42話 窮地
半年も空いてしまい申し訳ありませんでした。
今後は章単位で投稿を区切り、投稿中は毎日更新の方向性でやっていこうと思います。
今日から四章終了までは毎日投稿させていただきます。
・間が空いたので簡単にあらすじ
インジェノス帝国に戻るために死神の迷宮を取ることにしたグリムル達。
100階層の階層主は一回しか出現しないと言われ自分たちで戦うことにする。
しかし、何故か想定した階層主ではなく死神とよく似た男が襲いかかってきた。
鈍い痛みが走るが意識は途切れなかった。
ギリギリ頭への直撃を避けられたのは戦いに慣れてきたとか何とか動きが見えたとかって訳じゃない。
単に俺が避けようとか考えたりするより先に勝手に首が曲がって脳への直撃を避けた。
要するに俺より先に反応できたヴァゴスが内側から無理矢理動かしたんだろう。
俺だけだったら今頃頭を真っ二つに裂かれてそのまま意識喪失の後に死んでたな。
ま、そもそもの話だが俺だけだったらこんなところまで来れたかすら怪しいってのはおいておくとして。
頭を傾けた不格好な姿勢のまま、反射的に後ろに飛びのき、断面が真っ平になった頭を修復しつつそんな風に考える。
頭の中身への直撃を避けただけで頭骨までバッチリ到達してちょっと欠けたからね。
ッ!
距離をとったはずが一瞬の間に目の前で鎌が振り下ろされる。
咄嗟に魔領法で簡易的な壁を作り相手との間に展開する。
が、俺の作った壁は熱した剣で油脂を斬る様に鎌に切り落とされた。
まるで抵抗なんて感じさせない。
だが魔領法が切り捨てられ確実にオドが失われる実感は本物だ。
鎌に斬られる瞬間、肩口からヴァゴスが生成した骨が飛び出して相手の刃の腹に当たり一瞬の抵抗の後に砕かれる。
が、僅かな時間稼ぎと鎌の軌道を逸らすことには成功した。
その隙に身を捩って横に避ける。
『あっぶねぇな!
魔領法でどうにかなるわけないだろ!』
反射的な反応だったんだよ。
まぁあそこまで抵抗なく切り捨てられるとは思ってなかったけど。
『破魔の術式は分解だからな。
触れただけで、ッ!っと!』
ずらした軌道で振り下ろされた鎌が、返す刀で切り上げられる。
それをヴァゴスが更に骨を出して弾いた。
『出し惜しみしてらんねぇな。
悪いがオドを使うぞ。』
そうヴァゴスが言うと同時に身体からヌルっとオドが抜き取られる感覚。
そして数瞬の後に俺の体表全体から前面にいる死神もどきに向かって骨の槍衾が形成される。
死神もどきは眼前に迫った最低限の骨を砕くと軽く後ろに下がり、当たらない距離へと回避を図る。
『甘ぇよ。』
回避の着地の寸前に伸びきった骨が全て前方に射出される。
死神もどきが再度骨を砕こうと腕を振ろうとするが間に合わない。
ドドドドドッ、という音とともに死神もどきの居た周辺の地面に土煙が舞う。
『まだだぞ、振り下ろせ!』
ヴァゴスの声に合わせて魔領法で作った竜の胴体位ある拳を土煙の中央に向かって振り下ろす。
が、地面に当たる寸前にかき消された。
まだ生きてやがるな。
『当り前だ。もういっちょ!』
再度オドを消費して骨が形成され射出される。
二度舞った土煙で姿は確認できない。
が、あれでやれたら苦労しないよな。
クッ!?
そんなことを考えていたら土煙の中から何かが飛来する。
慌てて身体を横にずらすが前左足が切り落とされた。
赤い。
血で出来た刃だ。
そのまま二発目、三発目が飛来する。
慌てて地面に転がって回避しつつ切り落とされた足を再生する。
そうこうしている間に土煙が晴れてきた。
『………まじかよ。』
地面には数十本ほどの杭上の骨が刺さっている。
が、肝心の死神もどきの周辺には砕かれた骨粉と欠片のみ。
死神もどき…面倒くせぇな、もう死神でいい。
死神本人に至っては完全に無傷だ。
クソ、倒せるとまでは思ってなかったけどな。
無傷か…。
『全て鎌で弾かれたか、そもそも当たっても無傷だったか…。』
どっちの方がマシなんだ?
『どっちも最悪だ。
あの量の飛来物を処理できる技量は厄介だし、
あの威力で無傷だった場合でも厄介だ。』
っと今の隙に鑑定鑑定。
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鑑定が妨害されました。
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ま、想像はしてたが予想通りか。
何か魔術とか何でもいいから対抗策はないのか?
