プロローグその12
一つ下の層へ戻って下へ行く道を調べるか、それともさらに上に行くか迷うところですが、やはりここまできたのですから、戻るのではなく先へ進むことにしましょう。
三つ目の層では、出てくる生き物は下の層と変わりませんが、代わりに2体一緒にいるところに出くわすようになりました。
これまでは常に1体だったので、別固体はすべて敵対しているのかと思っていましたが、どうやらそういうわけでもないようです。
2対1ではかなり不利ですが、実は少し前から自分の力を強くすることができるようになっています。
これは以前から時々感じていたことですが、戦っている最中に、明らかに自分の実力以上の力が出ていると感じることがありました。
そこでいろいろ戦いながら調べていたところ、どうやら気配探知する際に送り出している何かを体内に向けて使うことで、自分の意志で力や速さを強めることができることがわかってきたのです。
そこに気づいてから、わたしはできるだけ意識してその力の使用を行うようにしました。
なにしろ体格的にわたしはここにいる他の生き物の多くより小さくて力も弱いですから、どうにかして自分を強化できないと、どこかで行き詰ってしまうでしょう。
謎の力ではありますが、使えるものは何でも使わなくては生きていけません。
それで、自分の筋力や瞬発力、持久力を強化するように使いましたが、同時に全く使わずにいることもあわせて訓練しています。
これは、万が一この謎の力が使えなくなっても問題ないようにと思ってのことでしたが、このことには別の利点がありました。
というのも、実は全く使わないように意識することで、相手の気配探知を潜り抜けられることがわかったからです。
これをうまく利用すると、たとえばまずは先に相手の存在を把握できれば、たとえ相手が2体いたとしても、こちらの気配を消して相手に近づき、不意打ちで1体を倒し、その後あらためてもう1体の相手ができるようになりました。
こうした努力のおかげか、この層は4日ほどで全体を把握できました。
今までより早くなったのは、この洞窟の構造に慣れてきたことと、気配察知や身体強化のおかげでしょう。
そしてやはりこの階層にも、上へと向かう道を一つだけ見つけました。