第十一話 彼女達の物語
遅れて申し訳ありません……。
こちらが先に纏まったので、先にこちらを投稿します
東方戦争記はもう少しお待ちください。
オンオフができないかと弾いて見ると、光が消えて普通のアクセサリーに戻った、
光が消えないまま夜寝ることを考えるときついものがある。
ただ、非常に強い疲労感が体を支配している、おそらく能力の使い過ぎだろう。
とりあえず、日記だけでも書いておかないと。
「亮?何してんの?」
大妖精と端の方で様子を見ていたチルノが俺の元にやってきて、日記のことを聞いてくる。
フランはもう疲れてウトウトしている。
「これはな、今日あったことを忘れない様に書き留めておく物だ」
「すごい!あたいも書きたい!」
大妖精は離れたところで微笑みを浮かべている、彼女には俺とチルノが娘と父にみえるのだろうか。
俺は最後ページを破ってチルノに渡す。一本だけ入れていた鉛筆を渡す。
「ほら、これで書くんだ」
「ありがとう!亮!」
チルノは受け取ると大妖精の方へかけていった。
俺も書いてしまおう。
〈洞窟について〉
太陽の光はどう考えてもあの落ちてきた穴以外から差し込まない。
それなのに洞窟内は曇り空の様に明るい。
洞窟の天井が高反射する材質でできているのか、それとも魔法でもあるのだろうか。
〈蓮子先輩〉
1日しかこれに付き合ってないが、彼女はどう考えてもアグレッシブなタイプだ、そうなると俺が敬遠してしまうのだが、それでも俺は彼女二人を助けなきゃならない、それがたとえ死亡していたとしても、だ。
〈マエリベリ(消した跡)メリー先輩〉
彼女は蓮子先輩が何を必要としているか分かる様だ、エスパーか何かですか?
メリー先輩はどちらかというと大人しめだ、だが、昔の人は良く
【普段物静かな奴ほどキレる時は手が付けられない程怒るだろうから気をつけろ】と言った物だ。
機嫌を伺う様な真似をするつもりはない、だが、あまり怒らせる様な行動は避けた方がいいだろう。
〈日記を付けている理由〉
今でも時々それを忘れることがある、チルノに聞かれて思い出した為、ここに書き記して置く。
そもそも血の能力は身体の傷を治す、治すということは、元通りの形に戻すことだが、それは腕や足だから。
もし、脳を撃たれた場合、記憶がそのまま戻ってくるとも考えられない。
もしかしたら、全ての記憶が吹き飛ぶのかもしれない、
それに、今でもこれからでも記憶がゆっくり消えていることは確かだ、といっても必要性の低いものから消えている気がする、一年間に二、三回あるかどうかだが。それでも、忘れてしまってはこちらもあちらもてんてこ舞いになる可能性がなくもない。
どうも、俺の記憶の書き記し方が、脳に【刻む】やり方らしい、だから一度に大量の物を記憶しようとすると頭が痛くなる。
脳外科にもそんなことを言われてしまった、
だから、覚えたことは忘れないが、何らかの原因で、それが一部途切れたりすると、パソコンのファイルの様に開くことができなくなる様だ。
書き終わり、ふと周りを見て見ると、チルノも大妖精もフランもみんな寝ていた。
仕方ない、カバンから寝袋を出す、本当は二人用の物だが、彼女達なら入るだろう。
寝袋を広げて一人づつ抱えて寝袋に寝かせる。三人ギリギリだが、眠れそうだ。
元々、俺は夜間周りを警戒するつもりで寝袋を二人しか持ってきていない、だが、非常に眠い。
カバンを探ってもブランケット一つ見当たらない。
仕方が無いので上着を脱いで、壁に背中を着け、上着をかけて眠ることにした、カバンは上着の下だ。
昔、旧日本軍はシベリアに強制収監された時、防寒具を持っていると、寝ている間に取られてしまうので、彼らは座ったまま眠ったそうだ。
それに学んで、もし敵が来ても起きられる様、座って寝る。
明日にはなんとかここを出て、あのメイドを探してとっちめて、そして先輩二人を回収して帰ろう。
そう考えながら、俺は深い闇へと身を投じた。
後から考えれば、時間をこの時見ておくべきだったと思う。
十二時間前……
視点は蓮子に移る。
「ここから霧が出てるのね?」
「はい、衛星画像ではそうなってます」
「なら、入り口を探さないとね」
宇佐美蓮子こと蓮子は、亮に位置を確認してから、周囲を見て回る。
「見て蓮子、ここに足跡があるわ」
マエリベリーハーンことメリーが指を指した地面には、小学一年生程の大きさの小さな足跡だった。
「本当ねメリー、周辺をもっと探して見ましょ、もしかしたら誰か居るかもしれない」
「もしその人が犯人だったらどうするのよ」
「その時考える、大丈夫よ、私も武器持ってるし」
そういってカバンからハリセンを出す。
「蓮子……それは武器にならないわ」
「いいのよ攻撃できれば、銃なんて私が持ってるわけ無いじゃない、あれ許可率5%なのよ?」
足跡を追いながら蓮子はハリセンを何度も軽く手に叩く。
足跡が途切れたところでしゃがみ込み、最後に向かった方向を確かめている。
「蓮子、何か見つかりそう?」
メリーも蓮子のそばに移動し、足跡が途切れた箇所を覗き込む、
何もない、と蓮子の口から出ていく前に、
地面に大穴が開いた。
「えっ、あっ、きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
足元が突然開いたため、何もできずに二人とも落ちていく。
