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死した竜の物語  作者: 獅子貫 達磨
第四章 帝国を目指して
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18話 たらい回し

結論から言うならばリリルカの入国手続きもスムーズに進んだ。

まぁ、実際リリルカもやましい事は何もないんだから当然っちゃ当然だけどな。

加えて看破持ちは嘘を付かないから疑って入国手続きをする必要が無いからだろう。


そのまま要人保護って事でリリルカの事はシュバインが面倒を見てくれるらしい。

俺が城近くの役所に連れて行かなくてもいいみたいだ。

役所にはヒュマス共通語を話せる奴も居るらしいから問題は無いそうな。

俺とリリルカの入国手続きが無事に済んで、リリルカはシュバインに連れられて役所に行くみたいだな。

俺はもう着いて行かないからお別れだな。


「えーっと、その。

 危ない所を助けていただいて本当にありがとうございました。

 レリージオに立ち入った際は是非教皇庁に寄ってください。

 歓迎しますから。」


「ああ、まぁ俺は船を奪っただけで助ける意図があった訳じゃないけどな。

 もしレリージオに行く用事があれば寄らせて貰う。」


嘘じゃないぞ。

レリージオに行く用事があれば、寄る、だからな。

そもそもレリージオに行くかどうかが怪しいだけで。

看破を発動してたのかしてないのかは分からないが俺のその返事に満足したのかシュバインに連れられて見えなくなった。

見えなくなるまで振り返ってこっちに手を振ってきていたが。

何してんだ?


『人間には別れる時には手を振る風習があるのさ。

 その別れが短い期間でも永劫でもな。

 ま、短い期間の時に使う事が多いとはは思うが。』


ふーん。

変わった文化が多いな。


『さて、これであの女を無事に送り届けるミッションは終わりだ。

 このまま船に乗ってプリマイブ大陸を目指してもいいが、数少ないお前が話せて情報を集めれる場だ。

 適当に酒場にでも行って話を聞くか。

 ま、エヴァーンの件は他国にとっちゃ大ニュースって訳でもねぇしこんな短時間でここまで届いてる可能性は低いけどな。

 しかも仮に逃げてた場合はインジェノス帝国の戦力ダウンっつう帝国にとっちゃ都合の悪いニュースだ。

 極力外に広がらないように情報統制されるから尚の事ニュースとして届いてないだろうがな。』


酒場なんだな。

了解。


『普通の国なら国際狩人機構イーホか大手のクエストギルドで情報集めするのが定番なんだがな。

 この国には両方ともねぇ。

 だから情報が集まりやすいって言うと酒場くらいしかねぇのさ。

 本音を言えば情報屋にでも伝がありゃそっちに聞くんだがな。

 残念ながら俺様もお前もファンディの情報屋に知り合いはいねぇ。

 情報屋とコネクションを繋ぐには時間がかかりすぎるしな。

 酒場の噂程度で十分だ。』


分かったよ。

じゃあ取り敢えず多くて有名な酒場を探せばいいのかな。


『そうだな。

 有名な酒場自体はそこら辺のやつに聞いたら教えてくれるだろ。

 ああ、その前に入国管理局に言って入国料をきっちり払えよ。

 払わずに港から出て見つかったら罪に問われるからな。』


ああ、シュバインもそんなこと言ってたか。

分かったよ。


入国管理局が何処に有るのか分からなかったが適当に港から街に入れそうな道を探してるとその途中にでかでかと「入国管理局受付待合所」って書いてある場所があった。

そこに人が並んでるから多分あそこだろう。


『人間が列をなしてるだろ?

 あれは先に来た奴から順番に並んでんだ。

 お前も列の最後尾に行って順番を待つといい。』


列が何なのかよくわからずに眺めているとヴァゴスにそう言われた。

成程ね。そういう絡繰りか。

トカゲの格好のまま列に向かって近づいていく。

並んでる奴らに人間族ヒュマスとかが多いから十中八九ファンディに来てる商人の類だろう。

人間族ヒュマスは俺を見るとギョッとして後ずさる奴が多かった。

ただ、並んでる列から逸れて並び直しになるのも嫌らしく、警戒しつつも一定以上はその場所から離れない。

大した根性だな。

まぁ、魔人族グロリアの国って事で既に心構えもできてるんだろうけどよ。

俺をちらりとしか見ない奴はこの国に何度か来て慣れてる手合いだろうな。

そのまま俺も列の後ろに回った。

列の最後尾にきっちり並んでそこから動かないことから少なくとも野生の魔獣が放し飼いになってる訳じゃないと分かったらしくなんとなく弛緩した空気が流れた。

中にはまだチラチラと俺を見る奴もいたけどな。


さて、順番になるまで暇だな。


『ま、仕方ねぇだろ。

 ……ここにいる前の奴ら食っていいって言うなら直ぐに順番になると思うが?』


んな事したら俺が捕まるだろうが。

前に先に手を出した方が悪いって話じゃ無かったか?

