41話 神へ挑む
すみません
二カ月近く間空きました。
色々あって仕事を辞めて忙しいです。
次回は早めの投稿を頑張ります。
※2022/8/25 会話文の一部を大幅に修正しました
イザヨイとアカツキは閉まる扉と扉の先に見えるトカゲの尻尾を黙って見送る。
時期に扉が閉まりきってしまい、さっきまで彼女らの後ろを追従してきたトカゲの姿は見えなくなる。
見た目がトカゲなだけで実態はドラゴンの子供であることは分かってはいたが、一緒に行動するにあたってずっとトカゲの姿をしているせいでイザヨイからすればトカゲのイメージが染みついてしまっていた。
「……行かせてよかったの?」
扉が閉まって暫くしてからポツリとアカツキが声を漏らす。
「……本人たちの意思だから。
それにNGG計画には消極的とはいえ協力する身だしね。」
「本人の意思って言っても知ってたら行かなかったかもしれないからその言い方はずるいと思うな。
それに既に現行の計画は頓挫してるようなものだと思うんだけど……。
まったく、機関を出奔して数千年経ったって言うのに真面目なんだから。」
「諦めなさい。そういう性分なのは知ってるでしょ。
そもそも私達は二人とも相当年数の間お世話になったんだから。
恩返しくらいはするべきでしょう。
只でさえ外からの客人に対しては甘い人達だったんだから。」
「まぁ、そうだけどね……。
でも、今のあの二人でロムおじちゃんに勝てる?」
「……出てくるのは本人じゃなくてあくまで戦闘用の義体…アバターよ。
それもこの浅い階層程度に出てくるのは地上用にカスタムされて弱体化に弱体化を重ねた最下級の20等級前後のアバターね。」
「んー、20等級ってどの位の強さだったっけ?」
「……少なくとも大人の霊皇竜よりは弱いわね。」
「えー、霊皇竜の成体は覚醒魔族クラスじゃない。
当たり前でしょー。
……えーっと、以前に神界で模擬戦してもらったロムおじちゃんのアバターの等級っていくつだったっけ?」
「……たしか7等級位だったわね。
それでも私達二人がかりで手も足も出なかったけど。」
「そっかー、じゃあ、うん…まぁ、何とかなるかな…?」
「本来ならね。
ただ、ヴァゴス君はともかくグリムル君はまだ死者創造の術者支配から抜け出せてないわ。
しかも術者の基になったのが人間族みたいだからかかなり酷い能力制限ね。
どんな低能な術者がかけた術式なんだか……。
まぁ、死者創造で作成されるアンデット本来の基礎スペックの9割以上が生前の肉体依存なのはまだ救いね。」
「ああ、そっかー。
まだ元の術者が生きてるんだー。
んー、だから覚醒魔族級の身体なのにあんなに弱っちいんだねー。」
「そもそもまだ幼いって言う面も少なくないけどね。
そこをヴァゴス君の方が良い感じに補ってくれてはいるわ。
だけど、まぁ、それで覚醒魔族に届くかと言われたら正直まったくもって足元にも及ばないのが実態ね。」
「一応、ヴァー君の方も覚醒魔族…アローサルの筈なんだけど……。」
「分類上はね……。
アローサルは魔素細胞比率、オリジンは他に個体が居ない唯一個体に対して付けられるというのが鑑定のルールよ。
そして、その2つが交わった定義だと強い個体が発生しやすいってだけじゃない。
アローサル・オリジンだからと言って必ずしも強い訳じゃないわ。」
「そう言えばそんな定義あったねー。
それじゃ、奇跡的にアローサルとしては弱い物同士が合体した感じなのかな。」
「弱い、と言っても覚醒魔族として見た場合の話だけどね。
普通の人間…人間族や精人族はおろか普通の魔人族と比較した場合はあの二人の基礎スペックは十分高い…まぁ、戦闘に不慣れって点はあるけど。
そもそも、潜在的な戦闘能力と言う面で覚醒魔族が段違い桁違いに強いってだけよ。」
「でも、仮にもロムおじちゃんのアバターだよ。
そんなので大丈夫かな?」
「さぁ?それは彼らが懸念する事であって私たちが関与する事じゃないわね。
なんにせよ、既に扉が閉じられた。
しかも追加テストなら念の為の空間隔離が行われている。
今から私たちが出来る事はないわね。
精々、彼らが滅ばない事を祈ってあげましょう。」
「ふふ、祈る相手が知り合いばっかりだからあんまり御利益感じないけど。」
「何言ってるの…今更でしょ。」
そう言って二人は扉から目線を逸らし、近くの岩場に腰を下ろした。
▼△▼△▼△▼
「………。」
「えーっと…死神…様?