「メリー!手を!」
蓮子が手を伸ばし、メリーの手を掴み、空中で身体を制御しブレーキをかけるために膝を曲げ、少し脚を開き、空気抵抗を受けやすくする。
「蓮子どうするの?!」
「私に言われてもわからないわよ!」
パラシュートなんてものを彼女達が持っているわけは無い。
『うわあぁぁぁぁぁ!助けてぇぇぇぇぇぇぇ!』
その声に応じるかの様に、上からロープが降ってくる。
「メリー!これに掴まるわよ!」
………ここまで読んだ者ならわかるとお思いだが、これは亮が二人を助けるためではなく自分が降りるためのロープである。
当然一人分の力しかかからないことを想定して杭になる木を選んでいる、ロープの結び方も、かかる力によって、さらに頑丈な結びをすることもある。
それを全く知らない彼女達は、ロープをしっかりと握りロープで落下にブレーキをかける。
ロープが若干伸びた後、そのまま再び自由落下を始めた。
「なんで止まらないのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」
なお、蓮子、メリー両名共素手だったが、火傷は全くしていないことをここに明記しておく。
「どうすればいいのよぉぉぉぉぉ!」
落下中の人間は【文明の利器】を使用しなければ制御なんてできない。
ロープを掴んだせいで更にバランスを崩してしまい、頭から真っ逆さまに落ちていく。
落下速度はどんどん上がり、ついに地面が見えてきた。
いくらスペックホルダーといえども、着地の衝撃には耐えられない。
万事休す、そう思い、目をつぶる。
しかし、いつまでたっても衝撃が来ない。
恐る恐る目を開けると…
自分たちは、ファンタジー物の映画でよく見るベッドに天蓋が付いた大きな……正確に言えばダブルサイズのベッドに寝かされていた。
少し、辺りを見回すと、どの壁も血を思わせるような真っ赤な壁紙が貼られ、花瓶も赤、それに挿さっている花も赤、タンスも赤であればカーペットも赤。
この部屋の持ち主の美的センスを疑いたくなるような部屋であった。
「宇佐美蓮子様、マエリベリーハーン様、お目覚めでしょうか、お食事の準備が整いました、一階の食堂までお越しください」
一人のメイド服姿の女性が部屋に入ってきて、蓮子の方を一瞥し、落ち着いた雰囲気で話をして、机の上(当然ではあるが、机も真っ赤である)に紙を置いて出て行った。
とにかく、いま彼女は生きている、その喜びを分かち合う為、隣に眠っていたメリーを叩き起こした。
起きたメリーと共に渡された地図を見ながら一階の食堂を目指す。
廊下も部屋と同じ様に真っ赤に染まっている。
「本当にに悪趣味ね、この館の主人は、目に悪いったらありゃしないわ」
「蓮子、あまり悪口いってるとどこで聞いてるかわからないわよ?」
メリーの忠告に蓮子は「へいへい……」とつぶやく。
そうこうしている内に、食堂へたどり着いた。
扉は洋風で映画館で見る様な豪華な扉だ。
中に入るとやはり真っ赤で、今度は机も、置いてある皿まで真っ赤だ。
「お待ちしておりました蓮子様、マエリベリー様、私はこの紅魔館のメイド長をしております、十六夜咲夜と申します、今後ともよろしくお願い申し上げます」
十六夜咲夜と名乗ったメイド服の彼女は、スカートの端を軽く持ち上げ、頭を下げ、礼をした。
「こちらこそお願いします…?」
困惑したまま、蓮子は頭を下げる、
「では……」
咲夜が指を弾くと、ワゴンを押している小さな羽の生えた少女があらわれる、ワゴンには皿が2枚乗っている。
「お食事が冷めてしまわれますので、早めにお召し上がりください」
運んできた少女はここで働いているのだろう、日本では労働基準法に引っかかる小ささではあるが、
世の中には身長が140cmに満たない大人だっているのだ、見た目だけで判断するのは良い判断ではない。
皿には目玉焼き・ソーセージ・マッシュルーム・ベイクドビーンズ・ハッシュドポテト・トマト・ベーコン・トーストといった、イギリスでよく食べられるイングリッシュブレックファストと呼ばれる朝食が出てきた。
他にもオレンジジュースやジャムがあり、今まで朝食はコンビニパンで簡単に済ませてきた蓮子にとって新鮮な気分であった。
食後の紅茶が出されたので、二人で飲みながらメイド長である十六夜咲夜(咲夜と呼んで欲しいそうだ)に色々と質問をすることにした。
「まず最初に、ここはどこなの?」
「この洞窟……縦穴については私達もわかりません、突然、飛ばされてきたものでして……
少なくともわかっていることは、ここに地底湖があり、光が何らかの力によってここまで届いている……ということだけです」
「この館の主人は誰?」
「この館の御主人様はレミリア・スカーレット様であります」
その単語に、蓮子は聞き覚えがあった。
「スカーレット……!かなりの名門と見受けられるわね」
「ありがたきお言葉でございます」
隣にいるメリーが蓮子の横腹をつつく。
「ねえ、スカーレットってそんなに有名だっけ?」
「…メリー文系なのに知らないの?」
「文系といっても理系寄りよ、相対性精神学、貴方も知ってるでしょ、それにそんなこと調べてる理系の貴方がおかしいのよ」
「へへーん、蓮子様に抜け目はないのだ、で、スカーレットのことでしょ、
今から説明するわ」




