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死した竜の物語  作者: 獅子貫 達磨
第三章 吸血竜の邂逅
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2話 四十階層

今日は少し短めです。

エヴァーンが寝てから数時間、偶に上空をワイバーンが旋回していたが、仲間の焼ける匂いに気が付いたのかどうかは知らないが降りてくることは無かった。

単純にエヴァーンが俺の翼の影になって見えてなかったってだけの可能性もあるけどね。


最初の頃は一人が全く苦痛じゃなかったってのに、今となっては数時間でも話し相手がいないと少し寂しさと感じてしまうのは少しばかり甘えすぎているんだろうか。

竜天獄でも結構一匹でいる時間が多かったと思うんだけど。


もしくは対等に…力関係はともかくエヴァーンも俺がいないと解放へ向かえないという意味では対等だ…過ごせる相手が居なかった事が原因かな。

自分の思考とは言え、あんまり考えてもわからない。

それになんか考えてると少し気恥ずかしくなってきた。


動くわけにもいかないから、暇と気分を紛らわす為に、二本の腕を作り出す。

そして、空中でその腕同士を押し合わせたり、叩きあったりして互いに負荷をかける。

最近の魔領法の訓練は実戦を除くとこんな地味なのばっかりだ。

地味と言うか、もはや他人から見たら佇んでいるだけだからな、これ。


最初はそこら辺の地面から土を掬ったり石を持ち上げたり、枝を折ったりしてたけど、直にそれでは全く向上が見られなくなった。

岩とかも持ち上がるようになったけど、いつでも近くにそんな訓練に手ごろなものがある訳じゃ無い。

って事で考え出されたのが同じ魔領法の腕同士で負荷を高め合う方法だ。

因みに俺はこんなこと思いつかないのでエヴァーンの考案だった。


何でも熟練した魔術師の訓練でも同じようなのがあるんだとか。

その場合は防御魔法と攻撃魔法を激突させるらしい。

二重詠唱?とかなんとか高等技法らしいから本当に熟練しきった人じゃないとできないらしいけど、細かい事は忘れた。

まだ魔術使えねーし。


まぁ、ともかく最近はずっとこの繰り返しである。

腕以外にも簡単な形の物の形成も出来るようになった。

主に腕以外は戦闘にしか使わないから盾、剣、槍とかの武器系が多くなるな。

まぁ、剣とか槍ってあんまり意味ないんだけどね。

あくまで魔領法は俺のオドを使ったただの魔力の塊に過ぎない。

ので、術式化された魔術よりもマナ浸透抵抗率の影響を酷く受ける。

つまりは、他の生物の体に入ると急速に解れて行ってしまうのだ。

だから、剣も槍も相手の表面を切り裂いただけで、直ぐに分解されてしまうのであんまり意味が無い。

寧ろ、還元されるはずのオドを失うから無駄の方が多い位だ。

やっぱり一番汎用性が高いのは人間の腕の形だな。

俺的には人間の掌に追加で指をもう一本加えた六本指の状態が一番使い勝手がいい。


そうやっていつも通りに訓練を続けていると、背中でもぞもぞと動く反応があった。

起きたみたいだな。





あれから十時間以上、下りるための階段塚を出現させる為に歩き続けた。

既にエヴァーンからこの迷宮の法則性は聞いていたので別段探そうとしなくても、歩き続けるだけでいいと分かった俺は取りあえず前へ進むことにした。

そして、無事に下への塚を見つけていつも通り下って行くと四回目の扉が目に飛び込んできた。


「さて、いつも通りに妾はお主の背中で観戦しておる故、あまり揺らすで無いぞ?

