19話 ファンディ魔王国
※2020/7/28
修正しました。
話中のルガロ⇔帝国統一貨幣の計算が一部間違っていました。
言われた通りにしてたら船の甲板に戻された。
後で査定用の荷物を取りに人が来るらしいがそれまでは甲板から動けないみたいだ。
折角ハイガンの町を見に行けるって思ったのにな。
まぁ、ボヤいても仕方ない。
今の間にさっきの会話で出て来たカードについてヴァゴスに話を聞いてみる。
『ああ、仮入国証…カードについてだな。
あれはファンディ魔王国独自の身分証明書だ。
国民であれば国民証、長い滞在なら入国証がそれぞれ渡される。
……まぁ入国証の事はさっき記憶を漁り直して言ったんだが。
全部同じサイズのカードだから纏めてカードって言われてるな。
正確には身分証明書と通貨管理を兼ねたカードだな。』
通貨管理?
『ああ、あのカードは自分の身分を証明する記載と共に所持している金額が書かれてるのさ。
金額欄は隠したければ隠せるがな。
お前もインジェノスで暮らしてエヴァーンとも関わってたかから金については知ってるだろ?』
人間が何かを買ったり売ったりする時に基準にする丸い金属だろ?
人間が命の次に大事にしてるって言う。
『そうだ。
まぁ、金に関する価値観はそれぞれだけどな……。
それはさておき、お前も認識している通り他国は有形の金がメインだ。
要は金貨とか銀貨とかな。
ただこの国では所持する金は数字に変えられてカードの記載へと変わる。
そのカードの数を変動させて金という形を現してんだよ。
ま、少ないとはいえ金属貨幣の類もある。
使ってるのは旅行者ばっかでファンディ魔王国の連中はほとんど使ってないけどな。
他国の商人とかは形のある金属じゃないと安心できねぇみたいだ。』
ええっと?
つまり普通なら金属を対価で物を売り買いするけどこの国ではカードに書かれた数と物を交換して売り買いするって事?
『凡そはその認識で問題ねぇ。
因みにファンディ魔王国の通貨の単位はルガロだけだ。
ここ迄が大体のこの国の金についての説明名だが…思ってるより混乱してねぇな?』
そうなのか?
別に混乱する要素はそんなになくないか?
『いや、結構混乱する奴は多いぞ。
初めてファンディに来た奴はまず他の国とは違う通貨体制に驚いて困惑する。
そして良く分からねぇって怖がって現物のルガロに変えるのさ。』
うーん、多分俺自身がまだ金を使った経験が殆どないから驚くも何も無いんじゃないかな。
『先入観と常識が無いからか。
それはそれで説明が楽でいい。
因みにカードの金は記載されてるだけじゃなく、実際にお前が保持してる金だからな。
その数を変動させて支払う都合上、取り扱いは大事にしろ。
カードを無くす事と所持金がゼロになることは同義だぜ。
ま、カードの金は最初に登録した本人しか金額の操作を受け付けねぇから、案外衛兵に届けられる事が多いんだけどな。』
成程ね。
無くさないように注意しろと。
『因みにお前が知ってる金って言うとインジェノスで使われてた帝国統一貨幣だよな?
あのモネリ金貨、ダート銀貨、ミゼリ銅貨って三種類の。』
あー、うん。
そんな名前だったかな。
俺は実際にその金で何かを買ったりする経験は無かったけど。
確か俺が競りにかけられた時には400モネリ金貨の値が付いたんだっけ?
騎士団が競り落としたはずだ。
まぁ、もっともその後にシドの野郎の所行きになっちまったけどな。
買いとったなら最後まで面倒見ろよ。
『そうなってたら俺様はお前と会えてなかったから俺様としちゃそれでよかったって思うがな……。
ざっくりと金銭価値を伝えてやるとすりゃ、大体になるが400モネリ金貨は7000万ルガロだ。
ざっくりとだが1ミゼリ銅貨が100ルガロだと思えばいい。
だから数値が高いからと言っもルガロの場合はそこまで高いって訳じゃねぇ。
パン一個とかでも50ルガロとかするからな。』
って言われてもな。
金って概念は知ってても金で何かを買った経験は無いからその7000万ルガロがどの位かピンとこない。
50ルガロと比較しても数がデカすぎてピンとこないね。
『あー、俺様とお前が乗ってきたこの船。
こんな感じの船を新品で作ろうと思うと大体3000万ルガロだ。
お前はこの船の2倍強の値段って事だな。』
そう言われると…高い?のか?
