これからも幸せは、2人で1つ。
もう本当にすぐベル様は迎えに来てくれた。しかも待ちきれないからと、私の私室に勝手にパッと転移してきた時には、当然ヤナがキレて怒鳴ったんだけど全く意に介さず。それどころか、完全に無視して自分の私室に転移してしまった。私ごとね!!
そして着いた私室で彼は私を立たせたまま、自分は片膝を付いて私の右手を両手で掴み、何度も手のひらに口付けながらこちらを見ている。えええ、どういう事?!なんて言えばいいんだろうか?!ていうかくすぐったいし、まず立ってくれない?!さっきまでも美しかったけど、今もやっぱり美の暴力だからしんどいって!!私のライフはそろそろゼロよっ!!!
「サラ、漸くだね?本当に本当に長かった。例えまだ婚約発表とはいえ、俺の中では結婚なんだよ。だからすぐ婚姻もしちゃおうね。両陛下には既に許可を貰ってるし、もう婚約発表と同時に婚姻も宣言してしまおうね。」
手のひらにちゅっちゅしながら言うと、最後には思い切り吸いつかれた。ヒエエッッ!!!ツッコミどころしかないのやめろ!!どこから、どこから問えばいいのか……!!
「ああ、俺のサラは本当に世界一美しいな。誰にも見せたくないのに、俺の姫はこんなにも美しんだと世界中に自慢したい気持ちも強い。困った子だね、サラはいつも俺を夢中にさせるのに、同じくらい困らせる。ふふふ、一生そうしていてほしい。愛してるよ、さあ行こう。」
ななななっ……!!!瞬間、真っ赤に顔を染めて思考停止してしまった結果、すっかり固まってしまった私を嬉しそうにお姫様抱っこして、王族専用登場口の前に転移した。だからいつも言ってからって頼んでるのに!!まあさっきは固まった私が悪いか。……悪いか??
そこには既に両陛下がおられたので、慌ててベル様に降ろしてほしいとアピールしたのに完全に無視。いやいや!!さすがにまずいって!!失礼だって!!!とワタワタする私の前に、めちゃくちゃ微笑む王妃様と微妙な顔をした陛下が来てくれた。いやーー!!すみませんすみませんっ!!!
「あっははは!!懐かしいわねえ。私もね、こうしてこの人に連れられていたし、いつも膝の上に座らされていたのよ?懐かしいわ。でもベオ?サラちゃんが恥ずかしがってるんだから少しは遠慮しなさいな。そうでないとこの人みたいに、いずれ抱っこも膝の上に座る事も拒否されてしまうわよ?」
いい笑顔をしながら扇子で口元を隠して、最後にそう言ってベル様を睨んでくれた。いやー、なんて頼もしいんでしょう!!装いも麗しくて目が離せません!!!しかして反対に陛下はしょぼんとしてしまって、「……本当にずっとなんだ。」と呟いている。ちょっと可哀想だけど、王妃様を怒らせてしまったんだったら反省していただかないと……。
「母上、忠告はききますよ。ですが私達は何も問題ありません。何故ならお互いに、心から愛し合っているからです。ご心配いただいてどうも。ではそろそろ時間ですよ?」
ちょっと微笑みながら宣言してるけど、どっちも睨み合っているのが怖い。怖い怖い!!陛下と2人でオロオロしてたけど、本当に時間だったので難を逃れた。ふう、助かった!!と思っていた時に、陛下だけがチョチョッと寄ってきたのである。あら?!やっぱり怒られる?!と焦っていたら、全然別の事だった。
「……サラ嬢、私の息子が大変迷惑を掛けたようだな。申し訳ない。彼奴は真っ直ぐすぎたゆえに、大変思い込みが激しくてなあ、何度訂正しても直らなんだ。許して欲しいとは言わん。だが私が心から申し訳ないと思っている事を、どうしても伝えたかったんだ。本当に申し訳ない。」
