9話 魔術の種類と発動方法
今回は最初っから最後まで説明回です。
魔術の主な仕組みや発動方法について書いてあります。
説明が苦手な方用に後書きにまとめて箇条書きにしておきます。
『さて、無事に練習用の術式が発動したな。
じゃあ次はざっくりとした魔術の分類について教えてやろう。』
魔術が使えた喜びをかみしめた所でヴァゴスが声をかけてきた。
おう、待っててくれたみたいだな。
それじゃ引き続きって事で。
『まず大体の魔術と術式は四種類に大別される。
理魔術、創造魔術、変化魔術、干渉魔術だ。
まぁ、それ以外の特殊魔術を加えたら五種類だな。
ここまではいいか?』
えーっと、理魔術、創造魔術、変化魔術、干渉魔術に特殊魔術ね。
うん、問題ないかな。
理魔術に関してはエヴァーンと模擬戦をした時に俺に対してエヴァーンが使った術式が理魔術だったっけ?
えーっと確か……。
『耐魔結界、だろ?
理魔術の基礎術式だな。
魔術に対する防御結界を展開する術式だ。
魔術に対しては有効な術式だが物理的に酷く脆いという欠点もある。
まぁ、その分簡単だから理魔術の初心者用に使われることが多いけどな。』
そうだった。
エヴァーンもそんな事言ってたな。
一番簡単な術式だって言ってたのにあっさりと魔領法を分断されて悲しかったのを覚えてる。
『ま、魔領法はオドをそのまま外部に出力した未加工の魔力だからな。
製鉄された金属の武器と未加工の鉱石を打ち合わせるようなもんだ。
どうしてもちゃんと術式を使われたら脆い魔領法が押し負ける。
ただ、物量で押せるという面では魔領法が優る。
さっきお前が破壊魔術を撃たれた時に魔領法で打ち消しただろ?
あれを魔術で同じことしようと思えば撃たれる度に耐魔結界を張り直す必要があるが、魔領法であれば破壊された箇所を補うだけだ。
あくまで耐魔結界で魔領法を消失させれるのは点ではなく面として術式を用いてお前とお前の魔領法との繋がりを切ったからだな。』
まぁ、確かに魔術に対する対抗手段としては優れてるよな。
俺もさっきの戦いで実感したよ。
無意識で魔領法を使って魔術を防いでたがあれで正解だったんだな。
『まぁ、破壊された箇所を即時に修復できるというメリットの代わりに、破壊されて消失したオドの量が耐魔結界を丸々張り直すのに必要なオドより多いってデメリットはあるけどな。
それでも速度が物を言う戦いの中では十分なメリットだ。
ましてやお前は莫大なオド量がある。
ま、状況に応じて魔術と使い分けられたら最高だな。』
成程ね。
もし耐魔結界が使える様になっても一概にどっちがいいとは言えない訳か。
それで言うなら魔領法みたいに自動修復機能を持った結界とか無いのか?
『あるぞ。
もっと高位な理魔術になるがな。
正確には耐魔結界に追加の術式を与えるって感じだな。
耐魔結界を張る術式に破壊をトリガーに追加で発動する動作を組み込む。
その発動する動作の内容を張り直しにすれば破壊される度に自動で耐魔結界が貼られる。
ま、オドの続く限りって制限はつくし、あんまり連続して破壊されると一瞬ですっからかんだ。
それに破壊されてから張り直すまで一瞬だが時間が出来るから連続攻撃に弱い。
この点はお前が魔領法で連続攻撃を受けたのと同じだな。』
ああ、あるのか。
さっき俺が初めて成功した水球と違ってどう組み立てるのか想像もつかないな。
そこら辺はきっと勉強しないと出来ないんだろうけどな。
『話が段々ズレてるから元に戻すぞ。
まずはさっきから話題になってる理魔術についてだ。
理魔術は魔力の形を整えるのが主目的な術式が多く、変質を行わない。
つまり属性を持たないものが殆どだ。』
変質が確か魔力を元に別の物に変えるって内容だったもんね。
それが無いって事か。
『ああ、基本的には結界の類が多い。
変質を伴わない分、術式がシンプルになって、条件付きの術式を組みやすいのがメリットだな。
ある意味他の術式で使うことが多い基礎が詰め込まれてるから魔術師は最初に理魔術を学ぶことが多い。』
条件付きって言うとさっき言ってた破壊された時に追加で発動する術式って事か。
『正確には【何か】が起こった時に【何か】を発動させる術式の事だ。
さっきの例は破壊と言ったが破壊魔法を受けて破壊されなかった時に術式を跳ね返すとかも可能だな。』
ふむ。
一つ疑問なんだが一つの結界に付けれる条件って一つなのか?
