プロローグその21
「まず訂正だけど、ここはただの洞窟ではなくてダンジョンという、魔物が生まれて徘徊する場所だよ。
この世界にはこうしたダンジョンがいくつもある。僕はまだ生まれてそれほど経っていないから難易度が低いほうだけどね。君はその僕のダンジョンで生まれた魔物だけど、見たことない個体だね。
とりあえず君自身が自分の体をシロテンみたいだといっていたので、僕もシロテンと呼ばせてもらっているけど、ここは今まではラット系やラビット系、それにゴブリン、コボルト、オーク系しか生まれなかったんだ」
なんだかいきなりいろいろ言われてもよくわかりません。
「名前はこの世界での呼び名だよ。君が火鼠といっていたのはホーンラット、牙兎はアイスラビット、小鬼はゴブリン、狗人はコボルト、豚人はオークというのがこの世界での名前だよ。あと君が妖力と呼んでいた力は、ここでは魔力と呼ぶ」
なんとわたしが今まで考えていたことまで筒抜けとは。
「一応、このダンジョンで生まれた魔物は僕の配下だからね。ただ君みたいにいろいろ考えて行動する魔物は非常に珍しいから、ずっと観察していたんだ。
ああ、あと君がシロテンとしてこのダンジョンに生まれた理由については、残念ながら僕には正確なところはわからない。
ただ、グランドマザー経由の話では、一年ほど前に隣の大陸で大規模かつ乱暴な仕方で大量の勇者召喚が行われて、その余波が各地にあったらしい。
詳しく説明すると長くなるけど、その余波というのが厄介でこの世界と勇者たちの世界だけでなく、ほかの世界にもその影響が出ているらしくて、各地でいろんな世界から転移してきたと思われる未知の魔物や、正体不明の人間が見つかっているんだ。
だから君もおそらく、その余波のひとつと考えていいと思うよ。
ちょうど僕のダンジョンも次のステップに上がるために強い魔物が生まれるタイミングだったから、余波に巻き込まれた君が僕のダンジョンで再生したということかもしれないね。
君の体については、たぶん君にとって一番印象深い生き物の姿だったという程度の理由だと思うよ。
そもそも世界を渡るには体にものすごい負荷がかかるから、勇者召喚自体も、体がそれに耐えられるように作り替えられて、結果的に強い能力を持った勇者となるんだけど、余波に巻き込まれた人は下手をすると世界を渡れず消滅してしまうから。
君は消滅は免れたけど、体自体が変わってしまったんだろうね」
よくわかりませんが、つまり巻き込まれて魔物に生まれ変わったと。