『んなもんあればとっくに使ってる。
俺様自身に今はオドがねぇつったろ。
魔術陣をかいてお前に発動してもらうならともかく、お前から直接オドを貰っても俺が術式を発動させることはできねぇんだよ。
…厳密にはできるがロスが大きすぎる。
なんにせよ決定打にはなりゃしねぇよ。』
ヴァゴスが魔術を使えたらだいぶ楽なんだろうけどな。
『そしたら50階層の骨どもなんて一撃で終わってたな。
さて、来るぞ。』
ヴァゴスがそういうと同時に死神が鎌で周囲の骨の杭を薙ぎ払いながら突撃してくる。
やっぱりただただ単純に速い。
速い相手には物量が効果的だけど魔領法はかき消されるしな。
振りかぶった鎌が振り下ろされる直前にお腹から出した魔領法の腕で自分の身体を反動を使って真横に飛ばして回避を図る。
そのまま相手が鎌を振り下ろす隙に真横からヴァゴスが俺の肩付近から竜骨の剣を握った腕を突き出す。
が、振り下ろした鎌を減速させることなく横に振りきってカァンと金属をはじくような音が響いた。
隙をついたと思ったけどこれでも弾かれんのかよ。
たださっきの杭と違って砕かれなかったな。
『さっきの杭はそもそも数を用意するのに注力して強度は適当だったからな。
今回の剣は頑丈に作った。
ただ、砕かれなかっただけでもう駄目だ。
ヒビが入った。』
そういいつつヴァゴスが何回か斬り結ぶと剣はバキッと音を立てて根元から折れてしまった。
魔領法を再度真下に展開して反動を使って自分の体を後方へ吹き飛ばす。
『当り前だがあの鎌自体も幻想遺物の類だな。
単純に武器の強度云々じゃなく鎌自体に武器破壊なりなんなりの特性がついてやがる。』
厄介だな。
『ああ、だが幸いお前のオドのある限り剣は作れる。
一回砕けただけで終わりじゃないってのはまだ救いだな。』
相手のほうが武器も強いうえに硬いし速いときたもんだ。
まだ魔術が使われないだけマシか。
もっとも血の刃を飛ばすのは魔術みたいなもんだとは思うけど。
再び音もなく鎌が目前に振り下ろされる。
毎度俺が頑張って作った間合いは一瞬で詰められるみたいで嫌になるな。
ヴァゴスが何とか作ってくれた二本目の剣を魔領法で握って振り下ろされる鎌を受け止める。
その間に死神から死角になる位置で作られた三本目の剣を自分の体を突き破って突き出した。
相手からすれば皮膚から急に剣が飛び出したように思うだろう。
三本目の剣が吸い寄せられるように死神の顔に向かって突き出される。
当たる!と思った瞬間、首を傾けられ最小限の動作で避けられた。
チッ、僅かに頬に傷が出来ただけかよ。
そのまま拮抗していた二本目の剣と鎌も押し込まれ、仰け反りかけた。
もう何度目かになる魔領法での緊急回避。
が、回避しきれずに肩から脇腹までざっくりと切り裂かれた。
何回も見せてしまったせいで徐々に対応されている。
と言うか今更だけど俺の酸の血液が何の効果も出てないな。
『いや、効果は出てるぞ。
服が多少溶け焦げてる。
まぁ、残念ながら本人と武器には何ら影響なさそうだけどな。』
服が多少溶けたところでなぁ。
折角その加護で相手の武器を無力化できるって思ったのに、そもそもそれが効かない相手とかツイてねぇ。
いや、そもそも加護をくれた相手に近しい何かが敵なんだ。
効かなくて然るべきか。
魔領法で回避を続けつつ、切り落とされた部位の再生に努める。
さて、どうしようか。
まだ致命傷は食らってないとはいえオドは残り半分くらいだ。
何度か盾代わりと緊急回避に使った魔領法が切り落とされてるのが痛いな。
魔領法は切り落とされない限りほぼ消費しないが、竜骨の剣を生成してもらうにはオドが必要になる。
その剣がなくなったらいよいよ鎌への有効手段がなくなる。
まぁ、魔領法もオドを消費しないだけで発動に必要だから何にせよオドが尽きたら積みだ。
本当にオドがなくなると何もできなくなるな。
グッ!
考えつつ大きく距離をとると俺の左右を挟むように二振りの血の刃がこちらに飛来する。
一瞬思考したせいで反応が鈍った。
今からどっちに避けても当たっちまう。
となると上に逃げるしか……『バカヤロウ!!!!』
俺が魔領法の反動で空中に跳ねて回避した瞬間ヴァゴスが俺の中で叫ぶ。
そしてそれと同時に俺の目前に迫る血の刃が目に飛び込んでくる。
二振りじゃなくて三振りか!
一瞬遅れて上にも放ちやがったな!
誘われた!
更にこの一瞬の間に空中で咄嗟に動くこともできず、悪足掻きで首を傾ける事しかできない。
ただ、最初の一撃と違って横に広い一撃が首に迫る。
どう考えても避けきれ…せめて威力が低いことを祈ろう。
そう願った俺の思いは届かず血の刃は首をあっさりと両断し俺の頭部が宙を舞った。
いつもお読みいただきありがとうございます。