『いや、そんな事は無いぞ。
理論上はいくらでもつけれる。』
それなら一つの結界に沢山の条件を付けたらあらゆる状況に対処できる結界が作れるんじゃないのか?
『まぁ、理論上可能だ。理論上はな。
まず条件を一つ付けるだけで術式がそこそこ複雑になる。
二つ付けたらかなり複雑だ。
陣発動はともかくまず詠唱発動じゃ動かせないだろう。
それに必要な魔力もバカほど高くなるし、無駄が多い。
条件に該当しない時にも条件が起こった時に対して備えのオドは消費し続けるからな。
以上の点から多量の条件を付与するのはいい案とは言えない。』
……成程。
出来ないのには理由があるんだな。
『ああ、発動方法については後で説明してやる。
理魔術はこんなところでいいか?』
うん。今のところは。
『じゃあ次に創造魔術だ。
これはシンプルで魔術を用いて何かを顕現させる術式を指す。
お前がさっき練習で使用した水球を出現させる術式。
あれも創造魔術の最もシンプルな術式だろう。』
つまり何かしらの物質とか現象を作り出す魔術って事か。
『ああ、一般的に使用頻度の高い術式がこれだろう。
理魔術とは逆に変質の性質に最も重きを置いた魔術だ。』
火とか雷とか水とかを出す奴だな。
一番魔術っぽいと思う。
破壊魔術とかもこの創造魔術を使って行われてるのか?
『ああ、厳密には理魔術と創造魔術を組み合わせて破壊魔術は形になる事が多い。
例の方が分かりやすいだろうからさっきの男が使ってた術式で話してやろう。
お前は火球って言ってたが正式には爆球って術式らしいな。
ま、術式の名前なんぞ開発したやつが趣味でつけるもんだから何でもいいが。
あの爆球の場合に込められていた術式はまず創造魔術から球状の火。
それに理魔術で物理接触時に爆発を発動させるという条件。
そして更に理魔術で指定方向へ球状の火を射出。
以上の三つをまとめた術式だ。』
なんか単純そうな魔術かと思ったけど結構組み合わせがされてるんだな。
『ま、魔術ってのはそんなもんだ。
実戦で使うのにはどうしても必要最低限ってものがある。
大体の破壊魔術は理魔術の射出が付いてるぞ。
敵に飛ばさないと意味が無いからな。
戦闘で使用する創造魔術で射出しない場合は武器に一時術式付与する事が多いな。
これは自分の武器に一時的に属性を付与する。
火を纏わせたり、雷で痺れさせたりな。』
ふむふむ。
ちょっと話がずれるけどさっき武器に対しては永続術式付与って言ってたけど何が違うの?
『ああ、術式付与の形態の違いか。
雑に言うなら武器に術式付与が付いてるか自分で付けるかの差だ。
永続術式付与はどっちかと言えば錬金術の分野で、武器を作る時にその武器に術式を定着させて誰でも半永久的に使える様にした物を指す。
一時術式付与は術者が直接武器に魔術を使って一時的に効果を付与するもので、効果時間が切れたらただの剣に戻る。
大体こんな違いだな。』
成程ね。
永続術式付与は魔剣だけど一時術式付与は一時的に剣に魔術を纏わせただけで魔剣って訳じゃないからただの剣って事か。
『その理解でも間違ってないな。
因みに既に永続術式付与が付いてる魔剣に下手に一時術式付与をすると相殺される事がある。
ま、お前は武器はあんまり使わないだろうけどな。』
まぁ、確かに。
魔領法の腕で剣を振り回すのは結構楽しかったけど。
『さて、じゃあ変化魔術についてだ。
これは既にある物質を別の物質に変化させる術式だな。
例えば水を氷に変えたり、空気中にある水分から水を作り出したりする。
他にも鉱石から特定の金属の成分だけを抽出したりな。』
なんかあんまり便利そうな術式じゃないな。
金属はともかく水を出すのとかは創造魔術でいいんじゃないの?