そう言って、私なんかに頭を下げる陛下。ちょちょちょちょ!!!一国の王が簡単に頭下げないでくださいよ!!と大慌てで「へ、陛下!!頭を上げてください!!」と伝えると、やっとこちらを見てくれた。親子だから当たり前だけど、ベル様にも、そしてローガン第二王子殿下にも似ているなと思った。陛下が決してローガン殿下の名前を出さないのは、罰として追放されてしまったからだろうか。しかしてベル様が既に対処してくれているのだから、私から改めて文句を言う必要もない。
「陛下、謝罪をしてくださってありがとうございます。ですが、私は気にしておりませんよ。何故ならばベル様と私の弟が助けてくれましたし、第二王子殿下への対処はベル様がしてくださったと聞きました。ですから、もうそれで構わないのです。気にかけてくださって、ありがとうざいました。」
と言って深く頭を下げた。もちろんお姫様抱っこのままなのだけれども!!ちょっと未だにヒヤヒヤしながら陛下を見ると、目を細めて微笑んでいた。美丈夫が微笑む……イケおじの微笑み……だと?!?!ぐぅぅ!!なんという美の暴力!!!と胸を高鳴らせながら頬を染めていると、ズイッとベル様が顔を寄せてきたので途端に思考を放棄した。あぶねえ!!
「……感謝する。べオ、いいご令嬢を見つけたなあ。絶対に逃がさないように。……彼奴もいつか、そんな人に巡り会えたらと願わずにはいられんよ。それじゃあ、また会場でな。」
サッと片手を上げて去っていく背中を見ながら、いやいや逃がすなって言う?!そんな事言っちゃう?!やめてくださいよ!!ただでさえ雁字搦めなのに本当に閉じ込められてしまうじゃん!!離宮建てたとか言ってたけどさあ、これ陛下の受け売りなんじゃないの?!……なんて恐ろしい親子なのだろうか!!今となっては別にいいけど?!
「さあ、俺のお姫様?俺達も行くよ。愛してる。」
そう言っておでこにちゅっちゅすると、パッと転移しやがって心の準備も何もないのに、王族用の高台の上にいた。ちゃんとお姫様抱っこのままで、それを見た会場の老若男女問わず悲鳴のような声を上げている。うわああ!!恥ずかしい……!!しかし耐えるのだ、耐えろ私!!!サラさん、私に力をわけてくれぇっ!!!
「ではベオウルフ、お前から挨拶と報告をせよ。」
既に陛下が挨拶やお知らせがあると言ってくれたらしい。早いって!早いって!!アワアワする私を、王妃様が温かい目で見つめてくれる。きっと大丈夫、そう言われたような気がして、頑張ります!と強い視線を返しておいた。頑張らなければ!!ベル様の隣に立つと決めたのは私なんだから!!
「みな、今宵のパーティに集まってくれて大変感謝する。午前にあったが、私は王太子となった。この国を本格的に支え、陛下のような立派な国王となる為に、伴侶となる女性をもらう事とした。ここにいる全ての者が気付いていると思うが、もちろん相手はこのサラ・ロバーツ伯爵令嬢以外ありえない!!私は彼女を心から愛しているし、彼女もそうだ。すぐに婚姻を契るから、来月の盛大に行う結婚式にも是非参加してほしい。2人で必ずこの国を導き、よりよいものとしてみせる。だからどうか祝福してくれ。さあパーティを楽しもう!!」
ぅおおおおおお!!!!!
という咆哮会場から聞こえるけれども、叫びたいのは私だよっっ!!!結婚式が来月ってまじ?!?!きいてないんですけどーー!!!両陛下をバッと見ると、お2人ともニコニコと拍手しているのできっと知っていたのだ。えええ……!!!ちょっと一旦落ち着かせてくださいよ!!なんてありえるはずもなく。気付けばホールの真ん中に立っており、両陛下とベル様と私でファーストダンスをするらしい。ヒエエッ、ちゃんと動くかな?!
