34話 永劫なる種族の眠る墓
前の投稿から1月空いてしまった……。
すみませんでした。
エタったわけじゃありません。
コロナでごたついて仕事が決まらないんです……。
もうしばらく不定期な更新になりますがご容赦ください。
じっとりと湿っているがヒンヤリとした空気、それと強い土の匂いが鼻にまとわりつく。
土の匂いをこんなに感じたのは初めてだな。
きっと外の匂いと比べると感じる香りが微妙に違うのは土はあるのに植物が全く無いからなんだろう。
植物の青臭い香りが一切なく、純粋な土と岩の匂いだ。
ごつごつとした洞窟の側面がその匂いをより強く感じさせているような気もする。
まぁ、後は湿気かな。
因みに辺りは真っ暗だ。
真っ暗だが今ここに居る全員が吸血種…またはそれに類する存在である故に別段暗闇は洞窟を進む上で障害とはなってない。
実際に俺も別段暗いと感じる事もなく普通に辺りを見渡して進んでるしな。
イザヨイが言うには普通の人間族がここに潜る際は灯り対策が必須らしい。
なんでって当然この迷宮内は全く灯りが無いからだ。
正確には階層主と戦う場所とその前にある休憩所ではぼんやりと燃えて消える事の無い松明が設置されているらしいが。
だから食料と同様に灯りの管理が非常に重要らしい。
食料が尽きると死ぬのは当然だが、灯りがなくなっても普通は帰れなくなる。
迷宮から帰れないって事は、即ち緩やかな死と何も変わらない。
灯りが無いと迷って出口にまでたどり着けないってのはもちろんだが、この迷宮で出る不死系の魔獣はほぼ全てが暗闇に耐性がある奴らだ。
普段視覚に頼ってる奴らに急に感覚を一つ封じた状態で戦え、ってのはどう考えても上策とは言えないだろうからな。
因みに最後の手段として魔術による光があるが、使い続けると当然だがオドを消費し続ける。
いざ戦う時に空っけつじゃ、意味ねぇよな。
そんな訳で普通はここに潜る場合は十全に灯りの対策をするんだとさ。
ま、最初に言ったように俺達にはその必要は無い訳だけど。
夜目が効くってのはいいね。
『ま、曲がりなりにも俺様もお前も吸血鬼も闇の眷族だしな。
……何をもってして闇なのかよくわからねぇけどよ。』
そりゃ、あれじゃないか。
太陽に触れると発火するから光に嫌われてるって発想から来てるんだろう。
『発想と言うより実際にその特性のせいで夜行性に成らざるを得ないからだろうけどな。
最初の吸血鬼が夜目が効いてたのかは知らねぇ。
代替わりしていく上で必要だから身につけたのかもな。
あるいは夜目が効く奴しか生き残れなかっただけか……。
既に死んでるのに生き残るってもの不思議な話だ。
正確に言うなら死に残った、かね。』
確かに。
にしても同じ階層型の戦闘迷宮にしては≪怒れる自然の大遺跡≫とは全然違うな。
あそこは広い場所を歩き続けるって感じだったが、こっちは迷路みたいだ。
まぁ、ちゃんと階層が変わる際には階段があったりするところは似てるけどさ。
えーっと、今は何階層だっけか。
『5階層だ。
4回階段を下ったからな。』
ああ、だったか。
どうも先頭を行くイザヨイとアカツキの後ろをついていくだけだから緊張感が無い。
昔に怒れる自然の大遺跡を一人で攻略させられた時とはえらい違いだ。
と言うか5階層にもなるのに一向に魔獣と接触しない。
こんなに敵と接触しにくい迷宮なのかね。
少なくともさっき読んだ本にそんなことは書いてなかったけどな。
『いや、普通はもっと敵に襲われちゃいるはずだ。
それこそ俺様達が人間の一団ならもう何回も襲われてても不思議じゃねぇだろうな。
……辺りから気配こそしてるが襲ってくる雰囲気じゃねぇな。』
ふーむ。
何となく気になったから魔領法を展開させて薄く広く空気に混ざらない程度に広げる。
イザヨイとアカツキの近くまで広げるとチラッと見られたけど特に何かを言われることは無かった。
やっぱり見えてんな。
別にもういいけどさ。
そうやって魔領法を広げてみると辺り一帯の洞窟の構造が脳裏に浮かんで何となく理解できる。
そして、俺達の進む道のそう遠くない場所に人型の何かが居る。
うーん、人型だけどなんかスカスカな奴だな……ああ、これがスケルトンか?
