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死した竜の物語  作者: 獅子貫 達磨
第四章 帝国を目指して
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21話 店主の情報

幸い…と言ったら店主に怒られるかもしれなが、俺達からすれば幸い、その魔道具の店には他に人が寄っていなかった。


『繁盛してたら客一人一人に構ってくれなくなるからな。

 情報を聞き出すなら売れずに切羽詰まってる奴かそうでなけりゃ余程稼いでる奴に金を渡して聞くのが一番だ。』


ふーむ。

でも目の前の店主はそんなに切羽詰まってるように見えないけどな。


『そりゃお前、切羽詰まってます!って雰囲気を前面に出してみろ。

 足元を見られるのが関の山だ。

 ただでさえ切羽詰まってるからこそ普段通りに余裕だってのを見せて行かねぇとな。』


うぇー、面倒くさいな。

商人はなりたくないね。


『ま、俺様もお前も商人って柄じゃないしな。

 他人の顔色を窺うなんてまっぴらごめんだね。』


俺とヴァゴスが話してる間も店主は通りを歩く者に声をかけているが、基本的にチラッと看板を見て無視されている。

無情である。


『いや、お前だったらあの魔道具欲しいか?』


んー。

正直別に要らない。

砂埃も気になったことないし。


『まぁ、だよなぁ。

 基本外で生活する奴からしたらそんな認識だわな。

 売るにしても貴族向けの商品だな。

 本来なら外で泊まる事の多い狩人とかなら買うんだろうがこの国にはいねぇ。』


何で売ってるんだ?


『んー、まぁ大方他の国でよく売れたからじゃないか?

 この国だけ物が売れないって事はざらにあるんだがな。

 ま、なんにせよ俺様とお前からすりゃ好都合だ。』


そうだね。

じゃあ声をかけて話を聞けばいいのかな?


『あー、それなんだが。』


うん?


『悪ぃが今回は俺様に話させてくれ。

 まだお前のイントネーションは最善とは言いづらいし、交渉は俺が指示するより自分で喋った方がやりやすい。

 折角練習して貰ったところ悪いがな。』


ああ、まぁそれもそうだね。

仕方ない。

情報を集める事の方が大事だしね。


『ああ、悪いな。』


身体の主導権が一時的に遠くなるのを感じる。

俺は眺める事しかできないし大人しくしておくか。

暫くするとヴァゴスが身体を動かし始める。


店主は通りを行く奴に頑張って声をかけるが、チラリと目線をやる者はいても足を止めて話を聞くってやつもいないな。

増してや隣の屋台は人が並んでる。

対比になっててやや哀れだな。

変わらず声をかけ続けているがやや気疲れした様子だ。


そして、自分に向かって近づいてくるデカいトカゲ…まぁ俺だけど…を見かけて迷わず声をかけてきた。


「やや、お客さん。

 どうですか?

 うちの商品は。

 野宿する際に細かい塵や埃を外から入らないように微弱な結界を維持できる優れ物ですよ!

 今のところうちでしか売っていません!

 なんと土埃と砂漠で有名なアレーナム産で効果も折り紙つきです!

 現地ではほとんどの人が持っていると言う優れモノです!

 一家に一台どうですか?」


おうおう、構ってもらえる相手が出来ただけで嬉しそうだな。

まぁ、あの無視のされっぷりを見てると無理もないが。


「ほう、アレーナムの品か。」


俺の喉から音が紡がれる。

喋ってるのはヴァゴスだけどな。

俺は聞いてるだけ。


「ええ、アレーナムから直輸入した商品です!

 これさえあれば外で砂嵐が来ても砂を中に入れません!

 安心して快眠が守られる品物ですよ!

 一台どうですか?」


「ふむ。

 アレーナムね。

 砂漠で有名って事は知ってるんだけどな。

 だがこの国じゃそこまで砂埃を防ぐ意味は薄いと思うんだけどな。」


「いえいえ、そんな事はありませんよ。

 砂が舞うほどの場所ではなくとも微細な汚れなどは宙を漂っています。

 それらが寝ている間に入ってこないように守れるのです!