『いや、変化魔術にはメリットもある。
創造魔術は魔力を無理矢理物質に変換してる都合上不安定なんだよ。
要は一定時間経つと創造魔術で作った物質は魔力に戻っちまう。
つまり一時的に影響を及ぼす破壊魔術とかではいいが飲み水とかには使えない。
その反面、変化魔術は既にある物の形を変える魔術だから結果は変わらない。
変化魔術で空気中や土中から抽出した水はいつまでたっても水のままだ。
まぁ、性質的に破壊魔術には向いてないな。
一般的には鍛冶や錬金などの工業用に使われることが多い。』
ふーん。
じゃあ俺とはあんまり縁が無さそうだな。
『まぁ、確かにな。
ただ以前にお前がエヴァーンと話していた万化術式。
あれは自分の身体を変化させる変化魔術の一種だぞ。
変化が出来るようになりたいなら覚えておくにこした事は無い。
俺様がお前の身体の周囲を覆って他の生物に偽装することは可能だが、お前の今の体のサイズより小さくする事は出来ないからな。
今より小さい何かに偽装したいなら覚えておいた方が良い。』
ああ、万化術式って変化魔術の一種だったのか。
言われてみればそうか。
何かを変化させる魔術だもんな。
『さて次に干渉魔術。
これは自分や自然に対して働く直接的な力に対して干渉する術式だ。
変化魔術に近いが変化魔術と違って目に見えないものに対して使うことが多い。
例えば自分や他の生物の精神や重量、他にも目に見えないエネルギー系とかな。
お前に言って通じるのかわからねぇが磁力や重力とかに干渉する。
飛行術式はこの干渉魔術を使って動かしている。
空を飛びたいなら必須だな。』
何と無くニュアンスは分かったが目に見えないエネルギーってのはピンとこないな。
目に見えないからピンと来なくて当然なのかもしれないけど。
『ま、難しい内容だからこれの習得は後々でいい。
急いで学ぶことでも無い。
さて、最後の特殊魔術だが……。
まぁ、文字通り特殊な魔術で今まで言った四種類の魔術に該当しない特殊な奴だ。
俺様も分類があるというだけで詳しい事は知らん。
特定の種族しか使えなかったり特殊な条件下でしか発動しないモノが主らしい。
…これで魔術の種類の説明は終わりだ。
理解できたか?』
量が多かったから何とも。
まぁ、練習しながらぼちぼち覚えるよ。
『ま、使うのにしっかりとこれの術式は何々魔術って考える必要はねぇ。
大体の仕組みを理解してりゃ動くからな。
さて、じゃあ魔術の発動方法についてだ。』
ええ、まだあるの?
『あー、一旦これで終わりだ。
これは直ぐに終わる。
さっきからお前がちょいちょい疑問に思ってた発動方法についてだよ。
主だったものだけの説明だから聞け。
主なのは二つしかない。
詠唱発動と陣発動だ。
詠唱発動はさっきお前がやった自分で自己完結して魔術を発動させる方法。
人間が使う時に口に出して発動することが多いから詠唱発動って言われちゃいるが、別に必ず口に出す訳じゃない。
あくまで自分の身体だけを使って発動させる自己完結型の発動方法だ。
メリットは何より手軽な事だな。
自分の身体とオドさえあれば使える。
デメリットは全ての魔術の処理を自分の中で完結させるから複雑な術式は発動に時間がかかる。
それに集中力を切らすとそもそも発動しなかったりな。
集中力と処理の補完の為に人間は口に出して詠唱する事が多い。
オーケー?』
自分の身体だけで発動させる方法ね。
竜だった頃はこれしか教わらなかったな。
うん、問題ない。
『それじゃ、次に陣発動。
これは発動させたい魔術を魔術陣にしてオドを流し込めば発動するようにしたものだ。
メリットは魔力を流すだけで発動する手軽さだ。
発動に時間がかからない上に誰でも使える。
デメリットはまず一つに応用が利かない点。
魔術陣に描いた術式しか発動しないからちょっと変更を加えるのも大変だ。
加えて複雑な術式になればなる程陣の大きさがでかくなる。
二つ目は適当な物に陣を書くと負荷で焼き切れて一回しか使えない点。
紙とかに陣を書くと一回の発動で魔力負荷で紙がグズグズになる。
だから大体魔術陣を書くのは魔導金属の上が多い。
せめて石とか物理的に頑丈な物の上だな。
まぁ、石とかでも数十回使ったら崩れちまうから推奨されてないが。』
成程ね。
複雑な術式をすぐ使えるけど持ち運びに難があって特定の場所でしか使えないって事か。
特徴的に守りに向いてそうだよね。
『良い着眼点だ。
城とかには攻め込まれた時の対策として城壁に陣が描かれてる事が多い。
ついでにもう一つデメリットを言うなら知識のある奴が陣を見れば何の術式か読み解くことが出来る点だな。
ま、こればっかりは仕方ない。』
ふむふむ。
因みにふと思い出したんだけどさっきの男は爆球をポンポン使ってたよね?
