って公園から出ようとした時、坂道をゆうまが上ってくるのが見えた。
「かずや……お前大丈夫か?」
会った早々ゆうまはそう聞いてくる。
「大丈夫ってなにが?」
そう聞き返すと、ゆうまは戸惑った表情をする。
「悪い、大丈夫なわけないよな。あの子とお前仲良かったもんな……ごめん」
そう言われて。俺は首をかしげる。
「あの子? 雫の事か? 仲良かったもなにも、今も仲いいけど?」
「……え? かずや、お前。何言ってんだ」
ゆうまは辛そうな表情をしながら俺の肩を掴む。
「雫ちゃんは、夏祭りの日、北の山で、死んじゃっただろ!」
「何言ってんだよ、あれはただ雫が迷子になっていただけだって。何だったら、今日の夕方ここで雫と会うと思うから、その時来てみればいいよ」
ゆうまは何とも言えない表情で俺を見つめてから「分かった、17時頃来る」と言って坂を下って行った。
母さんといい、ゆうまといい皆何で雫が死んだなんて言うんだ……そう思いながらベンチに座っていたら、気が付いたら横に雫が座っていた。
「あ、考え事は終わり?」
そう言って雫はくすくすと笑う。でもやはりその顔には影があるみたいだった。
「来てたなら声かけてくれよ……ってもう夕方!」
「だって真剣な顔してたんだもん。もう夕方だよー? 私と会える時間だよ?」
そう言って雫は夕日に照らされる町を眺める。
「俺と会える時間って、夕方だけって事? 家の事情とか?」
「えっ……あぁ、うん! そうなの。だから毎日会えるけど1時間くらいしか話せないの。ゴメンね」
「いや、大丈夫だよ。会えるならそれだけで。雫が居てくれるならそれだけで十分だ」
すると雫がどこか儚げに笑うのだった。
しばらく雫と話していると、背後からやって来る足音が聞こえた。
「かずや……」
振り返るとゆうまが立っていた。
「おう、ゆうま。どうした変な顔して」
「お前、雫ちゃんが居るって言ってなかったか?」
そう言って、俺の目を真っすぐ見つめるゆうま。
「何言ってんだよ、ほら、居るだろ? 俺の隣に」
そう言って雫の頭に手を乗せるとどこかひんやりとした感触が手に伝わってくる。
「だから、どこにいるんだよ。雫ちゃんは。さっきから見てたけどお前誰と話してるんだよ。独りで」
そう言って来るので雫を見るが、雫はこの前と変わらぬ恰好で俺を見返す。
「ゆうま、お前。確かにこの前の事は俺が悪かったけど、雫を居ない物扱いするなんて酷いじゃないか!」
「いや、俺はただ……」
「なんだよ、この前の当てつけか! もう帰れよ! 雫はちゃんとここにいるじゃんかよ」
そう言ってゆうまを追い返すと雫は「……ごめんね」とだけ言って視線を下げるのだった。
しばらくすると、夕日がほぼ沈みかかり辺りには夜のとばりが降り始めていた。
「あ、もう時間になっちゃったね」
雫はそう言うと、視線を俺の家に向ける。
「もう帰らないとか」
そうして雫に引かれるようにして、玄関前まで行った時、俺がまだ雫に告白出来ていない事を思いだす。
「あのさ、雫」
「……ん? どうしたの?」
「明日も公園で会おうな」
そう告げると、笑顔で頷いてくれたのだった。
「ただいま」
そう言って玄関のドアを開けると、母さんが心配そうな顔で「どこに行ってたの?」と聞いてくる。そんなのは聞かれるまでもなく雫と会っていたと答える。
すると母さんは手で頭を抱えると「明日は一緒に来てもらう所があるから、そのつもりでいて」と言ってくる。
夕方でなければ予定もないし大丈夫だ。
「うん。夕方までに帰れるのなら大丈夫だよ。夕方は雫と約束があるから遅れられないけど」
そう言うと母さんは、どこか暗い表情をして「かずや次第だから頑張りなさい」と言ったのだった。
翌日、母さんに起こされた俺は、急いで出かける準備をさせられた。
それで町のはずれにある大きな白い建物に連れて行かれた……病院だった。
「母さん? 俺別におかしい所なんて無いよ?」
「そう言ってる時点で変なのよ。いいから見てもらうわよ」
そう言って俺は引きずられるようにして先生の下に連れて行かれた。
そこで色々と質問攻めにされ、しばらく入院するという事になってしまった。
「なんでだよ、母さん! なんで俺が入院することになってんだよ! 別に病気じゃないし、この後雫に会わなきゃいけないんだって!」
そう言うと、母さんは一つため息をつく。
「雫、ね。かずや本当に雫ちゃんが生きてると思ってるの?」
「当たり前だろ! 昨日だって俺に笑いかけてくれたんだから!」
「なら、仕方ないわね。私じゃどうしていいのか分からないし。しばらくはここに居なさい」
そう告げると母さんは俺を置いて出ていってしまった。
なんで、どうして。雫はちゃんといるじゃないか。なのに、何でみんな雫を居ないものとして扱うんだ。みんなどこかおかしいよ……。
与えられた病室のベッドでそう自問していると先生がやって来た。
「やあ、かずや君。調子は……あんまり良さそうじゃないね。とりあえずちゃんと寝た方がいい、自覚無いかもしれないけど酷い顔しているよ。それに爪も噛むものじゃない」
先生はそう言って俺の肩に触れると「何か希望があったら言ってね」と言って出ていった。
先生に酷い顔と言われて鏡を見てみると、確かに不健康そのものと言った感じだった。