ダメだ、自分の値段の相場を知らない。
そもそも何かを金に換えるって意識が薄いんだろうよ。
だから、数字を聞いてもピンと来ない事には変わりない。
数字が大きい小さいって感想を抱くだけだ。
『まぁそこら辺は買い物による慣れとかかね。
金ってのは使いようによっちゃ便利だが使いようによっては身を滅ぼす。
人間でも金を使うんじゃなく金に使われて滅びる奴はよく居た。
よく考えて使うこったな。
……ま、お前はその心配はあんま無さそうだけどよ。
ただ、知識が無さすぎるのも問題だ。
騙されるからな。
特に同じ物でも違う価値観の奴が手に入れて売る場合は金額に差が出る。
だから何でその金額が付いてるのかを考えてから購入を決めるこったな。』
良く分からんけど覚えておくよ。
使ってみないと実感は沸かなそうだけどね。
『まぁ、そんなところかね。
後は使ってみるしかねぇな。
……っと話してたらさっきの受付の奴だ。
査定に来たんだろうぜ。
渡す荷物のは俺様が言う物だけにしておけよ。
食い物は極力置いておきたいからな。
高く売れるなら別だけどよ。』
あいよ。
船の甲板にさっきの受付をした獣人族が上ってくるのを見つつそう返事した。
数十分ほどで査定は終わって俺は再び港内物品変換場所でカードを渡された。
「要望通りカードに物品を売り払った分のルガロを手数料を引いて入れておいたからねー。
確認しておいてー。」
ヴァゴスに操作方法を教えられつつカードの裏側を見ると≪36000ルガロ≫と書かれていた。
相変わらずこの数値は多いのか少ないのかピンと来ない。
『一割も手数料取りやがって…。
ま、別に俺様が働いて得た金じゃねぇからどうでもいいけどよ。
カードにオドを流してみろ。』
言われた通りにオドを少し流すとルガロの表記がスッと薄くなって消えた。
消えるってこんな感じか。
成程ね。
「確認シた。」
「じゃあこれで手続きは終わりー。」
じゃあもう一回入国管理局で今度こそ入国料を支払ったら国に入れるのか。
面倒だなぁ。
外に出るとまた人間が列をなして並んでいたけど大人しくその列の最後尾に並んだ。
そのまま今回は特に会話もなく列が進んで順番が回ってくる。
入国管理局の受付はさっきの鬼人族じゃ無かった。
人間族……いや、精人族か。
耳が尖ってる。
メスだな。
『ヒュゥ。
随分と旨そうな奴だな。』
全身を見たヴァゴスが嬉しそうな声を上げる。
確かに良い匂いがするな。
雑味が無くて美味しそうだ。
でも食うなよ。
「はい、次の方。
……入国料ですね。
3000ルガロになりますよ。
カードでのお支払いでいいですか?」
「アあ。」
俺達の食欲による視線には気が付いていないのか普通の対応だ。
受付にカードを渡すと手元の魔道具の上に置いて何か操作をしてる。
暫くするとカードが返された。
オドを流して確認すると≪33000ルガロ≫になってる。
確かに3000ルガロ減ってるな。
「はい、終わりですよ。
ではファンディ魔王国にようこそ。
あちらのゲートから街の方へ出れます。
仮入国なので一か月以上の滞在の場合は不正滞在となり罰金の対象になるので注意してくださいね。
滞在期間延長の申請は役所か衛兵詰所で出来ますから。」
注意文言を言いつつ受付が指し示す方向に大きな門がある。
ゲートっつうのはあそこかね?
