~終幕~
戦争は続く。いよいよデュオン公国はバグラーンに対して正式な宣戦布告をおこなった。戦地はアルハ高原。遂に世界がひっくり返る時がやってきたと世界はその戦争に湧き上がる。
バグラーン軍将軍のオルバーンが放つ野太い声のスピーチ。
世界はバグラーンの圧勝とみていた。
しかし公国軍が召喚した女神の降臨によって戦況は一変する。
バラグーン軍が誇る戦車部隊は女神の生むゴーレムの大群と強烈な酸性雨からいとも簡単に全滅をくらう。
アルバートたちの戦車も振りかざされた巨大ゴーレムの拳により木っ端微塵に破壊された。
「………………」
身体の大部分を損傷したアルバートは蟲の息だが生きていることを確認する。すぐ近くには片腕と片脚を失ったロンディア。
「ロンディア……」
「アルバ……ト?」
彼も辛うじて生きている。
ゆっくりとアルバートはロンディアの身体を担ぐ。
「どうした……どうするつもりだ……?」
「帰ろう……帰って……軍人をやめよう」
「今更こんな体で……馬鹿言うなよ……」
「お前は……死にたいのか?」
「死に……たい?」
「それが……僕は聞きたい……僕は……死にたく……ない……この土産を妻と子に渡……す……までは……」
彼の手には銀のネックレスが握られていた。
「それは……あのときの……」
「ふふ……そうさ……僕は同じユミラを殺し……これを……」
「ユミ……ラ……なんだ……と!?」
「もう……どうせ……長く……ない……でも、ロン……ディア……これ……だけは聞かせろ……お前……は……死に……たいのか?」
「俺は……」
アルバートからのまさかの告白にロンディアは戸惑って揺れる。
しかし、彼の心は嘘をつかない。
「生きたい!!! 死にたくない!!! 母さん!!! 母さん!!! ウアアアアアァァァアアアァァァッ!!!」
大声の嗚咽と溢れる涙を零して彼はその短い生涯を遂げた――
そして戦争は終結する。女神降臨で奇跡を起こしたデュオン公国軍の勝利で。世界はこれまでどおりの統治でまわるようになる。バグラーンの紋章は世界から消えて赤のデュオン公国国旗を世は掲げるようになる。
世界は目まぐるしく動く。
リネとグレンのいるロズベルグも地下に閉じ込められていたユミラやヴィリアなどのデュオンの系譜にある一族という一族の人間らが開放された。だが彼らはとても人間という人間の姿形をしていない……
「お……まえ……たちが……私たちに……したことを忘れない……ずっと!」
解放された一人の者が柵越しに眺めるリネへ怨念を吐く。
ユミラとしての生き方を捨てたリネはただ血の気が恐ろしく落ちてゆくことを肌に感じるばかり。
それから間もなくロズベルグを統治するデュオン公国軍の軍人がやってきた。彼はこの地に残る女子供を私物にする法を制定し、奴隷のように彼女達を扱ったとされる。
だけどリネとグレンは救われた。
彼女と彼がユミラ一族であることが証明されて、公国軍による戦後救済の待遇を与えられたからだ。
「私たちがトリノに……」
「ええ。バグラーンに虐げられたユミラの同胞です。これからはこれまでの不遇を晴らす生き方をして頂きたい……!」
「ですが、今はもう夫もいなくて……」
「ご主人様は死んでおりません」
「え?」
リネに処遇を告げに来た軍人は深々と被っていたフードを外す。
「あなた……!?」
彼はそこで彼女に複雑な自分の立場を話す。それは想像を超えるような御伽話とすら感じられるもの。
アルバートは命からがら生き延びた。
そして背負ったロンディアの遺体をデュオン公国軍に運ぶ。コレを「戦果」と公国軍に評して貰い、報酬を受けたのだ。報酬はロズベルグにいる妻と子を首都トリノの貴族たちが住む地に移住させること。
これらの取引をそれからのバラグーン残党に密偵する任務と引き換えにして、彼は持ち掛けたのだ。
まさかの再会に本の小説で読むような信じがたい話。
それでも彼女が喜びの余りに泣いて抱きつくのに充分。
アルバートはそれから北の国で戦線を整えているというドックス・コリンらの軍勢に入隊する。
もう愛する妻と息子に会うことはないだろう。その覚悟も伝えた。
リネが自分でない男と家庭を持つことになっても妬むことはない。そうとも。
金から銅に色褪せたネックレスを片手に彼は微笑む。
時を同じくして金から銀に色を変えたネックレスを片手に彼女も微笑む。
これはこのトリスで語られる或る夫婦の物語。
これが作り話かそうでないかは受けとったアナタ次第――
最後までの読了ありがとうございましたm(_ _*)m
戦争と土産というところで話を考えてみました。元々ジャンルを「歴史」でコレを書こうって発想があった訳ですけども「危ないかもしれないから止めとき」と色々な御方よりアドバイスを受けまして(;^^)まぁ~トリスを舞台に考えました。嗚呼神を久しぶりに読み返したり、遂行したり面白い機会になったとも思う。
そんな機会をくれた庵ちゃんにも感謝!
また違う作品でお会いしましょう。あでぃおす。