「サラ、俺だけのお姫様。本当に美しいよ、今すぐにでも婚姻の契りを結びたいね?ふふ、赤くなってなんとかわいい事か。しかしこの場の全員にそれが見られていると思うと、同時にすごく腹が立つなあ。もう部屋に戻ってしまおうか?最大の目的であった発表は済んだんだから、もういいだろう?」
全く踊りに集中させくれる気無いじゃん!!しかして身体は勝手に音楽に反応して、ベル様の素晴らしいリードのお陰もあり、なんとか最後までステップを間違えずに踊りきる事が出来たのである。ああ良かった!!と満足して微笑んでいたら、「……ああ俺のサラが笑顔を振りまいている。」と言って真顔になったので慌てて頬を撫でた。へいへいベル様呼吸して???
やがて落ち着いてくれたので安心していると、アンディがこちらに来ているのが分かった。その顔は微笑んでいるけれども、目はものすごく怒っている。ごめんって!!お姉ちゃんも知らなかったんだよ!!わざと内緒にしてたんじゃないんだってば!!と焦って見つめていたのに、当然魔王が間に入って来た。弟に嫉妬すんなってばよ!!目の前に着いたアンディは、とりあえず嫌いなベル様にも貴族の礼をしっかりしていて、さすが私の天使!!とキラキラした目で見てしまった。それに気付いたアンディも、同じように見つめ返してくれて尚更嬉しい!!だけどベル様が怖いからやめます、はい。妬くなや!!
「ベオウルフ王太子殿下、姉さん、この度はおめでとうございます。まさかすぐに婚姻を結んで、来月には結婚式をするなんて知らなかったなあ??」
ものすごい圧力で、勇者が魔王に立ち向かっている……!!対してベル様も、同じぐらいの圧を放ってアンディを見ると、口角を上げなが私の腰を更に強く引き寄せた。足浮いてるんですけど?!
「ああ、両陛下が言うのを忘れてしまってね?俺もサラも先程知ったんだ。まあ早いなんて事はないだろう?だって愛し合ってるんだからな。お前にも結婚式に是非参加してほしい。そしていい加減にサラ離れしろ。」
何をいけしゃあしゃあと!!と驚愕の表情をしながら見つめていると、途端に破顔した彼が「かわいい。」と言って再び抱っこしてしまった。お姫様風ではなく、登校する時にしていたあの左腕におしりを乗せるという、5歳児までのやつを。ぅおおお……!!ここでするかあ?!
真っ赤になって俯き気味の私を幸せそうに見ながら、アンディがキレて文句を言っているのを無視して王族席に転移した。挨拶したくて並んでいた他の貴族も驚いているし、逃げられて悔しい様子のアンディが眉間に皺を寄せているのが見える。かわいいけどさ!!ちょっと困るなあと思って、「ご挨拶はするべきでは?」とベル様の耳に口を寄せて小声で怒ったのだけれども。
「ああサラ!!かわいいかわいい。今すぐ部屋に戻ろう?挨拶なんていつでも出来るんだからさ、今はもういいじゃないか。ね?」
なんて、頬をバラ色に染めながらうっとりと言いやがった。こらこらダメでしょうが!!だからムッとして睨むと、「んふふ♡」と微笑むだけだったけれども思っている事は伝わったようで、「仕方ないから挨拶だけはしようか?」と眉毛をハの字にして言ったのである。え、ちょっと!!なんで私が我が儘言ってるみたいな反応するの?!違いますけど?!?!と憤慨していても、きちんとこなさなければならないので笑顔に戻り、再び挨拶しようと、高台の階段のところに並んでくれている貴族達の挨拶に応対していったのである。
マイヤー先生のスパルタ授業のお陰で、貴族達の顔も名前も暗記していて本当に良かった!!あとこれは完全に私の問題なんだけど、無駄知識っていうか雑学が好きなせいで、覚えなくてもいい事まで頭に入っていたために、それを話題に出してしまって話が盛り上がり、長引いてしまう事もしばしばで。反省はしても改めるつもりもないけれどもね!!