 健康面と言う意味でも優れモノですよ!」


宙を普通に漂ってるものを防げたところでな、とは思うが。

別にうっとおしいって思った事はないけど。


「成程な。

 因みにいくらだ?」


「よくぞ聞いてくださいました。

 普段であれば50000ルガロのところ、本日入荷の商品と言うところで…

 35000ルガロです!

 かなり勉強させていただきますがどうでしょうか?」


「うーん。

 ただなぁ。

 別に必要性をそこまで感じてる訳じゃ無いからな。

 種族柄外で寝泊まりすることは多いが別に砂や埃額で不快に感じたことは無いからな。」


ヴァゴスが悩むふりをする。

そもそも俺達35000ルガロも持ってないしな。

数千ルガロまけられたところで残金が空っぽになっちまう。


「いえいえ、お客様。

 それは産まれてからその環境が当たり前になってるからでございますよ!

 一度この魔道具を使って寝てみてください。

 きっと今までの睡眠は何だったんだ!と思うような快眠間違いなしでございます!」


そもそも俺もヴァゴスも睡眠は必要ないんだけどな。


「いやぁ、そう言って貰えると気になるんだがな。

 ただ本当のところどれほど効果があるか分からないものに大金を掛けるのもな……。」


「ふむ。

 では分かりました更におまけして30000ルガロでどうでしょうか?」


「うーん……。

 魔道具だけに30000ねぇ。

 何かもう一声何かないのか?

 アレーナムの特産品とかも一緒に入荷してたりしてないのか?」


でも高いわ。

……いや相場は知らんけど。

あくまで今の所持金と見比べた場合の感想でしかないけどさ。

いくらで入荷したんだろうな。


「分かりました。

 お客さんもお上手ですねぇ。

 30000ルガロでこの魔道具に加えてアレーナムの特産品の乾燥モエナもお付けしますよ!

 えーと、お客さんは果物の類は食べて大丈夫ですよね?

 個人的に輸入したものなのであまり多量には付けられませんが……。」


「ほうほう。

 果物は問題なく食えるぜ。

 モエナっつうとプリマイブ西側の果物だろ?

 なんでアレーナムの特産品なんだ?」


「え?ああ、えっと、モエナを腐らせずに乾燥させることのできる気候条件にアレーナムが適しているからですよ。

 なのでアレーナムでしか乾燥モエナが生産できないんですよ。

 乾燥させたモエナは酸味が抜けて甘みが強く残っており大人気ですよ。

 女性に送ったら喜ばれること間違いなしです!」


おまけの方に食いつかれて一瞬商人が困惑した。

女性に贈るったって送る相手がいねぇよ。

知り合いのメスなんざエヴァーンとリリルカ位のもんだ

リリルカはともかくエヴァーンは果物より女性そのものをあげた方が喜ぶだろう。

主に血的な意味合いで。


「成程な。

 実は近いうちにプリマイブ大陸に寄る用事があってな。

 最初に上陸するのが西側になるだろうからその魔道具はあってもいいのかもしれないな。」


「ええ、でしたら尚の事あれば快適なのは間違いなしですよ。

 因みにご旅行か何かで?」


「ああ、そんなところだ。

 友人と二人でな。

 その旅行で便利そうなものがないか見に来た。

 今は手分けして探してるところだ。

 そういや、行くにあたってあまり世情には調べてないが、向こうの大陸は特に変わった事は無さそうか?」


「では是非うちの魔道具を。

 ご友人さんの分も買っていただけるのであれば更にまけさせて頂きますよ!

 っと、世情ですか?

