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死した竜の物語  作者: 獅子貫 達磨
第四章 帝国を目指して
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10話 密航者

気が付いたら10000PV超えてました!

ヴァゴスに魔術の基礎理論を教わってから俺はある程度魔術の練習を続けてる。

かれこれ数時間位かな。

そのまま眼と喉の練習をするのかと思ってたけどヴァゴスが刻印発動の陣について少し解析したいんだそうな。

因みに男の身体には『爆球』と『反復』って術式が刻まれてたらしい。

ヴァゴスがそれを知ったのは男の脳を食ってから。


つまり、食うまでは体にそんな情報があるって知らなかったみたいで雑に食って一部の情報が欠けてしまったらしい。

『爆球』の方は腕に刻まれてたみたいで完全に食えたらしいんだが、背中に刻まれてた『反復』の方は食う過程でバラけてしまったみたいで、ヴァゴスがその陣の復元をするまで待機時間が出来たって訳だ。


なので俺もその間にヴァゴスに教わった基礎理論を頭に置いて魔術の行使を練習する事にした。

ヴァゴスの言っていた通り水球の創造魔術は成功したものの他の術式は難しかった。

特に理魔術で何かの形を整える過程が難しい。

魔領法で変形とかを込みで同じような事をしてるから楽かなと思ってたけど、魔領法と違って作業が細かすぎるのだ。

水球はポンと小さい雫を球状にまとめるだけだったから簡単だったけど。


取り敢えず一番簡単らしい理魔術の基礎で憎き相手である耐魔結界を出そうと何とか四苦八苦してる。

耐魔結界の術式は出したい結界の形にオドを練って結界の層の形状を決定したら術式は完了なだけのシンプルなものなんだけど……。

出したい形に少量のオドをまとめるのが難しい。

ごく少量の切り分けた術式用のオドを上手く結界の形に出来ない。

取り敢えず一番簡単なのは半球状らしいからそれで何とかしようとしてるんだけど。

因みに結界の層の形状は耐魔結界の結界層の断面の形状の事だ。

可能であれば四角や六角形にすると物理耐性も上昇するらしい。

まぁ、可能なら追加でって感じだから今は取り敢えず層の中を全部埋めた形状にするつもりだけど。

と言うか半球自体もうまく作れないのにその層の形まで細かく制御するなんて夢のまた夢だよ。


あんまり形状を練るのに集中しすぎると切り分ける前のオドをせき止めきれずにゴチャッと混ざってしまう。

まぁ、ヴァゴスの言うオドが多すぎる事による弊害は実感できる。

今改めて思うと魔領法を使えるようになる以前はそもそも膨大過ぎるオドを制御出来てなかったんだな。

制御だけでもある程度できるようになったと喜ぶべきかな。


竜天獄に居たころに最低限の魔術を教わってはいたけど、使えなかったから殆ど抜け落ちてるんだよね。

使えない技術ほど忘れ易い物はないよ。

まだ最低限の術でも使えたら偶に練習したりしたんだろうけど当時は水球の術式さえできなかったからなぁ。


ただ、俺としては感覚的に教わってた竜天獄の親の教えよりかはヴァゴスの論理建てた説明の方が分かりやすいからそれは救いかな。


ぐっ。

また崩れた。

うーん上手くいかないなぁ。


一応、創造魔術の方は水球に続いて火球と氷球は出現させることに成功した。

出現させれたってだけで飛んでいく訳でも無かったら爆発する訳でもないけど。

因みに雷球と風球は出現させられなかった。

多分あんまりイメージが無いのが原因なんだろうな。

雷は遠目でしか見た事ないし風は普段目に見えないし。


まぁ、何にせよ出現だけさせれても意味ないんだよなぁ。

せめて敵に飛ばせないと。


その為の理魔術の練習な訳だがそれが上手くいかない。

ぬーん。


『よし、復元完了したぞ!』


そうやって悩んでるとずっと無言だったヴァゴスがいきなり声を上げた。

声って言っても頭の中でだけどさ。

びっくりするなぁ、もう。


『悪いな。

 複雑なパズルを解いてる気分だったから苛々してたんだよ。

 やっと解放されるのかと思うと嬉しくなってな。』


術式の理論がそこまで分かってない俺からすれば全然分からん作業だよ。


『バラバラになったのが爆球の術式ならまだ楽だったんだけどな。

 反復の術式は一部に干渉魔術が使われててややこしかった。

 ま、なんとか陣の形に戻す事が出来たぜ。』


そりゃ良かったな。

因みにその二つの陣を元に他の術式を陣にする事って出来ないのか?