そんな風に、私も大変好き勝手会話していたらけっこう時間が経っていて、楽しいとあっという間だなあ!!なんて思っていたら両親とアンディが最後に来てくれた。先程までの全員の挨拶の疲れなんてパッと忘れ、破顔して彼らを迎え入れたけれども、我慢出来ずにアンディに思いっきり抱きついたのだった。だってさっきは全然話せなかったし、疲れてたんだもん!!!
ギュウッとアンディももっと強い力で抱き返してくれて、本当に幸せである。ああなんて癒されるのか!!貴族達との会話は楽しかったけど、知らない人と話すのはやっぱり疲れるしエネルギーを大量に消費してしまうから、我が愛しの弟から補給させてもらおう。お互いにスリスリしていると、ブワッと魔力を放出して会場を冷やした魔王がベリッと引き剥がしやがった。嫉妬するな!!あと魔力を簡単に撒き散らすのはダメだよっていつも言ってるのにさあ!!
どうやら陛下が早急に対応してくださったようで、会場はすぐに元に戻ったらしい。さすがです……!!ベル様が私を隠すようにギュッと抱いて、アンディと睨み合っていて怖い。私ガチ勢とシスコンはいつになったら仲良くなるんだろうか……!!
「サラ、おめでとう。どうせすぐ結婚に持ち込まれると思っていたけど、こんなにも早いとは思わなかったわ。うふふ、さすが王太子殿下ね。まあ貴女も幸せそうだから良かったわ。」
喧嘩している2人を放って、母がハグしながら優しく言ってくれた。身長が同じだから自然と肩に顎を乗せ、涙をこらえて必死に「ありがとう。」と伝える。サラさんもそう言ってる、と小声で言うと、母は涙を流して微笑み、「貴女もサラよ。私達の娘。」なんて言うから我慢出来るわけもなく。ボロボロと涙がこぼれて頬を滑り、母の美しい深紅のドレスの肩の部分に染みを作った。しかしそれはお互い様で、私の肩にも温かい雨が降っているようだ。それを見たベル様とアンディも、そしてずっと空気のようだったお父様も、うっとりとした顔で見つめているのが怖い。えええ……。こういう時にヒーローって慰めるんじゃないの??まあ喧嘩が止まったし、母の大きな愛で包んでくれたからよしとしましょうかね。
そのまま4人で楽しく団欒していたけど、我慢出来なくなったらしいベル様の圧に負けて退室する事にした。両陛下は既に転移されているので、とりあえず他の上位貴族の方々に軽く挨拶をしてから2人で彼の私室に転移したのである。両陛下もいないのに会場は大丈夫なのかなと思っていると、「エルがいるから問題ない。」と察したベル様が教えてくれたけれども、やっぱ敏腕専属侍従ってすげーー……!!
とにかく疲れた、と言う彼は、ソファにドッカリ座ると膝の上に私を座らせ、後ろからスンスンスリスリギュッギュにちゅっちゅ祭を開催している。指をパチンと鳴らしてお茶セットを出してくれており、マーキングしながらも適切なタイミングで手作りのお菓子をくれるからもぐもぐ食べた。美味しい!!パーティ会場の美味しそうな料理は全く食べられなかったしね、残念だけどベル様のお菓子が美味しいからいっか!!
それから満足したらしいベル様に、超絶しぶられながら私室に戻ると、待っていてくれたヤナに手伝ってもらってお風呂に入る。しっかりケアしてもらって、ナイトドレスを着せてもらうと歯を磨いたのだった。そして詳細を知ってぷんすこしているヤナにギュッと抱きついて、「ずっとそばにいてくれる?」と問うと、「ゔっっっ!!!」と呻きながらも大きく首を縦に振ってくれたのが心から嬉しい。最高かよ!!!と嬉しくなって、満面の笑みでぽよぽよおっぱいに遠慮なくスリスリしたのである。あああ、落ち着くんじゃ〜〜!!
