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求める者

新しいエピソードが遅れて申し訳ありませんでした。

アイオンの転生後の見た目をどうするのか、種族の名称にかなりの時間を掛けてしまいました

ルカがテレビを一度止める。


「皆大丈夫か?結構長いだろ?きつかったら床に座って胡坐に変わっても良いよ。小学六年生には結構きついぐらいの長さだろ?」

その一言で子供たちから肩の力が抜けた。張りつめていた糸が切れるように

「水分補給しても良いよ。脱水症状や熱中症には気を付けてよ。今年の夏は例年より暑いらしいから」

水筒やペットボトルを取りに行く子供たちで廊下と扉が密集地帯になってしまった。


教師は一向にルカを睨んではいるが、止めようとはしない。たった一話見ただけで自分も見入ってしまう程の話だと感じたのだろう。ルカはそれを満足そうにニヤニヤ見ている。それに対して教師のこめかみに一瞬青筋が浮かんだように見えたが、そこは触れないでおいた方が身の為だと思う。

生徒の中にはルカの暴力的なまでに美しい容姿に対して、惚れてしまう者や憧れてしまう者もいる。中には嫉妬してしまう者も何人か見られる。


そんなことは大して気にせず転びかけた女子生徒に「大丈夫?」と手をさし伸ばしている天然な部分も人を魅了する原因の一つだろう。

それを見ていた別の女子生徒が妬ましそうに見ていたが、次第に「天然な部分も魅力的なのね~」と一人で妄想に入ったのは言うまでもないだろう。


5分ほど経った時にルカが手を叩いた。

「そろそろ席に戻って~続きを見るよ!途中途中で天界の事情も見ることになるけど、驚かないで臨機応変に見て行こうね!ここからは2話分見たら休憩するつもりだから、水筒とかはそのまま持っててくれて大丈夫だよ!」

子供たちは2話連続で見れる事に対して、小さく歓声を上げていた。一回一回休憩するよりもまとめてみた後に休憩する方が、小学五年生の性分に合っていると感じ取ったのかもしれない。

「それじゃさっきと一緒で静かに見ようね。映画館と同じ様に他の人の迷惑にならないように努力してくれ」軽く注意を促す。普通なら少し気分が落ちるだろうが、ルカの笑顔によってそんな物は無いに等しいという程に女子生徒の心は掴まれていた。中には鼻血を今にも出しそうな程の生徒もいる。


そんな生徒たちを横目にルカが軽く笑う。

「楽しんでくれて何よりだよ。ちょっとドキドキしてたからね」独り言とも取れるような呟きは誰の耳に届いたかは分からないが、ルカ自身も楽しんでいるのは確実であった。

ルカの指が再生ボタンに触れる。5秒ほど間が空いて、再び動き出す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

最初は暗い視界から世界は始まった。目を開けているのかも閉じているのかも分からない。呼吸もしている様には思えない。それ程までに五感が鈍っている。鈍っていると言っても触れた物の感触は分かるようだ。ザラザラしている天界にはない石など色々な障害物に当たる。

しかし、痛い訳ではない。むしろそれを壊そうとして体の一部を伸ばした先には何もなく、下に転がっている石の残骸があるのだ。つまり、当たっただけで砕けて粉々になってしまっているのだ。

流石にそれには自分でも引いてしまっているぐらいだ。


第三者の目から見ると、明らかに人型ではなくモンストールと称される魔物の一種であると考えられるだろう。モンストールとは人間や動植物以外の魔に属する生物の総称である。

見た目は狼型で暗い場所ではよく光るルビーの様な赤い目に、黒と銀の整った毛並みを持つ魔物であった。不思議なことにその魔物は耳にイヤーカフと呼ばれるアクセサリーを付けているのだ。目立つものではないが、暗い場所や夜に見ると光って見え、キラキラと輝く赤い目によく映えている。