それは別に魔人族グロリア優遇って訳じゃ無くて種族関係なくだろ?

俺は嫌だね。


『ああ、種族関係なく先に手を出した奴が悪い。

 もっとも幾つか例外はあるけどな。

 なんにせよ冗談だ。

 俺様だってこんなところで捕まりたくはないね。』


んじゃ大人しくしてないとな。

ただでさえさっきから人間がチラチラとこっちを警戒して見てる訳だから。


ああ、そう言えば一個話題があったな。


『なんだ?』


さっき入国手続きの時に鑑定でお前の能力が見られてるって言ってただろ?


『ああ。』


俺はまだお前自身を鑑定してないからお前の能力を見た事が無いんだよ。

見てもいいか?


『あー、そうだったか?

 てっきりもう見せたもんだと思ってたぜ。

 別に許可を取らなくてもいいんだぜ?

 相棒・・。』


まぁ、他の奴らには鑑定使ってもばれないけどさ。

元はお前の能力なんだからお前にはばれるだろ。

こっそり使いたくなかったんだよ。

それに相棒って…。

急にそんな呼び方されると何か薄ら寒いぞ。


『ケッ、冷たい事を言うね。

 俺様とお前は運命共同体なんだから相棒だろうが。

 ……ま、冗談はさておき俺様の能力だな。

 適当に自分の手でも鑑定すりゃ見れるだろ。

 今は俺様の外骨格が全身を覆ってるんだからな。』


まぁそれは分かるけどさ。

方法が分からないんじゃなくて単純に抜けてただけだ。

さて、じゃあヴァゴスの能力を見せてもらうか。


▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

名前:ヴァゴス

種族:グロリア・アローサルオリジン

能力:

『蝕む細胞』

『万能細胞』

『再現構築』

『硬質血液』

『鑑定』

『液体操作』

加護:

『血なるレフソ=ウェルの硬加護』

『眼識なるトープルの鑑加護』

『流体なるカンヨウの操加護』

『知識なるギリアの憶加護』

▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲


……ヴァゴスもアローサルオリジンなのか。


『ああ、器になった身体は経緯上俺様しか存在しないから妥当じゃねぇのか?

 昔の妖魔だった頃とは表記も能力も変わっちまったからな。』


それに普通は二個くらいだー、とかさっき言ってたのにヴァゴスもいっぱい能力あるじゃないか。


『普通は二個くらいって言っただけで俺様は二個とは言って無いだろう?

 それに俺様はどう考えても普通じゃないだろうが。

 いや、自分で言うのもどうかと思うがな。

 でも普通か普通じゃないかって言われたら普通じゃねぇだろ?』


まぁ、確かにそうだけどさ。

因みにそれぞれの能力ってどんな力なの?


『あー自分でも曖昧だがな。

 まず『蝕む細胞』は生物の身体からエネルギーを吸って完全に分解する力だな。

 俺様がよくお前から肉を貰ってエネルギーに変えてるのはこの力だと思うぜ。

 次に『万能細胞』だな。

 これは多分お前も体験してるだろうが手に入れた細胞の情報を元に色んな器官を作り出す能力だと思ってるぜ。

 要は蝕む細胞で取り込んで万能細胞で再現って事だな。

 『再現構築』…こいつは俺様も良く分からねぇ。

 万能細胞の力の手助けでもしてるのかね。

 持っちゃいるが何に使うのかいまいちわからない能力だ。

 次に『硬質血液』だ。

 これは血液を普通より早く乾燥させてかつ硬くする事ができるって能力だ。

 あんま使う機会が無いから忘れてたぜ。

 『血なるレフソ=ウェルの硬加護』から手に入れた能力だろうよ。

 次の『鑑定』は…まぁもう説明するまでもないだろう。

 最後の『液体操作』はそのままだ。

 液体をある程度意のままに操れる。

 吸血種ヴァンパイアの操血術と似た感じだな。

 あれより広義の意味合いで液体を操れるが操血術よりも精度や範囲で劣る。

 ま、でも十分使えると便利な力だがな。

 俺様はもっぱらこの能力でお前の身体のあちこちから出現可能なのさ。

 自分の身体を液体にしてそれを操作できるからな。

 ある意味一番日常的に使ってる能力って言って良いだろうさ。

 ……ま、ざっとこんなもんだ。

 流して説明したが大丈夫か?