ただ、そんな俺達の近くにいる奴らも近くを通る際に襲ってくることはなく、寧ろ近付いたらその分だけ少し距離を取って離れていく様に感じた。
そして俺達が過ぎ去った後に元の位置へと戻っていく。
どう見てもこれは俺達が避けられてるな。
イザヨイたちが何かしてるのかね。
何となく迷宮に入ってからは話しかけちゃダメな気がして黙ってたが、特に心配もなさそうだから聞いてみる事にするか。
前を行く二人も別段緊張した様子もないしね。
俺の思考を読み取ったからかグリムルから喉の外部筋肉の操作権限が譲渡された。
「なぁ、さっきから敵と遭遇しないけど何かしてるのか?」
どう聞くべきかやや逡巡したが、ここまで案内してもらって警戒するのも今更な気がする。
から、素直に聞くことにした。
俺はヴァゴスと違って腹芸は苦手だしな。
俺が声をかけると前を行くイザヨイがチラッとこちらを振り返って答えてくれる。
「ええ、『死者への圧政』って言うマイナーな術式を使ってるわ。
別に接敵しても全く問題なく倒せるのだけど、無闇と迷宮に負担を掛けるのも悪いしね…。
この術式だと40層位までは途中の試練階層を除いて戦闘は避けられるわよ。
戦いたかったかしら?」
「いや、別段そう言う訳じゃ無い。
敵が辺りに居る気配はするのに全然遭遇しないからな。
少し気になっただけだ。
……そんな術式があるならこの迷宮はかなり難易度が下がるんじゃないか?」
40階層までは、軽々行ける。
今回の俺達の目的は100階層だから半分も要件を満たせないが、普通に人間が安全に探索する分には十分じゃないか?
「いえ、残念ながら誰でも簡単に使えるものじゃないのよ。
そもそもあまり認知されてないだろうし。」
「……オドをやたらと使うとかか?」
「いえ、この術式の継続運用にかかるコストは大した量じゃないわ。
発動難易度もそこまで厳しい訳じゃ無い…。
理由はこの術式は不死者にしか使えないからよ。
正確には死者にしか使えない、が正しいかしら。」
ああ、成程ね。
そりゃ確かに使える奴が限定されるか。
「因みにその条件だと俺にも使えるのか?」
「そうね。
条件としては問題ないと思うわ。
厳密には威圧に近い術式よ。」
えーと、威圧の術式をそもそも知らねぇ。
「やめとけやめとけ。
今のお前じゃ聞いても発動はおろか理解も難しい内容だ。
今の話を聞いて何となく俺様は概要は分かったから、お前が使えるようになったら教えてやるよ。」
俺の頭からいつの間にか生やした口でヴァゴスが会話に割り込んでくる。
ぬぅ、残念……。
と言うか別に態々口に出して言わなくてもいいのに。
「いや、俺様も聞きたい事があってな。
別段重要な事じゃねぇが。」
「えっと?私にかしら?」
俺とヴァゴスの会話を聞いてイザヨイが聞いてくる。
「ああ、ちょっと気になっただけだがな。
来てる服、和服だろ?
あんたはイズランディア諸島の出身なのか?」
えーっと、イズランディア?
どこだっけ?
「いいえ、確かに和服だけど私はイズランディアの出自じゃないわね。
それに和服は別段イズランディアの名産って訳じゃ無いわよ。
ファンディでも流行ってたことがある位だし。」
「それは当時の魔王が和服が好きで着てたのが広まっただけだろ。
しかもかなり前に。
今はもう着てる奴は町中に居なかったじゃねぇか。」
「まぁ、確かにそうね。
ただ、私の出身はイズランディじゃないわ。
もっと遠い所よ。
……因みにお二人の出身はどこか聞いてもいいのかしら?」
「あー、まぁ構わねぇよ。
俺様は最初に言った通り錬金で作られた存在だからな。
研究室が故郷だ。」
ん?出身?
えっと…。
「俺は竜天獄出身だ。
そこから人里に行ったところで人間に捕まったんだ。」
「ああ、アバローネ山脈…。
また珍しい出自ね。
今は霊皇竜種はどの位いるの?」
「俺の家族は数匹しかいない。
他の同種の家族は見かけた事が無いかな。
母さんが言うには竜天獄にはもっと居るって言ったけど。」
「そう。結構減ったのね……。」
最後はどちらかと言うと独り言のようにイザヨイが呟いた。
んでイズランディアってどこだ?
『プリマイブ大陸北西にある諸島にある国だ。
パーノメーシスの南、インジェノスの西にある。
独特な島国文化があってな。
あのイザヨイが来てる変わった服もその国じゃよく着られてるものだったからよ。』
成程ね。
インジェノスの周辺諸国か。
「さて、次の階段よ。」
話している間に6階層への階段が見つかった。
戦闘が無いとただ進むだけだから楽だけど会話でもしてないと暇だな。
イザヨイとアカツキに従って同じ様に階段を下りながらそんな風に思った。
いつもお読みいただきありがとうございます。