『元から俺様は陣に対しても理解があるから術式を陣に落とし込むなんざ簡単にできるぞ。

 いや、簡単は言いすぎだがな。

 まぁ、ある程度の時間があれば可能だ。

 今回、態々解析したのは陣発動と刻印発動で魔術陣自体にどんな差があるのかを見たかったからだぜ?

 人体保護の術式がよく分からなかったからだ。

 なんせ刻印発動専用の保護術式みたいだからな。』


ああ、そういう事だったのか。

んじゃ改めてそっちの差異とやらは分かったのか?


『ああ、なんとかな。

 結論から言うならおおよそ分かったぞ。

 まず、皮膚に刻まれた特殊な染料にオドが流れ込んだ際に負荷がかかる。

 負荷がかかった場合には魔力が周囲の細胞を破壊する事態になって、結果的に術式を行使する度に皮膚に火傷を負うような自体になっちまう。

 そうならない為に過剰な負荷となったエネルギーを空気中に霧散させる為の術式が人体保護だ。

 それが組み込まれていた。

 因みにその霧散させる術式も全てを霧散させる訳じゃないみてぇだな。

 大体九割近くは霧散させられるが一部負荷は残る。

 ただ、その残った負荷は最初に言った特殊な染料が体内全体に負荷を分散する仕組みになってるみたいだ。

 恐らく刻印発動の考え方自体は前からあったんだろうが、今までは霧散させきれずに残った負荷をどうにかする方法が無くて保留されてたんだろう。

 負荷が一割とは言え残ってしまう以上は一回使えば次の使用までクールダウンが必要になるからな。

 それなら詠唱発動の方がまだ連続して使えるって事だろうよ。

 ま、それに負荷として残留する魔力は術式で変異してる以上は明確に持ち主のオドとは言えなくなってる。

 自分のオドでもなくマナでもない別の魔力が体内にあるっていうのはある意味毒だから溜め込みすぎるのは良くないしな。』


うーん、一気に言われても理解が追い付かないぞ。


『ん?ああ、別に説明する気はあんまりないから気にするな。

 自分の思考をまとめるために文章にした方が楽なだけだ。

 結論から言うと刻印発動の仕組みは大体理解できたぞ。

 ……この器は食えば細胞の一遍も残さずに咀嚼して情報に落とし込む事が出来る。

 こう言うところは本当に便利だな。』


まぁ、理解できたなら良かった。


『ああ。

 お、そうだ一個試したい事があってな。

 こればっかりはお前からオドの供給が必要になる。

 だからちょっとばかり協力してくれよ。』


ん?オドを渡すだけでいいなら別にいいけど。

何やればいいんだ?


『ちょっと待ってろよ。』


ヴァゴスがそう言うと同時に俺の右前足を覆う外細胞が変化する。

棒が飛び出したかと思えば、その棒がスッと細くなって線上になる。

線がクネクネ曲がって円状になって複雑な模様を描いていく。

暫くすると前足から飛び出した棒の先に魔術陣が完成した。


『よし、この棒にオドを流し込んでみろ。

 止めろって言ったら止めろよ。』


何と無くどうなるのか予測がついたが言われたまま前足の外細胞部部に向かってオドを流し込む。

念の為に少しずつね。

ただ、ちょっとしか流してないのに数秒ほどでヴァゴスからは止めろ!と言われた。

その言葉に流し込むのを止めると同時に陣がうっすらと光を帯び始めた。


そして徐々に光が強くなったかと思ったら数瞬後に、ジュッと言って陣の一部が焼き切れた。

そして急速に陣全体から光が抜けていく。

ありゃ。


『失敗したか。

 行けると思ったんだがな。

 陣の線の太さの統一性が足りなかったか?