それともレフソ=ウェル様、の方が良いのかな?」
取り敢えず即座に襲ってくる気配は無さそうだ。
なので恐る恐る声をかける。
が、それでもローブの男…暫定的に死神と思われる男に動きはない。
……どうすればいいんだ?
と言うか本当に神なのか?
似てる誰かじゃなくて?
だとしてもなんで神がこんなところにいるんだ?
『………。』
ヴァゴスも黙ったまま何も言わない。
ただ、警戒心だけが伝わってくる。
そのまま時間だけがじりじりと過ぎ去っていく。
痺れを切らして一歩だけ前に歩を進めた。
『っ!おい!』
焦ったようにヴァゴスが声をあげた。
それと同時に死神の紅い眼球がジロリと此方を睨み付ける。
そして無造作に右手を何もない空間に突っ込んだ。
引き抜かれた右手には死神の身の丈ほどもありそうな大鎌が握られている。
そして、明らかに威圧感が一気に増大する。
もしかしたら戦いに来たわけじゃない。
そんな風に抱いていた淡い希望が一瞬にして断ち切られた。
拙いな。
明らかにエヴァーンと戦った時以上のプレッシャーだ。
エヴァーンと戦った時と違ってヴァゴスがいるし、俺自身も力を増した。
けどそんな事が支えに思えない程にビシビシと伝わってくる。
『チッ、取り敢えずトカゲのままじゃ窮屈だろ。
身体を戻すぜ。
お前の身体のままで表面を薄く覆って守ってやる。
気をつけろ。
一つのミスで二人揃って消滅するぜ。』
ヴァゴスがそう言いつつ身体を覆っていた細胞を変化させる。
俺も諦めて腹を括らないとな。
括りたくないけど。
何でこんなところで神と戦わないといけないんだ。
勝てる訳ないだろ。
『ふう、そう悲観するな。
神と言ってもあれは本体じゃねぇ。
本体なら俺様もお前も立ててすりゃいねぇよ。
偽物か或いは別の何かだ。』
最初あんなに焦ってたのに冷静だな。
『驚きから脱却できただけだ。
よくよく考えればこんな所に神が来て態々戦う意味もねぇ。
俺らなんぞその気になればプチっと潰せるのが神だろうが。
それがこんな回りくどいやり方で来たって事は何かしらの意図があるんだろうよ。
もしくは神とは関係ない偽物かな。
ただ、なんにせよ神じゃないにしてもアレの強さは本物だ。
覚悟を決めろ。』
むう。
まぁ、言われてみればそうか。
だとしても鱗を削り取られるようなプレッシャーであることには変わりないけどな。
悲観しても仕方ない。
取り敢えず戦って乗り越えないと次は無いからな。
ヴァゴスの言う通り覚悟を決めて前足に力を入れる。
死神…いや、ヴァゴスの話を聞いた感じだと死神もどき、でいいか。
死神もどきはそんな俺たちの準備が出来たのを確認すると右に持った鎌を肩に担ぐ。
そして空いた左手の人差し指を伸ばすと、自身の胸の中央をトントンと二回指で指す。
……なんだ?
動作の意味が分からず首をかしげる。
ただ、死神もどきはそんな此方の心情に構うことなく、担いだ鎌を両手で持ち直すと身体の前で構えた。
『考えても始まらねぇ。
来るぞ!
気を緩めんなよ。
気をつけろ!』
そして、次の瞬間ギラギラと炎が反射する大鎌の刃が眼前に迫ってきた。
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