そしておやすみを言うと、クソデカファンシーベッドに入った。ヤナが控え室に入ったのを見届けてから、そっと降りてルームシューズを履くと、ベル様の寝室と繋がってる小さめのドアの前に立つ。そして緊張しながらノックしようとした時、なんと向こうからガチョッと開いて飛び上がる程に驚いたのだった。
「サラ、こんな時間にそんな魅力的な格好でどうしたの?」
なんて、湯上りらしい色気ムンムンのベル様に言われてもさあ!!まるで私が襲いに来たみたいじゃん?!と真っ赤になりつつ俯きながら、「ちょっと言い忘れたことがありまして。」とボソボソ言うと、彼があまりにも嬉しそうに笑うから途端に恥ずかしくなってワタワタしてしまった。だから彼が、「鴨が葱を背負って来た…….。」と喜びを必死に抑えるように唸り声を出していたなんて知る由もなく。
ものすごく笑顔のベル様に、ベッドに腰掛けるように勧められたけどもちろん断って、その横にあるソファに座った。すると当然のように私を持ち上げて膝の上に乗せたんだけど、最初から向き合う体勢にされたのでちょっと恥ずかしい。だってお互いに薄着だから、いつもより体温が伝わってきてライフがゴリゴリ減るんだって!!そんな私を楽しそうに見つめながら、頬を撫でて私が何か言うのを待ってくれている。うっ……、覚悟して来たはずなのにいざとなると日和っちゃうなあ。
でも!!と顔を上げると、しっかり彼の目を見つめた。そして更に幸せそうな顔になったのに気付いて、ああ何を怖気付いているんだろうとちょっと笑った。こんなにも彼は、今だけじゃなくずっとずっと、大きくて重くて、怖いくらいの愛をくれていたというのに。何を恐れる必要がある?だからほら、言うのだよ、頑張るのだよ!!心做しか胸がポコポコと温かくなった。これはもしや、サラさんも応援してくれてる……?ありがとうね、きっと大丈夫。とまた微笑むと、少し不思議そうにしている彼の頬を両手で包みながら、漸く口を開いたのである。
「ベル様、ずっとずっと私を、大きくて温かい愛で包んでくれてありがとう。たくさんの愛をありがとう。最初は理由がわからなくて不安だったけど、私だから好きだと言ってくれて本当に嬉しかった。そして気付いたのです。私も、心からベル様が好きなんだって。うふふ、口に出すと恥ずかしいですね?でもたくさん言っていただいたんですから、私もこれからはきちんと声に出して伝えます。大好きですよ、ベル様。私を愛してくれてありがとう。これからもずっと、末永くよろしくお願いしますね。」
途中で恥ずかしさのあまり少し詰まったけれど、最後までどうにか言い切った。そして真っ赤な顔のまま少し俯いて待っていたのに、ベル様は何も言ってくれない。え、あれ、やべえ、キモかった?!と焦って顔を上げると、彼は赤い顔をしながら静かに泣いていた。それはそれは美しい涙で、まるで夕日が海に沈む瞬間のような、神秘的なもの。彼の頬を挟んだままだった私の手にも温かな雨が流れてきて、それをそのまま拭うと、彼は顔を歪めて私をかき抱いたのだった。時折嗚咽を漏らすけれど、それ以外はすごく静かで。私はそっと彼が落ち着くまで、ギュッと抱きしめながら頭を撫でていたのである。
それから少しして、落ち着いたらしい彼の目は赤くなっていた。なんだかかわいく思えてしまい、フフッと笑うと目元を撫でた。それに擽ったそうにしながらも、その手を掴んで口元に運び、何度も手のひらにちゅっちゅしてくる。体勢のせいで彼が上目遣いになるのが罪深い!!でも分かる、これは計算でしていると!!ああもう、美の暴力はやめてくれないかなあ?!なんて考えていても、彼は着実に反対の手を不埒に動かして腰とおしりを怪しく撫でているではないか!!ちょっとまずくない?!
