災厄の前兆
今私は馬車に乗せられて移動中だ、目の前にはイリスちゃんと王様と私の父が寛いでいる。前や後ろは王国の精鋭の兵士達がいる。これならばよっぽどのことがない限り大丈夫だろう。
「今日はアリサちゃんと一緒に出掛けられるから楽しみにしてたの!」
「私も!イリスちゃんとピクニックだなぁって思ってた!」
あぁ...いいなぁ…これは前世では無かった…友達との会話だ...
「もうすぐで途中の中継キャンプ場です!」
御者の人が言う、おお!キャンプとか憧れてたんだよねー!
「アリサちゃん」
イリスちゃんが小声で言ってくる、ん?なんだろう...?
「あとで2人だけで探検してみない?」
いいのだろうか?イリスちゃんは王女だ、みすみす危険に晒すような真似をして...
「ね?お願い...」
くっ!上目遣い&涙目のコンボは卑怯だよ...まぁ何かあっても私がいるし、トイレに行ってきますとか理由をつければ大丈夫か...
「うん、じゃああとで行こうか」
「やった!」
2人で喜ぶ、こういうのも友達ならではのことだよなぁ〜感動感動!
「つきましたよ!」
御者の人が大声で言う、おお、もうついたのか!私も何か手伝わないとな…
「私も何か手伝えることはありますか?」
王国の兵士さん達に聞く、すると何か焦ってアリサ様は休んどいてください!と言われた。何だろう避けられてる気がする。
何故だ...?王国の兵士との合同鍛錬の時全員ボコったせいか...?それとも魔力を解放させて父親と模擬戦をしていたのを見てたせいか...?まぁ考えても仕方ない、休ませてくれるなら存分に休もうじゃないか。
「今日は前の調査よりも先に進もうと思う、この地はまだわかっていないことが多いからな、油断をしないように」
「分かりました!」
横を見たら父親が兵士に指示を出していた、ならば何故王がついてくるのだろうか?イリスちゃんとお出掛けでハイテンションになっていた私は今頃そう考えた。
「お父さん、何故ここは未開の森なのに王様が直接視察に来られるのですか?」
「それはな...」
「余が頼んでるのだ、ここはいろいろな意味で特別なところでな...」
へぇー、何か思い出深いものでもあるのかな?とか思い、それ以上は聞かなかった、このときに聞いていたらもしかすると未来が変わっていたかもしれないとはこのときのアリサは思いもしなかった。
「とりあえず、飯の時間も近いから楽しみだな!」
「そうですね!どんな料理が出るのでしょうか!」
キャンプ料理といえばカレーかな?それともバーベキューか?
「ああ!今日はブラックブルの丸焼きだ!!」
ええ!ブラックブルとは牛型の魔物でかなり強いのであまり食べられない高級食材なのだが...
「俺が1体丸ごとアイテムボックスに入れてきたんだ!」
アイテムボックスとは次元魔法といわれる四属性以外の使えるものが少ない魔法の一つだ、くそっ...このチートめ...
「王が来ているのにただの牛の丸焼きだと味気ないからな!」
まぁ私も美味しいものが食べられるから文句は無い…
「嬉しいです!お父さん!」
満点の笑顔で言っておく、親馬鹿親父にはこれでいい...
「おお!アリサが喜んでくれて俺も嬉しいぞ!」
そこからは王国の兵士さんの中の料理担当の人に任せ、焼いて貰った、タレが無かったのが少し不満だったが美味しかった、凄い量の肉汁としつこ過ぎなく甘いとも言えるほどの極上の脂が最高だった。
「アリサちゃんアリサちゃん」
ブラックブルの味の余韻に浸っているとイリスちゃんが小声で声を掛けてきた。あぁ...探検だったっけ…よし...いっちょ一芝居うちますか!
「お父さん」
「ん?どうした?アリサ?イリスちゃんも」
「私達2人でトイレに行ってきます」
「2人で大丈夫か?」
「私がいるから大丈夫です!」
「そうか...じゃあ遅くならないようにな!」
よし!じゃあ探検に行きますか!!イリスちゃんと一緒だったら何処でも行ける気がするよ!
だが、私達はまだ知らない、この魔獣の森にあんなものが棲んでいたとは...そして私が取り返しのつかないことになるとは...