 もしくは別の要素か……。』


ヴァゴスはヴァゴスで失敗する事もあるんだな。

なんか大体のことを当たり前のようにやるから何でもできるイメージだったけど。

まぁ、始めて見るものって言ってたし食った相手も刻印発動の専門家って訳じゃないんだ。

仕方ないだろ。


『ま、また練習すりゃいいか。

 理論上は俺の細胞で陣を描いてそこにお前がオドを流し込めば発動する物は作れそうなんだがな。

 陣を描くのに書かれている塗料が刻印発動に必須なら、細胞変異での再現は厳しかったが調べた感じはあの塗料はあくまで制御の補助に過ぎないなら別に無くてもいい筈だ。

 今度時間がある時にでも付き合ってくれ。』


練習するこ内容がどんどん増えていってないか?

楽しいから別にいいけどさ。

んじゃ、そっちの用事が終わったなら今度は眼と喉の練習か?


『ああ、そうだな。

 って言いたいが先に一個用事を片付けようか。

 この船の荷物を確認しようぜ。

 生物なまものもあるだろうから腐る前に食っちまいてぇ。

 生の果物や木の実とかなら今の段階で食えば再現出来るだろうしな。

 武器にはならないだろうが再現可能な物を増やしておくのは悪い事じゃねぇ。』


あいよ。

じゃあ甲板から船内に下りればいいんだな?


『ああ、それでいい。』


ふと空を見上げると夜が明けて完全に太陽が昇ってきた。

俺はヴァゴスに表面を覆って貰ってるから全く何ともない。

昼間はずっとヴァゴスの細胞から出る事が無いから本当に自分が日光に対して弱いのか疑問に思えてくるな。


なぁ、ちょっと指先でいいから外に出してくれないか?


『あん?

 あー、まぁいいが気をつけろよ。

 本当に指先だけだぞ。』


そう言って前足の指先の極一部だけを露出させてくれた。

次の瞬間音もなく指先が燃え上がり、鈍痛が指を襲う。

まぁまぁ痛いな。

燃えてるんだから当たり前か。


『もう戻すぞ。』


本当に燃えるんだな。

実際に燃え上がるのを目の当たりにすると存外思ってるよりも怖いもんだ。

今回は試しに前足で実験だったから良かったけど、昨日の夜に男と戦ったタイミングが昼間だったと思うとゾッとするね。

男の爆球で表面のヴァゴスの細胞が剥がれて顔付近と前足が露出した訳だし。

昼間の戦闘は今後注意しよう。


しかもなんか普通に傷を負った時と比べて再生が微妙に遅い気がする。


『まぁ、普通は切断面とか崩れた細胞を戻してくっつけるだけでいいが、燃やされた場合は細胞自体を再現しないといけないからな。

 俺様がお前の細胞を渡してやると直ぐに治るぞ。』


そうヴァゴスが言った後に指先の痛みが引いた。

成程ね。

覚えておこう。

炎上ダメージは気を付けようって事だな。


『ま、アンデット全体が炎は苦手だな。

 一番苦手なのは光だが。

 なかでもスケルトンは炎程の高温だと骨がかなり脆くなる。

 炎上自体のダメージは無くとも突けば崩れるレベルにな。

 なんにせよどんな攻撃でも食わらないに越した事は無い。

 俺様の器も細胞である以上は炎と雷に弱いからな。

 戦闘中は身体の周囲を常に魔領法で覆う位の警戒がいいだろう。』


分かったよ。


そう言えば今の炎上を見て一つ疑問が出て来た。

ヴァゴスって身体の器の触媒に吸血鬼ヴァンパイアの血液を使ったから外で自由に活動できなくなったんだよね?

血液が乾燥して凝固してしまうからって。


『ん?