 大丈夫じゃなくても二回目は言わねぇけどな。』


情報が多くて全部は把握できなかった。

けどまぁおおよそ分かったぞ。

……因みに加護は元から持ってたものなのか?

それともその器に入った時に手に入れたのか?


『トープルとギリアの加護は妖魔だった頃から持ってた。

 それ以外は器に入ってからだな。

 妖魔で加護持ちって珍しいんだぜ?』


やっぱり身体の変化とかに通じて加護って渡されるのか。

神は常時見てるって事かな?


『かもな。

 だとしたらご苦労なこった。

 大量にいる奴ら一人一人の変化に気が付かないといけねぇんだからよ。

 俺様だったら絶対やりたくないね。』


まぁ、神様だからそこ等辺はパパっとできるのかもね。


「次の方ー。」


ヴァゴスとそんな話をしてたら、気が付くと受付の番が回ってきた。

やっぱり二人で話しながらだと案外早いな。

こういう時はいてもらって助かるって思うぜ。

いや、普段から助かってるけどさ。

受付の所に居たのは額から角を生やした赤っぽい肌の人型の奴だ。

確か鬼人族デモニックだったか?


「あー、衛兵の人にここで入国税を払えって言われたんだが…。」


「ああ、3000ルガロになるな。

 現金か?それともカードでの支払いか?」


現金?カード?

なんのこっちゃ?


「えーっと、この国に来たばかりで金が無いから船に積んであるものを現物で払いたいんだが…。」


「ああ、成程な。

 どの船だ?」


どの船?

えーっと、あっちの船だけど。


『七番桟橋だ。』


ああ、ありがとう。

どう答えようか迷ってるとヴァゴスが助け舟を出してくれた。


「七番桟橋の船だ。」


そう返すと鬼人族デモニックは手元の紙に何かを書いている。

直ぐに書き終わるとその紙をこっちに差し出してきた。


「隣の建物にある港内物品変換場所に行ってこの紙を見せろ。

 そこで先に品物を金に換えてからまた来い。」


えー、折角並んで待ったのに。

シュバインの奴もそう言う事は先に教えろよ。

まぁ文句言っても仕方ねぇか。


紙を受け取って言われた場所へと向かう。

手続きが多くて面倒だな。

なんか思ってた感じと違うぜ。


『ま、結構寛容な国って言ってもこんなもんだ。

 変な奴が国に入らないように対応するのも国の仕事だからな。』


俺は別に変な奴じゃねぇよ。

少なくとも国と問題を起こすつもりはないんだけど。

……いやインジェノスでは起こす気満々だけどさ。

この国では起こす気はないよ。


『それはお前は分かってても国の管理局からすりゃ分らんからな。

 看破持ちを連れて一人一人尋ねて歩く訳にもいかねぇだろ。』


そりゃそうだけどさー。


言われた隣の建物はガランとしてた。

同じ様に受付で暇そうにしてる奴がいる。

そいつに近づいて紙を渡す。

今度は兎の顔をして眼鏡をかけた獣人族ベスティアだ。


「あー、はいはい。

 ルガロの交換ねー。

 因みに他国の金って持ってるー?

 持ってたらそれとも交換できるけど。」


「いや、持ってない。」


「あー、持ってないかー。

 金なら表と見比べるだけでいいから楽なんだけどなー。

 品物って品質見て行かないと駄目だから面倒なんだよねー。

 ま、お仕事だししゃーないけどさ。

 じゃあ、船に人員送るね。

 その人員にどの品を売るか教えてー。

 売った品代金を渡すのは現金とカードどっちがいい?」


現金は分かるけどカードってなんだ?


『あとで教えてやる。

 カードって言っておけ。』


「カードで。」


「はーい。

 じゃあカードも一旦貸してー。」


カード?


『仮入国証の事だ。』


ああ、はいはい。

これね。

仮入国証、もといカードを受付の獣人族ベスティアに手渡すと手元の魔道具で何やら操作をしてる。


「んじゃ、このまま船に戻って待っててー。

 すぐに人員を送るからねー。

 あ、カードは品物受け取って査定が終わったら返すからー。」


今度は船に戻れってか。

なんか外に出る予定がどんどん逆行してないか?


『ま、手続きなんてそんなもんだ。

 金がありゃ楽だったんだろうがな。

 仕方ねぇよ。

 戻って待ってようぜ。』


あーだりぃ……。

仕方なく元来た道を辿って船の甲板まで戻った。

振出しに戻った気分だな。


いつも読んでいただきありがとうございます。


ちょっと仕事の都合で明日の投稿は厳しいと思われます。

今週は三話しか投稿できずに申し訳ない。

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