「……サラ、嬉しいよ。本当に俺は幸せだ。もちろん俺も大好きだし愛してる。気が狂う程に愛してるんだ。でも思いを伝えてくれてありがとう。知っていたけど、改めて両思いだと分かると猛烈に欲しくてたまらないなあ?もういいよね?だってサラは俺に食べられに来たんだからさ。はああ……いい匂い。」
やばいやばい!!!途端に目がギラギラとして、神秘的な瞳は一気に獰猛な肉食獣のそれに変化した。アワアワとしてももう遅い、私は飛んで火に入る夏の虫。とにかく思いを伝えなきゃ、というそれを優先した結果この時間になっただけなんだけども!!でも今回は私が悪いな!!ぐぅぅ……!!だからパッとベッドに転移して、押し倒された状態で上から獰猛なベル様に見下ろされながらも、顔を真っ赤にして必死に伝えたのだった。
「ど、どうか優しくしてくださいっっ!!」
すると途端に破顔して、嬉しそうに深い口付けをくれながら合間に彼が呟く。
「かわいいかわいい。愛してるよ、俺も初めてなんだ。閨教育は座学だけ。向こうの世界で経験がある事が本当に憎いけど、そんな事は思い出さない程にたくさん愛して愛して愛してあげる。」
うっとりした声を出しつつ、首筋を時折痛く吸いながら舐めるベル様が言う。ヒエエッ!!お手柔らかにーーー!!!
という私の悲鳴は誰にも届く事はなく、どっぷり優しく執拗にたくさん愛されてドロドロに疲れた私は、次の日当たり前だけど起きられなかったのだった。
この事に逸早く気づいたヤナが飛び込んできたけれど、事後のため打つ手は何も無く。悔しそうに叫び声を上げながらベル様と口論しているのが、ただただ面白くてずっと笑っていた。
ねえサラさん、貴女が私を呼んでくれたお陰で、こんなにもたくさんの人に愛されてるよ。ベル様もアンディも、ヤナも両親も、惜しみなく愛をくれるなんて、すごく幸せだね?ポコポコと胸が温かくなり、そっと優しく撫でて微笑んだ。ふふ、貴女も嬉しいんだね。こうしてずっと一緒にいて、2人でたくさん幸せになろうね。
そう思いながら、未だに喧嘩を続けているベル様とヤナを見て、遂に声を出して笑ってしまったのだった。だってあまりにも幸せだ。元の世界がどうなって、私の身体も不明だけれど、そんな事は忘れてしまおう。例え薄情だと言われても、私はこの世界で大切なものを見つけて、ここで生きたいと強く思ったのだから。
声を出して笑った私の元に、ベル様がパッと来て抱きしめてくれた。初めてどうしなのに、そうとは思えないような技術で追い詰められたせいで腰と股関節が痛いから動けないけれど、そんな状態の私が嬉しいらしい彼が嬉々としてギュッと抱きしめてくれる。だから遠慮なく擦り寄ると、「この世界に呼ばれて良かった。」と呟いたのだった。それにうっとり微笑みながら、彼はボソリと何か言ったけど聞き取れない。まあ後で聞けばいいよね、と思った私は、怒り続けるヤナに謝りながら再び瞼を閉じたのである。ああ、温かいなあ。幸せ……。
「……愛してるよ紗良。俺の運命、俺の片割れ。異世界にいる君を、サラ嬢が見つけるように仕向けておいて良かった。愛してる、逃がさないよ。ずっとずっと一緒だ。」
終わり。
初の異世界物でしたが、なんとか書き終える事が出来ました。
心が折れそうでしたけれども、ブックマークやリアクションを押してくださったり、そして感想をくださって、ありがとうございます。
お陰でどうにかここまで来られました。
お読みいただき、大変感謝申し上げます。
また別の作品でも応援していただけましたら幸いです。