特に受付に用事は無かったから話が終わったのを確認してそのままゲートの方へと歩いていく。
ゲートの下にはまた列ができていた。
人間は並ぶのが好きなんだな。
『並ぶのが好きな人間はあんまいねぇと思うけどな。
単に並ばねぇと目的が達せないだけで。』
面倒くさいな。
『集団の中で生きるってのは得てしてそんなもんだ。
ま、ここが港だから出入りが集中しやすいってのはある。
街中に出たらここ迄並ぶ事は稀だろうよ。』
だといいけどね。
今までの手続きが必要な受付と違ってここはカードを見せるだけで済む様で列は案外早く進んでいく。
稀にダメな奴がいるのか通して貰えずに連れていかれる奴が発生するが。
入国料を払ってなかったりしたのかね?
そうこうしてると順番になってカードの提示を求められた。
入国料も払ったし別段疚しい事は無いのでそのまま提示すると、手元の魔道具にかざして返される。
「通ってよし。」
魔道具を確認して直ぐにカードが返却された。
うん、特に何事もなかったな。
そのままゲートを通り抜けて入国する事が出来た。
やっとかー。
ゲートを抜けた先で眼に飛び込んできたのは脇の道を歩く色んな人種だ。
パッと見ただけで違う人種がいっぱい目に飛び込んでくる。
確かにインジェノスとは全然違うな。
あそこは人間族ばっかりだったからな。
人型が多いが俺みたいに人型じゃない奴もちらほらいる。
確かにこれなら俺も目立たないか。
……まぁ身体のサイズがやや大きいからそういう意味では目立つかもだけど。
でも奇異の目では見られる事は無さそうだ。
地面は石畳で出来ており、頑丈そうな石造りの高い建物がずらっと並んでる。
石畳の広い地面には何やら魔獣が大きな馬車を引っ張って行ったり来たりしてるな。
ん、馬じゃなくて魔獣が引いてるから魔獣車か?
どっちでもいいけど。
『ありゃ石じゃねぇよ。
レンガって言うんだ。
ファンディは結構騒ぎが起きやすいからな。
木造だと直ぐに燃えたり壊れたりする。
だから基本的にみんな魔術に耐性のある耐魔レンガで家建ててんだ。』
レンガ?
良く分からんけどあの壁になってる奴か。
『ああ、まぁ頑丈なもんだと思ってりゃいい。
ファンディだと安いしな。
周囲のマナの濃度に頑丈さが左右されっから他の国じゃあんま使われてねぇけどよ。』
そういやここはマナが濃いんだっけか。
あんま実感ねぇな。
『お前は素のオドが多いからなぁ。
あんま体感だと感じねぇだろうよ。
俺様からするとかなり高いって感じるんだけどな。
ま、別にいい。
高くて困ることはねぇさ。』
成程ね。
ま、確かに高くて困る事は無いだろうよ。
さて、確か酒場に行くんだったか。
何処に行けばいい?
『あー、あんま俺様も知らねぇんだよな。
知ってる知識も数百年前のだしよ。
ま、ファンディは数百年前の店が残ってるなんざよくある事だが……。
取り敢えずここ等辺は港の倉庫街だな。
酒場のある歓楽街は中央区付近だ。
目の前の道をまっすぐ歩いていくといい。
適当に良さそうな店がありゃ声をかける。』
了解。
『あ、いや待て。
昼間だから酒場は空いてない店が多いだろうな。
この時間なら極彩色市場に寄った方がいい。
昼間はあそこが盛んだ。
適当に物を買って店主に話を聞いたら答えてくれるだろうぜ。』
歩き始めようとしたら直後に待ったがかかった。
成程ね。
ん、じゃあそっちに行こうか。
店は夜って事で。
市場も行ったことないから少し楽しみだ。
『ま、30000ルガロ程度じゃ市場にある高い物とかは買えねぇだろうけどな。』
見るだけでもいいさ。
今までゆっくり見た事なかったから。
『情報を集めるのが目的って事を忘れんなよ。』
分かってるよ。
ヴァゴスの指示通りに街並みを歩いて極彩色市場を目指すことにする。
普通に制限なく街中を歩けるってのは気分がいいもんだな。
いつもお読みいただきありがとうございます。
カードはお察しの通り電子マネー的な奴です。
ファンディ限定でしか使えませんが。