あれって単純に詠唱発動が手馴れてて早かったってだけ?
結構短いスパンで撃って来たけど。
『あー、その話か。
本当は更に刻印発動ってのがあってな。
どうやら最近の技術らしく俺様も男を食うまで知らなかった。
あんまり説明できるほどの知識が無いから教えたくないんだが……。
ま、男の知識程度だけ言っておくか。
刻印発動は陣発動を人体に埋め込んだものだ。
正確には皮膚に直接陣を刻んだ物を指す。
魔力負荷の少ない塗料が発明されたとかで、人体保護の術式も組み込んだら簡単な術式なら埋め込む事が出来るようになったらしい。
メリットは陣を刻んだ身体さえあればオドを流し込む時間だけで魔術が直ぐに発動する。
デメリットは陣発動と同じく応用が利かない。
それに人体に描けるサイズの魔術陣だとあまり複雑な術は描けない。
ついでに言うなら最低人体保護の術式を組み込むからどう足掻いても陣発動と比較すると陣のサイズがでかくなる。
ただ、戦闘では速度が物を言うからな。
破壊魔術を身体に描いて連続して魔術を行使するのが今の流行らしい。』
成程ね。
そう言えば以前にエヴァーンが先天性魔臓肥大病のメリットを説明してくれた時にちょろっと刻印発動について言ってたような気がする。
それの事か。
まぁ、破壊魔術なんて敵を攻撃できればいいんだしな。
あんまり応用性が無くてもいいのか。
『最低限オドの操作だけ覚えれば誰でも魔術が使えるって事だ。
ま、今は刻印を身体に埋め込むにはかなりの金をとられるそうだがな。
特殊な腕前がいるらしい。
今後は時間とともに安くなるだろうし、そうなれば誰でも魔術が使える様になるだろう。』
ん?つまり俺も身体に刻印を埋め込めば楽に魔術が使えるって事か?
頑張ってさっき詠唱発動成功させたけど無駄足だったか?
『単純な魔術なら確かに刻印でもいい。
言った通り応用が利かないんだよ陣発動と刻印発動は。
飛行術式とかは発動中に随時調整が必要だったり飛ぶ空の環境で術式を変更する必要がある。
そういうのにはあまり向いてねぇな。
男は最低限の飛行術式を刻印で刻んで調整が必要な点は詠唱で補おうとか考えてたみたいだな。
その場合はなんにせよ飛行術式に対する理解と知識が必要だろ?
誰でも魔術を使えはするが、理論を知って使うのと何も知らずに結果だけを知って使うのとでは大違いだぞ。
少なくとも俺様は刻印発動だけで魔術師になった奴は本当の魔術師だとは思わないね。』
むぅ。
そう上手くはいかないか。
『ま、剣士とかが余ったオドの活用のために簡単な刻印を埋め込んだりする分には良いだろうよ。
それにお前の場合は身体に埋め込んだところで俺様がそこから身体を出せば身体を修復する際には元の鱗に戻っちまうぜ?』
それはヴァゴスが気を付ければいいんじゃない?
『刻印発動は結構な面積を食うんだぜ?
そこから俺様が身体を出せないのはそっちの方が戦力ダウンだと思うがね。
お前は諦めて普通の詠唱発動を出来るようになるんだな。』
残念。
そうそう楽は出来ないか。
ま、今まではそもそも魔術が使えなかったことを思うと使える様になるだけありがたいってもんだな。
『っと、結構話し込んでたみたいだな。
見ろよ、夜明けだぜ。』
ヴァゴスの言う通り帆船の甲板から水平線を見るとうっすらと光が漏れ始めていた。
そろそろアンデットの時間も終わりだな。
ま、ヴァゴスに体を覆って貰っている現状、夜が明けた所で別にどうって事は無いけどな。
いつもお読みいただき有難うございます。
今回の本文簡易まとめ
・魔術の種類
理魔術 :魔力の形を変えたり条件を追加したりする基礎の魔術
創造魔術:何かしらの物質や現象を魔力から変換して創造する魔術
変化魔術:何かを別の何かに変化させる魔術
干渉魔術:目に見えないエネルギーや力に干渉する魔術
特殊魔術:上記以外の魔術全般
・発動方法
詠唱発動:言葉やイメージで魔術を発動させる方法
陣発動 :陣に描いた魔術を発動させる方法
刻印発動:体に陣を埋め込んで魔術を発動させる方法
本当は発動方法は他にも種類があります。
あんまりメジャーじゃなかったりでヴァゴスが今回は説明を省きました。