声は出せるのか、しばらく適当な言葉を言って確認をしている様だ。洞窟のような場所ではよく声が響く。五感が鈍っているので本人に聞こえているかどうかは分からないが…


五分ほど経ち、やっとまともな言葉が喋れるようになったらしい。

「やっと発音ができるようになった~にしても五感が殆ど全て鈍くなってるな~目も耳も使えない状態で動き回るのは愚策だな」

そう言いつつも先程まで天真爛漫に動き回っていたのだが…

「だが五感は鈍っていてもエセンス粒子の動きは敏感に分かるな」

エセンス粒子とはこの宇宙全体のエネルギーの源になる粒子の事である。異世界では魔力という名前もあるそうだが、この宇宙ではエセンス粒子と称されている。エセンス粒子は目には見えないが、スキルで感じる者もいれば感覚で感じる者もいると聞く。恐らく今の俺は後者である。モンストールに近づくほど肌で感じる生物が多いと聞く。

「にしても転生した姿はモンストールかよ…侯爵級天使から魔物って、雲泥の差だな」

重要な点はそこである。本来、転生した後の種族は罪の大きさによって転生の門が自動で判断するのだが、精々そこら辺の動物や人間などである。モンストールに転生するなど前代未聞だ。

アンジュは聖に属する生物であり、モンストールは魔に属する生物である。ちなみにアンジュとは天使の本来の呼び方で、天使という名称は人間たちが勝手に付けただけの仮の名前に過ぎないのだ。

話を戻すと、相当やらかしたみたいだな。聖と魔は反発しあう属性であるため、アンジュ達からしたら見下したり軽蔑する相手のトップ1に入るのだ。それ程までにアンジュとモンストールは仲が悪い。

だが、俺としては案外モンストールを嫌っているわけではなかった。

俺が管理していた属性は「時空」この属性はモンストールやヴェリニアースも使える属性のため大して気にしていなかった。

ちなみにヴェリニアースとは悪魔の事である。意味不明な名称の付け方で俺も覚えるのにかなり苦労した。まあその話は置いといて、何とかして五感を取り戻すために色々やってみるしかないな!鈍っているとはいえ完全に見えないわけではないし、聴こえないわけではない。

と言う訳で、出来るだけ目を凝らして歩くようにした。そうするだけでもかなり視界が明るくなったように感じた。錯覚じゃないことを願いたい!…俺って他の生物から見たら、ただの可笑しいモンストールじゃないか?こんな時でも見た目を気にしてしまうのは悪い癖である。

数十分ほど、歩き回ったりしたが何かヒントを得られたわけではなく、かなりショックだった。トボトボと歩いていると、何かが走る音がした。

「何者だ!?」残っている力を出して全力で問いかける。洞窟に似た場所にいるせいか声がよく響く。

しばらくして、移動していた主の声が返ってくる。

「何者って言われてもね。そこら辺にいるモンストールだよ。にしても君、随分面白い顔をしてるね」小馬鹿にしたように笑っている声が聞こえる。イラっとして、口を尖らせる。口があるかは知らないが…

「いや、ごめんごめん。目を凝らしてたのか?君、モンストールのくせに五感が鈍いの?初めて見たよ」

「誤ってる割には反省の色が見えないな」負けじと俺も言い返す。

「いや、本当にごめんって!でもムーンデッドウルフって初めて見たよ!出現するのは稀って聞いてたから、良い体験になったな~」は?こいつ今、ムーンデッドウルフって言ったか?言ったよな?

「怖いって、そんなに顔を近づけなくても良いだろ?」相手に言われてから距離が尋常無いことに気づいた。バツが悪そうに後ずさる。

にしても、ムーンデッドウルフって…上級モンストールだっけ?アンジュ達が脅威にならないようにって数を極限まで減らしちまったんだよな。なんか申し訳ない。

この宇宙の一つの暗黙のルールとして「種族は数は減らして良いが、絶滅させるのは神の理に触れる」という物がある。既にそのルールを破った星もあるみたいだが、その国には一切エセンス粒子が無いと聞いている。

神アウラスの逆鱗に触れたのだ。流石にアンジュ達でもアウラスの怒りの鉄槌は喰らいたくないだろう。アンジュやヴェリニアースはエセンススピリチュアルと呼ばれる存在で、肉体が無い。そのため、エセンス粒子で本来は実体化している。エセンス粒子が無くなることはすなわち存在することを禁止されているようなものだ。

だからムーンデッドウルフは絶滅することは無かった。しかし、それと同時に出現が極めて稀の存在となってしまったのだ。神アウラスにも困ったものだよ。絶滅した後じゃなくて、絶滅する前に策を練らないと一度壊れた生物を作るのは不可能なんだからさ。


