相談者
健康マニアになりつつあるぼくたちに、お客さんがきた。
どうやら、ぼくたちの後ろの席の人が、ぼくたちの話を少しだけ聞いていたっぽい。
田口さんの左横からスゥーつと、か細い手が伸びてきた。
トントン
「あの…二人に相談、いいかな?」
と、申し訳なさそうに恐る恐る後ろの席の山野さんという人が話しかけてきた。
「どうしたの?」
気さくに返事を返す田口さん。
ぼくも、どうしたの?ふうを装った。
「実は…憧れの先輩がいて…その先輩とお近づきになりたいなって…」
…
そういう山野さんの視線の先は、グラウンドにでて楽しそうに友達と遊んでいるあの、学年一のモテ先輩だった。
え…
もしかして山野さん…あの先輩が…あの先輩に憧れているっていうのか⁉︎
あの先輩は…たぶん田口さんも…
…
「えーっと…それでぼくたちは、どうしたらいい?」
田口さんが山野さんの視線に気づく前に、山野さんの視線をこちらに戻さねば。
「で、で?どうすればいい?」
慌てて、もう一度話しかけた。
チャレンジ成功。
こちらを向く山野さん。
「二人って…最近髪の毛ツヤがいいよね?後ろからみてて、全然前よりきれいなんだけど、ヘアケアにどんなもの塗っているのかな?って。」
「あぁ、ぼくは昔から同じやつ使ってるから、特に塗ってかわったとかないんだ」
「わたしもだよ?でも、大事なのは、水分かな」
「そうだね」
「えっ?水分だけ?」
「まぁ、飲む量と飲むものが大事なんだよ。」
「そうそう。あと、わたし最近頭洗いながらマッサージしてるよ。頭スッキリするし、頭皮もきれいにもなるし、顔もスッキリなんだよ。ぜひお試しあれ」
「へえー、お金かからないし最高じゃない」
「そうだね。それに、今日からでもできるからね!」
そう言いながら、自分の髪をサワサワする田口さん。
「ありがとう、二人とも。おかげで、頑張ろうって元気でた。告白するときは、応援してね」
⁉︎
こ、告白…
だっ…大丈夫だろうか…。
田口さんのアドバイスのおかげで、山野さんがきれいに進化して…
トラブルにならんか?
…
どうか、好きな人が二人とも別々でありますように。
そして、いま嘘告が大流行なので、嘘告と勘違いされませんように。
あぁ、それにしてもあの先輩は、爆モテだな…
ぼくもあんなにモテたら、人生楽しかったかもしれないのに。
あれ?
ぼくは、ふと思った。
もしかして桜って…
桜ってさ、このぼくに嘘告して練習してから、あの先輩に告白するとかじゃないよね⁉︎
その可能性は、ゼロではない。
どうしようと不安になった次の休み時間、ぼくはトイレに向かうため、ヨタヨタと歩いていた。
「どうしたー?酔っ払ってんのかー?」
⁉︎
佐藤くん…
「いや、そうじゃないけどさ…あのさ、学年一モテる先輩って知ってる?」
「あー、知ってる。知りすぎてどうにかなりそうだよ」
「え?どうかしたの?」
「それがさ、この前教室にきて桜さんに話しかけたあと、田口さんにもちょっかいかけていやがったんだ」
え…
「え、そう…なの?」
「そうだよ、みてなかったのか?女子たちは、おめめキラキラさせて、聞こえないはずの心の声が漏れ漏れだったよ。キャーかっこいいーってね」
…
「ところで先輩は、なにしにきてたの?」
「さあな?よくわからんし、腹立たしいからトイレに立ったから、しらん。あぁ、そこで如月川くんにあったのか」
如月川くんとは、ぼくの苗字だ。
苗字が長いので、基本的にねぇとかおーいとか、したの名前で呼ばれたりする。
たまにこうして呼ばれると、ああ…わざわざこんな長い苗字呼んでくださってありがとうと、心でお詫びする。
それにしても…
ぼくたちのクラスに、わざわざ来るってことは…なにか意味が…
⁉︎
まさか、まさか…
桜とあの先輩って付き合ってるんじゃ⁉︎
ぼくに嘘告したあと、実はあの先輩と付き合ってるよーんって言うんじゃ⁉︎
それとも…ぼくはフェイク?
あの先輩と付き合っていたら、他の女子に恨みをかうから、だからぼくと付き合ってるフリして…ってこと⁉︎
そう…いう…こと…?
ぼくは、どうすれば…
桜のために頑張って早寝早起き自分磨きしていたのに…
桜に嘘告させないために頑張ってきたのに…
どうしたらいいだろう…
続く。