 そうだが、それがどうしたってんだ?』


つまり、ある程度触媒となってる血の特性も引き継いでるって事だと思うけど、乾燥は駄目なのに何で日光は大丈夫なの?

吸血鬼の血液が混じってるならヴァゴスも日光が苦手だと思うんだけどな。


『ああ、それは簡単だ。

 俺様の器の触媒は神祖吸血鬼ディミティ・ヴァンパイアの血液だからだ。

 神祖ディミティは吸血種の中で唯一日光に完全耐性がある。

 だからその特性を持ってる俺様も平気なのさ。

 お前も神祖吸血鬼ディミティ・ヴァンパイアとまでは言わないが真祖吸血鬼トゥルー・ヴァンパイアにでも成れば外で活動できるようになるぜ。

 もっとも神祖ディミティじゃない限りは太陽下では弱体化するけどな。』


成程ね。

神祖吸血鬼ディミティ・ヴァンパイアは日光に完全耐性があると。

覚えておこう。

俺もいずれ成れたらいいな。

少なくとも当分は先だろうけどさ。


『気になったのはそれだけか?

 じゃあ船内の荷物を調べるぞ。』


ああ、分かったよ。

甲板の階段には身体が通りそうになかったから荷下ろし用の中央の穴から船内へと侵入することにした。

光が遮られてて地味に暗いな。

まぁ、隙間から光が零れてるから暗視使うほどでもないけど。


『取り敢えず荷物は……あそこに固まって置いてある物位か。

 荷下ろしして、荷を積む前に襲ったから仕方ねぇか。

 ま、お前も俺も食い物は必要ないからいいけどよ。

 もし何か食いたくなれば海の中の生物を適当に魔領法で掬って食えばいいしな。』


ま、そうだな。


『んじゃ一応開けていくか。』


あいよ。

さてさて、魔領法で手軽く開けていくか。

まずは……早速木の実だ。

赤くて人間の握りこぶし位の大きさだな。

薄っすらと毛が生えてる。

えーっと見た事があるぞ。

結構前に親父が土産でくれたな。


『フラグムか。

 珍しいな。

 プリマイブ大陸の北方で名産の果物だ。

 酒にするとうまいらしいぞ。』


ああ、フラグムだ。

そんな名前だったな。


『よし、じゃあ一個食っておくか。』


そう言うので、外細胞の口にヒョイッと魔領法の腕で放り込む。

別に味を食いたいと言うよりは解析用だから一個食えばいいんだろうな。

余った分は俺が適当に夜だべよう。


さて、じゃあ次は……。

ん?布だな。

人間の服か。

派手な色が多い。


『どこぞの貴族が仕立てたパーティードレスじゃねぇか?

 なんにせよ食えねぇから捨ておけ。』


服は食えないわな。


『服は服でも狩人が防御用に着るような蜘蛛の魔獣の糸を編んだ奴とかなら食えるんだがな。

 それは完全に絹で作られて加工されてる。

 それでも食えない訳じゃないが、あんまり食いたいとは思えねぇんだよな。』


色々あるんだな。

俺はそもそも服を食いたいとは思えないけど。

まぁいいや、さて次と思って隣の樽を開けようとした時。


ガタン、と一番端にあった樽が揺れた。


『お、なんだ?

 動物はもう一階層下に仕舞われてた筈だけどな。』


動物もいるのか。

何かしらの小型の生物でも閉じ込めてるんじゃないのか?


そう思って先にその樽の蓋を開けてひっくり返す。


「ん?んんん……。

 っ!?

 んんんんーーーーーーーーー!!!!!!」


樽からゴロンと人間が転がり出てきた。

転がって最初は目が回ったみたいだが、俺を見ると慌てて逃げようとしてる。

ただ、手足も口も縛られてる見たいでその場でもぞもぞする事しか出来てない。

人間……ヒュマスか?

ヒュマスのメスっぽいな。


さて、全員船から追い出したと思ってたけどこんな所にも紛れてたのか。


いつもお読みいただき有難うございます。


因みにフラグムは林檎サイズの苺です。

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