 特に制限はかけぬ。全力で当たるがよい。」


既に扉は開いているから、中に入るだけでいい。

制限なしか。了解。


そのまま扉を潜って四十階層の中へと入った。

もう試練部屋…十階層毎にある敵が一匹しかいない場所…も四回目って事で慣れたな。

今までの体感だと、その階層に行くまでの各階層に居る魔獣の上位個体が出てくることが多い。

それで言うと今回の階層はワイバーン、もしくはそれに類する相手だろうな。


そう思って進み、開けた場所が見えてくる。

まぁ、うん。

……予想自体は正解したけど、正解してもこれはあんまり嬉しくないな。


広間の中心には灰色の竜が鎮座していた。

灰色の巨大な体躯…十五メルトはあるな…に口から火の粉が舞っている。

尻尾は見える限り一本、羽が大きいからおそらく飛ぶタイプだろう。

ただ、幸いこの場所は天井がありで、しかも低い。

あまり飛ぶメリットは無さそうだ。

既にこちらを視認しており、広間へと足を踏み入れると即座にそのまま戦闘になるだろう。


「ほれ、どうした。

 さっさと行かぬか。

 お主に近しい種族と言え相手は魔竜で真竜ですらないぞ。

 体躯の差は大きいが、お主より大きな相手なんぞ世界にはいっぱいおる。

 臆さずにさっさ行け。」


相手を安全圏から観察しているとエヴァーンに背中をバシバシと叩かれる。

力を入れていないのかあんまり痛くは無いけど。

まぁ、確かに考えても仕方ない。

四肢に魔纏法でオドをありったけ集中させて、後ろ足に力を溜める。


溜まりきったタイミングで一気に足にたまったエネルギーを開放して加速、突撃する。

同時に相手もこちらが突撃してくることを予測していたのか、俺の動きに合わせて大きく口を開く。

すると相手の竜の口内がカッと明るくなるのが見えた。

親で見たことがあるな。ブレスだ。

最初っから容赦ねぇな。

俺も相手の頭に向かっている都合上、丁度俺を飲み込む形でブレスを放つつもりだな。


敢えて焼かれてやるつもりもないから、素早く魔領法で腕を作り出し、それを天井に突き刺す。

そのまま腕を天井に固定し、身体を引っ張るようにして天井方向へ向きを修正する。

丁度、相手の上側へと回避する形だな。

突撃した速度は殺されるがこの際仕方ない。


俺が上に回避するのと同時にゴウッと言う音と共に俺の真下を炎の奔流が通過する。

十分安全な距離は採ったはずなんだが、結構な熱気がこっちまで届いてきた。

軽く焼かれる程度なら平気だけど、あの火力は直撃すると骨まで届きそうだ。

当たらないに限る。

いやまぁ、どんな攻撃も避けれるのであれば当たらないに越したことは無いんだけどさ。


前にアンデットとしての心構えをエヴァーンから聞いたのを思い出す。

エヴァーン曰く吸血鬼の再生能力を過信して相手の攻撃を避けないのはよくないとの事だった。

吸血鬼は吸った血の量に応じて相手の生命力を貯めておき、自分が傷を負った時にそれを消費する事で再生をしてるんだとか。

だから、あまり攻撃を負いすぎると再生が覚束なくなり、そのまま再生ができなくなり何れ消滅するらしい。

そこら辺をよく理解していない新米吸血鬼が敵に攻撃を食らいまくって、よく滅せられるんだと。


一見、上限無く無限に再生し続けるものだと思っていたが、そりゃ制限位はあるか。

例外として心臓を破壊された場合は貯蓄されている生命力に関係なく消滅する。

吸血鬼の弱点は心臓。取りあえず吸血鬼になったら心臓だけは守れって言われた。


因みに昔に抱いていた「頭が取れたらどうなるの?」に関しては普通に心臓が無事なら再生するらしい。

ただ、再生が完了するまで意識が飛んだ状態になるらしく、無防備になるから頭部も極力守った方がいいって事だった。

まぁ、意識が無いとその間に心臓潰されたら終わりだしな。

実質頭もなかなか弱点なんだろう。


と、まぁ景気よく火を噴いてくれている魔竜に向かって天井から跳びかかる。

別に吹き終わるのを待ってやる理由もないしな。

天井に突き刺した腕を消し、天井を蹴った反動と落下の力で相手の頭蓋へと向かう。


相手は自分の放ったブレスの初動で放たれた閃光で俺を見失ったのか、上への警戒はお粗末だ。

そのまま、別の腕を作り先端には拳ではなく重りのように丸くする。

重い重いイメージで重りに籠めるオドを増大させる。

それを一番いいタイミングで、ブレスを噴き続けてる奴の頭上に力いっぱい振り下ろした。


バゴンッ、ボンッと大きい音が二連続で響いた。

一発目は振り下ろした重りが頭に直撃した時の音で俺の攻撃だ。

だが、続いての鈍い爆発音には心当たりがない。


敵の魔竜の何かしらの術式の音かもしれない。

俺は敵の事を詳しく知らないから何が起こるか分からない。

だから、取り敢えず腕を盾状に変化させて眼前に構え、相手からの距離を取る。

こういう時は防御に徹するのが安全だ。


俺が振り下ろした重りが魔竜に当たった後にそのままの勢いで地面にも到達したのか、ひび割れてそこから砂埃が舞い視界が阻害される。

砂煙の中から急に飛び出してこられても良い様に警戒を続ける。

さぁ……どこから来る。


「……のう、お主よ。」


ん?俺が魔竜の方への警戒を続けていると背中のエヴァーンから声がかかる。

首の方までいつの間にか登って来ており、耳元で声がした。

案外声が近いとびっくりするから戦闘中はやめて欲しいって毎回言ってるのになぁ。


「もう、死んでおるぞ?」


エヴァーンが術式を使ったのか軽い風が吹き抜けて、砂埃を取っ払う。

砂埃が晴れると頭部が凹み顎が爆散した魔竜の死体が微動だにせず姿を現した。

……え、嘘だろ?


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