 えー、まぁそうですね。

 昨日のアレーナムの商人からは特に変わった事は聞いてないですね。」


「ふむ。

 一応アレーナム近くのインジェノス帝国も寄ろうか検討しているが、そっちについても何も聞いてないか?」


商人は一瞬顎に手をやり黙り込む。


「うーん、そうですねぇ。

 特には聞いてませんねぇ。

 ただ、それ以前にインジェノスはお勧めしませんよ。

 そもそも人間族ヒュマス以外は観光に行くのお勧めしづらい場所です。

 昔みたいに捕まって奴隷と言う事はありませんが奇異の目で見られますよ。

 特に言っては悪いですがお客さんのように魔獣に近い外見ですと何があるか……。

 この国で生まれ育った者からすると信じられないくらい外は変わり者に冷たかったりしますからね。」


「成程な。

 そもそも行くのはやめておいた方がいいって事か。

 じゃあインジェノスは寄らない事にするぜ。」


「ええ、それがいいかと思います。

 ただアレーナムに行くのであればうちの魔道具を是非に…。」


「うーん、言っちゃ悪ぃが輸入された物より現地で買った方が安くないか?」


「いえいえ、沢山の取引をする代わりに私は特別価格で仕入れていますので。

 現地で買うよりも幾分か安くなっておりますよ。

 はい。」


「成程な。

 分かった。

 さっきも言ったが友人と手分けをして探していてな。

 この後成果を二人で教え合う手筈になってる。

 そこでここの店の話をさせて貰おう。

 その後二人で来るって事でもいいか?」


当然そんな手筈にはなっていない。

商人はやや難しそうに顎に手をやって首を傾げる。

ここで即決して欲しいのと後で二人分買って貰えるかを天秤にかけてるんだろう。


「うーん。

 分かりました。

 絶対来てください!

 お二人分購入されるのであればお安くさせていただきますから!」


最終的には二個売れるかもしれない方を取った。

まぁ一個も売れないんだけど。

ちょっと申し訳ないな。


「ああ、後で寄らせてもらう。」


嘘つけ。

絶対寄らないだろ。


ヴァゴスが店主にそう言うと身体が勝手に動き出し、店から離れていく。


『特に目ぼしい情報は無し、か。』


だね…。

何か手掛かりがあれば方向性も決めれるんだけどな。


『ま、アレーナムから来た商人からさっきの店主が聞いた話にインジェノスに関する内容が含まれてなかっただけかもな。

 本当はインジェノスの情報を入手してたがさっきの店主とは話題にならなかっただけかもしれねぇ。

 そもそもアレーナムの商人がインジェノスの商人と話をする機会が無くて情報を得てないとかな。

 単純に噂が広まるる頃合いにアレーナムに居なかった可能性もある。

 と言うか時間的な事を考えると情報が既に出回ってる確率の方が低い。』


確かにそれもそうか。


『ああ、まだお前が俺様と出会って一か月ちょっとだ。

 インジェノスから最短ルートでファンディを目指した場合は凡そ二十日前後。

 荷物の多い商人だともっとかかるだろう。

 そもそも噂を持った商人は船の上って可能性が高いだぜ。

 あまりにも緊急な情報だとイーホの通信が使われるからもっと広まるの早いけどな。』


ま、元からダメ元だしな。


『ああ、インジェノスに近づけば近づくほど情報は手に入る。

 元より今回の情報の主目的は酒場に来る商人だ。

 さっきの店主みたいな現地の奴らから聞こうとすりゃ伝言ゲームになっちまうからな。

 さて、んじゃまぁ予定通り他の店も適当に見て、食料区画を見て回ろうぜ。』


そのまま、身体の操作はヴァゴスに預けたまま他の店も回って見て行った。

一々体の操作を渡されるのも手間だったし。

どうせヴァゴスが話すなら一旦ずっと預けておいた方が楽だしな。

いや、預けるって言っても元はこの外骨格自体ヴァゴスの物なんだけどさ。


ただ、専門具区画で二店舗、食料区画で五店舗、移動中に通りがかった雑貨区画で一店舗と最初の店の計九店舗で聞いたが収穫はゼロだった。


どの店もインジェノスに関係する話は聞いてないそうだ。

最後の店で話を聞く頃合いには日がかなり傾いていた。

そのまま極彩色市場での調査は諦めて酒場に向かう事にする。


幸いインジェノスの情報は無くとも一番にぎやかになって人が多く集まる酒場の情報なら知る事が出来た。

現地の魔人族グロリアの間では有名な店らしい。


教えられた酒場の方角に向かって俺達は歩を進めた。


いつもお読みいただきありがとうございます。

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