第五十三話 つづきから
見上げれば、どこまでも続く青い空。一つの世界に繋がっている。
見下ろしても、どこまでも続く青い空。もう一つの世界に繋がっている。
その間はまるで水面のようで。
世界の狭間。
『成長したい』と強く願う者が召喚される地である。
そしてそこに佇むのは……瑠璃色の長髪が艶やかな女神。
今日も二つの世界を見渡して、転生者に相応しい者を探していた。
「………………」
どうやら、変わりたいと強く願う者を見つけたようだ。
「ふむ……頑張り次第で開花する能力を秘めています。彼にしましょう」
すっと立ち上がり、杖を掲げ、魔法陣を描く。
「我々は、期待しているのです。『生きとし生けるものが描く、ゆるやかな成長曲線』が起こす『奇跡』を」
偶然に揺られて。美しいかもしれない。儚いかもしれない。それでも。
諦めないで。一度きりの人生。どうか試練を経て、かけがえのない成長を。
そして生涯、目に焼きついたまま離れないような、生きた証となる奇跡を起こしてほしい。
○○○
広大な草原。
そよそよと吹く風が心地いい。
勇者パーティーは四人揃って、次の街へと向かっていた。
「絶好のピクニック日和だね」
「おい、気が抜けすぎじゃねぇか? 次の目的地分かってんだろうな。頼むぜ勇者」
「うん。元々行く予定だった、水が豊かな街、ウォクイーンだよね。北に歩こう」
「あら、珍しくしっかりしてるじゃない。チラちゃんの影響? シスコンだもんね、リント」
「シスコンは止めてくれ。まぁ、それもあるけど……」
リントは急に、じっとわたしの事を見てきた。
「えっ、どうしたのリント? わたしになんかついてる?」
「なっ、なんでもない!」
懸命に翡翠色の瞳を逸らす。なんだろう。気になる。
(ユキがとっても綺麗だし、尊敬できる人だから僕も頑張りたい……なんて言えるわけないよな)
あっ、もしかして――。
「ああそう! 薬草あるかなって!」
「ひぃう!?」
腰に着いた緑色の道具緑色の道具の中をまさぐるリント。
うぁ……ヤバイ、久しぶりの感覚。なんか悪い気がしな……って!
「キモいわ! やめろ!」
折角、今イイ感じだったのに! もう!
「痛いっ!? 顔に体当たりはナシだろ!」
そんなわたしたちを見て、マルティーズちゃんとガーベル君が笑う。
「お似合いよねー。二人って」
「ああ。俺もそう思う」
「じゃあアタシらは? ベル」
「あ? はあっ?」
金髪ポニテの美少女マルティーズちゃんが焔色の目で、上目遣い。銀髪のイケメン、ガーベル君を見る。
突然のアタックに戸惑っているガーベル君。これはたまらんだろうな。
「……お、大食いコンビだろ」
ガーベル君が照れ隠しで放った一言。これはまずい。
「な・ん・で・す・って?」
「やばいよリント! マルティーズちゃんが!」
「本当だ! ストップ、ストーップ!」
マルティーズちゃんの漆黒の杖から圧倒的な魔力が溢れ出す。
それをみんなで止めようとした。
……こうしてみんなで歩いていると、ここに転生してきた時の事を思い出す。
ここに来る前はコンビニバイトでエリアマネージャーとかアルバイトのおばさんとかにいじめられてめそめそしてた。友達もいなくて、家に引きこもってて。
でも偶然にも女神に導かれてこの世界に転生してきて。勇者パーティーと一緒になって。
それでも最初はただのちっぽけな道具袋だった。いきなり強くなろうとした時もあったけど、それは出来なかった。
『試練』を経て。心も、身体も。少しずつ『成長』できたんだ。
技術の基本を繰り返して。そしてそれを応用して。一人じゃ限界だからみんなに教えてもらって。みんなと共有して。そうしてやっと奇跡的に『真技覚醒』に辿り着いた。
しつこいかもしれないが、わたしはみんなに感謝したい。
「わたし、みんなのおかげで『成長』できた! ありがとう!」
改めて、みんなに感謝をした。ちょっと恥ずかしいけど。
「なによいきなり。改まって……こちらこそありがとう」
黒魔導士、マルティーズちゃんが目を背けながら。
「俺達も成長してんぞ。感謝する」
狩人、ガーベル君が微笑んで。
「はは。ユキがいたからここまで来れたんだよ。ありがとう。これからもよろしくね!」
わたしの憧れ。勇者、リントが満面の笑みで返してくれた。
「よし! なんか走りたくなってきた! みんなであの丘まで競争だ!」
「あっ、待ちなさい! アタシが一番よ!」
「おいお前ら……クソ、余計な体力使うなよ!?」
みんなで一緒に、この辺りで一番高い丘に向かって走りだした。
ここまできたらわたし、魔王を倒して世界を救ってみたい。もしかしたら無理かもしれない。でも。
旅の途中で沢山の人が幸せになったこととか、美味しい食べ物のこととか、幸せな睡眠のこととかを考えれば楽しいよ。なにより――。
頑張ったぶんだけ仲間とやるゲームは楽しいからね! 頑張ろっと!
小鳥遊有希(万能らしい道具袋)と勇者パーティーの旅は、まだまだ続く。魔王を倒す、その日まで。
○○○
第一章のクリア、おめでとうございます。
特典としてメタリックモンスター討伐チケットを二枚を付与しました。
しばらくお待ちください……。
セーブ完了!
「転生したら勇者パーティーの道具袋になったんだが、どうやら万能らしいので一緒に世界を救いに行ってみます」
はじめから
→つづきから
オプション
ピッ。(効果音)
(ここで小気味よいBGMが停止)