「一人で何をブツブツ言ってんの?ていうか、君さ。モンストールなんだからその五感が鈍ってる演技してても意味ないよ?バレバレだって!」からかいも混じった声で笑っている。

「いや、本当に俺は五感が鈍ってるんだよ!今みたいに大声で喋ってくれないと何言ってるか全く聞こえないんだよ!」少し怒気を含んだ声で言うと、流石に理解したのか

「そうなのか。それはごめん。君はこの世界に生誕して時間が経ってないの?それなら周囲にあるエセンス粒子を吸収すると良いよ。多分、一時的な欠乏症になってるんだよ!」

おぉ~親切なモンストールがいてくれて助かった~!早速、口らしきものを開けて呼吸をするように近くのエセンス粒子を吸い込む。スーハー、スーハー何度か繰り返し、再び目を開けると目を凝らさなくともあたりが見えるようになっていた!

「お~!凄いな!ありがとう!感謝するよ!」自分の姿も確認し、前足を差し出す。目の前のモンストールは俺の前足を取って握手をしてくれた。

「じゃ、僕はここで失礼するよ!家族が待っているもんでね!また会える機会があったらゆっくり話そうよ!」軽いステップで洞窟の奥の方に消えて行った。

「嵐のような奴だったな。ま、いい奴だったからそれでいっか!!」独り言を呟きながら俺は新たに歩き出した。転生直後とは違って少し足取りが軽かったのは気のせいだろうか。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

アイオンが転生した直後の天界

神アウラスが住む宮殿に一人の天使が足を踏み入れた。侯爵級天使で海の天使ジュラである。

長い廊下を急ぎ足で大股で歩いている。顔は険しく、握っている手に爪が食い込んで血が出そうな程力を込めている。

神アウラスと直々に会うための謁見の部屋の前に到着すると、見張りの兵士が許可を求めに行こうとするが、容赦なく扉を開けズカズカと部屋の中に入っていく。神アウラスはまるで想定していたかのように、堂々と自分専用の椅子に腰かけていた。神アウラスと直々に会えるのは侯爵級天使だけである。

兵士がジュラを押し出そうとするのをアウラスが片手で制す。

アウラスが口を開く前にジュラが怒鳴った。「何故、俺の弟を転生の門に堕とした!!」たった一言、しかし、その言葉は宮殿全体に響き渡り、近くにいたメイドの天使の体が硬直していた。

それでも、アウラスは微動だにしない。ゆっくりと口を開き、放った言葉は

「お前の弟の属性が我にとっては邪魔でしかないからだ。有効活用してやろうと計画を見直したこともあるが、計画に支障が出ると判断した」その言葉にジュラの目が見開かれた。「計画に邪魔だった」それだけの私欲で自身の弟は堕天使として転生させられたのか、と。

「貴方は、たったそれだけの私欲で俺の弟を堕天使という傷物として転生させたというのか!?ふざけるなよ!」再び怒鳴ったが、今回はエセンス粒子を纏わせ完全に威嚇する態勢にいた。

「記録を見直してみたが、最近ファウラの属性を使う上級天使が不自然な理由で転生する回数が増えていた。それもあんたの計画のためって言う事か?」

「流石は海の天使ジュラだな。頭脳派のお前に海の属性を与えておいて正解だったようだ」

「まだ言うか!」専用の武器を異空間から取り出し、アウラスに突き付ける。青の少し長い前髪が揺れる。

「俺はあんたに憧れて侯爵級天使にまで上り詰めたって言うのに、最悪な気分だ!」金の瞳が光る。

斬りかかろうとした瞬間にアウラスが立ち上がる。片手で武器を捌き、ジュラの顔に一気に近寄る。

「残念だが、我の計画は既に始まっている。今更止めようとしても無駄だ。お前には私の計画を手伝ってもらうぞ」アウラスの目から強大な洗脳魔術がジュラに向けて放たれた。

「必ず…後悔…する…ぞ」倒れる直前にジュラが放った言葉はそれだけだった。

うなだれるジュラの体をアウラスが支えて、門番の兵士に牢屋に連れて行くよう命じた。


一人になったアウラスは独り言とも取れるような声で言った。

「我の計画を止められるものはいない。あの予言の通りになるような者は人であろうがモンストールであろうがアンジュだろうが、全て私の視界から消し去ってくれる!この計画、お前には絶対に邪魔させん!」

