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戦わずに大陸を落とした男――気づけば公爵令嬢と参謀と商人に囲まれている  作者: 慈架太子


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42/90

42:聖君評価



 人は、名前をつける。

 理解できないものに――意味を与えるために。


 教国・聖都リュミナ。


 大聖堂の奥。


 枢機卿会議。


 重い扉が閉じられ、外の祈りの声は遮断される。


「……報告は聞いた」


 最上席の男が言う。


 白衣。金の紋章。


 教国の中枢。


「信徒の減少」


「配給の分断」


「外部の干渉」


 一つ一つ、言葉を置く。


「結論を言え」


 短い命令。


 沈黙。


 やがて。


 一人の司祭が口を開く。


「……“敵”ではありません」


 空気が動く。


「何だと」


「攻撃はない」


「破壊もない」


「ただ――」


 一拍。


「“与えない”」


 その言葉に、全員が沈黙する。


「……それで崩れたのか」


「はい」


 認めるしかない。


 力ではない。


 だが。


 確実に、影響している。


「……名は」


「エルガード・カウフマン」


 その名が、正式に刻まれる。


「……評価は」


 再び沈黙。


 誰も、簡単には言えない。


 やがて。


 一人が言う。


「……異端です」


 即答。


「神の導きではない」


「人の理でもない」


「……理解できない」


 別の声。


「ならば、排除を――」


「待て」


 最上席の男が制する。


 静かに。


「……救っている」


 一言。


 それで、流れが止まる。


「……何を」


「民を」


 即答。


 否定できない。


 食を与えたのではない。


 だが。


 “生き方”を与えた。


「……ならば」


 一人が言う。


「“聖者”か」


 沈黙。


 重い。


「……違う」


 最上席の男が言う。


「聖者は、導く」


「だが、あれは――」


 一拍。


「“選ばせる”」


 それは、違う。


 信仰ではない。


 支配でもない。


 だが。


 強い。


「……名付けよ」


 その言葉。


 全員が、言葉を探す。


 そして。


「……聖君」


 誰かが呟く。


 それが、広がる。


「聖君……」


「導かずして、導く者」


「救わずして、救う者」


 定義される。


 理解される。


 それは、危険。


「……認めるのか」


 問われる。


 最上席の男は、ゆっくりと目を閉じる。


「認めない」


 即答。


「だが」


 一拍。


「無視もしない」


 それが判断。


 森の拠点。


「……呼ばれてるわね」


 エルディア・ヴァレンティナが言う。


 帳面を見ながら。


「“聖君”」


 その言葉に。


 レオニア・アルディウスが吹き出す。


「……は?」


「冗談だろ」


 マリナ・ルクレツィアは、静かに笑う。


「いい名前ですわ」


「理解しようとしている証拠ですもの」


 エルガード・カウフマンは、何も言わない。


 ただ。


 火を見る。


 揺れている。


 だが。


 変わらない。


「……どうする」


 レオニアが問う。


「そのままだ」


 短い答え。


「名前は関係ない」


 一拍。


「やることは変わらない」


 それだけ。


 エルディアが頷く。


「……評価は進んでる」


「それは、次に繋がる」


 マリナが言う。


「ええ」


「崇拝か、敵視か」


「どちらかに振れます」


 それが危険。


 だが。


 必要な段階。


 エルガードは、火を見る。


 揺れている。


 だが。


 強い。


 名がついた。


 意味がついた。


 だが。


 本質は変わらない。


 選ばせる。


 それだけ。


 それが。


 理解され始めていた。

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