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幕間その8 武装仙女トモエ 胎動編

これは「従魔の従者」の幕間で合っています。

幕間その8 武装仙女トモエ 胎動編


 その世界のとある極東の国は、鎖国しながらも太平の世を謳歌していた。


 数十、小さな領主も含めると数百に上る国が存在しながらも、中央で強権を握る盟主たる将軍の元、比較的安定した時代が続いていた。


 しかし概ね平和な時代だったといっても、問題がないわけではない。

 どの世界、どの時代でも不正や不平等は程度の差こそあれ存在するのである。


 そして鵡戸ムコ藩でも一つの不正が行われ、そのことを察して糾弾しようとした藩士の桜咲慎之介が闇討ちにあい、首謀者は脱藩して行方をくらますという事件が起きた。


 この場合、殺された藩士の遺児は仇討をしないと跡目を継げない。

 正確にはそのようなルールはないのだが、武士の子たるもの、親の仇も取れないようであれば跡継ぎに相応しくないとみなされて、後を継いだとしても藩内で父親が務めていた役職の引継ぎが認められず、結果的に没落することがほとんどであった。


 結果、残された二人の子――姉弟は仇討を藩を通して幕府へ申請、仇討の許可札を受け取り仇討の旅へと旅立つことになったのである。


 とはいえ数えで姉が十五、弟は十二に過ぎない二人だけで仇討など無謀であり、結局のところ藩に残って没落するか藩の外で良くて返り討ち、最悪仇を見つけることもできずに野垂れ死にするかの違いでしかないというのが口の悪い者の意見であり、それを窘める他の者も内心ではその意見に同意していた。


 実際、彼らだけで仇討を成し遂げられる可能性は限りなくゼロに近く、可能性があるとすれば凄腕の助太刀を味方にするか、もしくは仇が病などに臥せって実力を出せない場面に居合わせたなど、余程の幸運に巡り合わない限りは不可能といえた。


 そして彼女たちはある意味で豪運を引き寄せた。




 それは旅立ってから三日目のこと。

 弟にして跡継ぎでもある桜咲政之輔は、道端の木陰に白くて小さな獣が倒れているのを見つけた。

 普通なら見過ごすところであるが、その獣が変わった袋を背負っていたため彼の目に留まったのである。

「そこの坊や、すまないが水を分けてもらえないか」

 そして彼に気づいたその獣、よく見ると栗鼠のようであったが突然人の言葉で話しかけてきたことで、彼は慌てて姉の元へと戻り、たった今見聞きしたことを報告した。


 姉の巴は訝しみながらも桜咲家の跡取りでもある弟の言葉を否定せず、言われた場所を覗くとたしかに白い栗鼠がおかしな袋を背負っている。

「すまないお嬢さん、水を持っていたら分けてほしい」

 そして同じように彼女に話しかけてきた。

 驚きつつも巴は仙術で水を出し、それを器に移すとその栗鼠の前に置いた。

「ああ、ありがとう。君は水魔法が得意なのかい」

 巴は首を傾げ、これは仙術だと答える。

「ああ、こちらの世界では仙術というんだね」


 それから一息ついた栗鼠は巴と政之輔に対し、自分は別の世界から来たと正体を明かした。しかも元々は人間の姿だったという。

「犯罪者を追っていたのだがドジを踏んでね」

 この世界に逃げ込んだ犯罪者を追いかけていたはずが逆に罠にはまり、栗鼠の姿に変えられてしまったという。

 しかも相手を捕まえないと元の姿に戻ることができないとも。

「もともとは子供向けの変身玩具だったんだけどね。違法改造する連中がいて販売中止と回収が行われたんだ。だけどいまだに悪用され続けているというわけだよ」


 二人は白栗鼠の説明を聞いてもほとんど理解できなかったが、それでも普通の動物とは違うということは理解できた。

 しかし桜咲姉弟にも大事な目的があり、そう長い間白栗鼠に構っているわけにもいかない。


 別れを告げようとしたところで、白栗鼠から質問がでる。

「ところで君たち、このあたりで白くて毛の長い猫を見かけなかったかい?」

 姉弟は顔を見合わせた。


 父を討った下手人は逃亡したが、藩に残っている下手人の黒幕と目される人物が、つい先日から珍しい白猫を飼い始めたという話を聞いていたからである。

 二人には彼に協力する義理はないとはいえ、無視して立ち去れるほど非情にはなれなかった。


 巴はあくまでも噂話にすぎないと前置きしつつ、鵡戸藩家老の前藤小十郎直孝が珍しい白猫を手に入れたらしいという話をした。

 そのついでに、その者の家来の一人で裏仕事を引き受けていた多田正兵衛景義が父親を闇討ちし、そのまま逃亡したため、自分たちが仇討のために彼を追っていることも話した。

「ふむ、そうすると君たちのような子供が父親を殺すような男と真剣勝負をしないといけないわけかい。それはなんとも無謀な話だね。

 だが世界にはそれぞれのルールがあるし、そのルールに私がとやかくいうべきではないのだろう。

 それでももしもわたしをその前藤とかいう男が飼っている白猫の近くまで連れて行くと約束してくれるなら、君にささやかながら戦える力を与えよう」


 白栗鼠が言うには、犯罪者から一部回収していた改造変身玩具を一台持っているという。

「これには動物ではなく、彼らが自分たちを強化するための戦闘用に調整していたらしくてね。これを君たちどちらかが使えば十分間だけ結構強くなれるはずだから、仇討が成功する可能性がずっと高くなるよ」

 追っていた犯罪者と対峙したときに、それを使われないために最初に奪い取ったのだった。しかし相手が別の改造玩具で彼を動物に変身させてしまい、結局逃げられたのだという。


 今の彼がそれを使わないのは、一度変身した姿でもう一度別の姿に変身してしまうと元の姿に戻れなくなるため、使用に制限がかかっているからだった。


 結局二人はその提案を受け入れることにした。お家再興のために仇討の旅に出たとはいえ、今のままではそれが困難であることを理解していたからである。


 そして二人のうちどちらがそれを使うかだったが、結局姉の巴が使うことになった。

 仇討はあくまでも跡取りである政之輔が行う必要があり、彼が変身してしまうと本人と認められない可能性があるからだ。

 その点、姉の巴であれば姿が変わったとしても助太刀だと言えばいいだけである。


 そして試しに変身したときの彼女の反応については、あえて語らないで置く。

 ただ「私もその犯罪者を見つけたら〆る」といったことだけ付け加えておく。


 こうして“武装仙女トモエ”が爆誕したのであった。


次回、武装仙女トモエ最終回!


引っ張るのもアレなので、できるだけ早めにアップします。

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