アウラスの「お前」が誰を指すかは予想はできた。恐らくアイオンである。まるで天敵だ、とも言わんばかりの様に。


一方、天界の辺境の地で出張に出ていたルアとサッフォーの姿が見える。

仕事を終え、中央都市に戻る準備をしていたのだ。二人からはいつもの笑顔が消え、険しい顔つきをしていた。

今回の仕事の途中から終始無言になっていたがルアが口を開く。

「なぁ、サッフォー。アイオンの件本当だと思うか?」核心を突く質問である。

少し間が空いて「私としてはいまだに信じることができませんわ。しかし、アウラス様が決められた事ですもの。口出しするのは野暮と思っておりますわ」

「素直だな。だが、今回の件も含めてかなり不自然な話が増えてきていると思わないか?いつものアウラス様なら笑って許していたような事でもいきなり堕とされたりと。変な噂が絶えん」

しばらくの沈黙が流れた。

その沈黙を打ち破ったのは、空から落ちてきた映像保護結晶と呼ばれるアンジュ達のアイテムである。

「何ですの?……これはポテルションですわ!」

サッフォーが駆け寄り、起動するか操作している。

ルアも危険はないと判断したのか、途中から手伝うようになった。

「これでつくはずだ!少し離れてろ、サッフォー!」

電源がついた瞬間に二人で後ろに飛び退く。

映像に映っていたのはジュラだった。

「あれは、ジュラですわ!背景的にはジュラ達の部屋ですわね。恐らくリビングやキッチン辺りかと思いますわ」細かい部分を言い当てるサッフォーに少しルアが引いた。

「お、お前何でそんなところまで知ってるんだ?ちょっと怖いんだが…」

「あら、心外ですわね。私は記憶するのが得意ですのよ?ジュラ達の部屋に行くときに何か起きた時に、物的証拠を掴むために覚えておいただけですわ!」

「物的証拠」つまり、アウラスの私物が今回は何が壊れたか、把握するために記憶したという事だ。


静かな沈黙が流れた。


「……それは何と言うか、ストーカーと同じような行為をするんだな。お前って上品な言葉遣いにしては結構意外な行動するよな。別に良いんだがよ」

言い終わった後に少し小声で「お前の事知れるから俺としてはありがたいんだがよ」その瞬間、自分でも何を言ったか分かっておらず、耳まで赤くなっていた。

「あら、何か言いましたの?申し訳ありませんが聞こえなかったのでもう一度言ってくださる?」幸いにも聞こえてないという事実があったので安堵のため息をついた。

「な、何でもねぇよ!ただの独り言だ!気にすんな!」

「?何のことでしたの?」不思議そうに首を傾げながら再生ボタンを押す。

内容を聞いた瞬間、二人の目が大きく見開かれる。

「なッーーーーーー」

「これはーーーーーー」

真剣な顔になって

「これは急いで戻らねばならないようですわね」

「ああ、無駄話してる暇じゃないぜ。この内容が本当だとしたら、他のアンジュたちに動揺が起きる」

「しかし、このような物を撮っておいてジュラは無事なのでしょうか?」

「……保証はできねぇな。アウラス様は全知全能の神だ。俺たちの行動を監視することぐらい簡単に出来るだろ」

「そうですわね。一刻も早く戻らねばなりませんわ。ユラとアイラには届いているのかしら?事情も知らないのであれば、あの二人も対象になってしまいますわよ。アウラス様の術は私たちでも解除するのは時間がかかりますわ」

「ユラとアイラは恐らく何も知らないだろう。俺らで守るしかねぇ!」

そう言いながら二人は走り出した。中央都市に向かってーーーーーー

(クソ!こういう時にアイオンがいてくれたら!)

(私たちがいない間に転生するとはどういうことですの!?戻って来て!)

二人が考えている事は同じだった。普段はマイペースで怠惰な天使だが、こういう時には必ず解決してくれる唯一無二のアンジュ。二人の意思は無意識にアイオンを求めていた。


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