だからって、こんな所に入れなくたって。家で眠ればいいだけじゃないか。
色々と考えて時間を過ごした俺は、外の空気がすいたくなったので一人で屋上に向かう。
屋上に出ると、夕日の光が俺を暖かく迎えてくれた。フェンス越しに見える北の山を眺めていると後ろから声がかけられた。
「……かっちゃん」
振り向くと、どういう訳か雫が来ていた。
「雫! どうしてここが分かったんだ……」
「かっちゃんの居るところは、今の私なら大体分かるんだ」
そう言ってどこか悲し気に笑う雫の手を取って「今から、公園に行こう!」と告げる。
雫は少し躊躇っていた様子だったが、俺がもう一度「行こう」と言うと頷いてくれるのだった。
病院から抜け出すのはさほど難しくはなかった。
まだもともと田舎のせいで働いている人が少ないのでバレずに済んだのだろう。
病院は北の山の近くに建っていたので帰り道はすぐにわかった。
休みだからか少し活気のある商店街を雫と手を繋いで歩く。
雫のひんやりとした手は夏の暑さの中だとありがたく、心地が良かった。
お互いに何も話すことなく、歩いていると肉屋のおっちゃんが向こうから歩いてくるのが分かった。
「お、この前は残念だったな……」
おっちゃんは目を伏せながらそう言う。
「残念って何かあったの?」
「え……いやこの前、引っ越ししてきた子が事故で亡くなっただろ」
そんな事あったかな? と首をかしげながら考えていると、雫が俺の手を少し引いた。
「あっと、俺これから雫と一緒に公園に行かなきゃいけないから、行くわ!」
そう告げて雫と一緒に走り出すと後ろから「一人で出歩くと危ないから気を付けろよ!」と声が聞こえた。
坂の下まではしったせいで息が上がってしまったので、雫から手を放して息を整える。
目を上げるとカーブミラーが俺の事を映し……。
気が付くと俺と雫は公園についていた。
「あれ。俺いつの間に公園に……?」
呟きながら周りを見ると、雫があの日の様にフェンス越しに町を見ていた。
その姿を見ていると何かを忘れているような気がした……あぁ、そうだ。まだ俺雫に告白出来てなかったんだ。なにか違う気もしたけど、気にせず雫の近くに行く。
俺が近づいてきたのが分かったのだろう。雫は町を見るのを止めて俺の方を見てくる。
「あの、さ。本当はこの前の祭りの時に言おうと思ってたんだけど……俺、雫の事が好きだ! だから、俺と付き合ってください」
そう言って手を差し出すが一向に返事がもらえないので、視線を地面から雫に戻すと雫が静かに涙を流していた。
「……ごめんね」
「あ、そっそうだよな! それじゃあ、バイバイ!」
色彩が世界から抜けていくのを感じ、雫視線から一刻も早く逃れるため俺は速足でその場から立ち去る。
だが、雫が「待って」と声を上げた。
「違うの、そうじゃないの! 私もかっちゃんの事好きだったよ。でももうお付き合いとかできないの……」
好きだったのに出来ない? どういう事なのか分からず首をかしげると「うん、わかってないよね」と雫が呟く。
「かっちゃんさっき、坂の下のところでどうなったか覚えてる?」
「いや、気が付いたらこの公園だったんだけど……」
「あのね、さっき。ミラーを見たかっちゃんは私が居ないって叫んで、走って行っちゃったんだよ?」
そんな事があったのか……でもそれが振られた理由にどうつながるんだ?
「私、かっちゃんにまた会いたくて、戻ってきたけど。このままじゃ、かっちゃん
の為にもよくないと思うから……」
そう言って雫は目尻に浮かんだ涙を拭うと「……私死んじゃってるんだよ?」
と言った。
「え? どういう事だよ。今こうして俺と会ってるじゃないか! 変な冗談はよしてくれよ」
「冗談じゃないの……私はこの昼でも夜でもない時間にかっちゃんに会いに来ることが出来ていただけなんだよ。でもっ、私のそんな我儘のせいで、私が死んじゃったせいで、私が会いに来ちゃったせいで……かっちゃんがこんなにボロボロになっちゃった」
俺が理解できずに呆然としていると、雫は一歩後ろに下がる。
「だから……もう私を忘れてください」
このまま何もしなかったら雫が消えてしまいそうな気がしたから、雫に向かって一歩踏み出すが……。
「……今までありがとう。かっちゃん」
そう言って笑った雫は一瞬光ると……消えた。
そこには小さな光と俺だけが残された。
「あああああああああああああ」
俺はいったい何をしていたんだ! あの日雫を追いかけていれば、俺のせいで死んでしまった様なものなのに。俺は馬鹿な事を言って。雫は俺のために、無理までして……。
それなのに、俺は何もしてやれないで。
俺は………………。
俺は…………。
俺は……。
……お、れは……お、僕はいったい何をしていたんだろう?
この数日間の記憶が朧気になっている僕は、茫然と辺りを見渡し微かに残る光の残滓を綺麗だな。と思いながら見続けた。
――現在――
夏休みに入って東京から実家のある町に戻ってきた僕は、親友のゆうまに会ってから家の前の公園に来ていた。
「この公園、昔は好きだったな。こうして夕日を見ているのが、特に」
そう一人でつぶやいていると、どういう訳か涙が勝手に流れ落ちる。
何で……涙が? そう思って目を拭ったとき、一陣の風が俺を突き抜けていく。
そして……。
「……かっちゃん」
そう声が聞こえた。
――終わり――