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帰還

「土を掘りかえしましょう」


国境付近の川に建てた砦跡に本格的な城壁を作る事が検討され、川の水深も下げる事が提案された。


「川中での作業は大変だぞ」


水を一時的に止めれば掘り返す事は可能だろうが、流れ続ける水を止め続ける事は出来ない。


「私達ドラゴン一族がその役目を担います」


他の魔族達より体格は大きく力も強いドラゴン達が一斉に掘り返すなら容易いな。


「頑丈な城壁も難しくないか」


「エルフやサキュバス達に手伝ってもらいましょう。岩を切り出して貰った物をジャイアント達やサイクロプス達に運んでもらえば大丈夫でしょう」


「ミノタウロス族も忘れないで欲しいもぅ」


ドラゴンの次に巨体である3種族の力を使えば岩を運ぶ事は簡単だという。


「岩を積み上げただけだと城壁としては役に立つのか?」


「ドワーフ達に頼みましょう。彼等は火と土の魔法に長けています」


「わかった。詳しい計画書はお前の方でやってくれ」


「はっ!」


フブキを人間側に送り込んだ後に急ピッチで魔族の全体的な軍事力強化を図る為に動き出した。


ドラードは次期竜王という事もあり有能だった。


魔王城にいるサリーナと連携を取り合って人材派遣、物資輸出等を上手く回してくれている。


暇そうにしている魔族が居れば何処かに派遣して手伝わしている。


魔族全体が種族繁栄の為に一丸となり動き出した。


「凄いわ・・・これが魔族の動きなのかしら」


数年前は300の魔族しか動かせなかったフレアは城下町にいる数千規模の働く魔族達を見て感動を覚える。


「俺が居なくなったらお前が総指揮をするんだ。ドラードやサリーナにも言ってある」


「私に出来るかしら?」


「やるんだ。その為にバホメットに帝王学を教育させているんだからな」


「う、うん」


「仮にも魔王の娘だ。王としての素質はある。それともドラードに魔王になって貰うか?」


竜王としての自覚のあるドラードは魔王へ最も近い存在だ。


「それは、イヤよ! 父様が残してくれた物よ」


「誰かに盗られないように気を付ける事だな」


「魔王様、次の会議の準備が整ったで御座るよ」


「直ぐにいく」


踵を返して、会議室へと足を向ける。


冬の国でやる事はまだまだ沢山ある。


「で、あるからして」


「お前達、ちゃんと聞け」


本来肉体派であるガルゥ、ドラゴ、ミーノンがドラードの説明中にウトウトし始めた。


「にしてもよぉ、俺様達は肉体労働派なんだぜぇ」


「小難しい話は分からないでござるよぉ」


「そうだブモォ」


「フレアが未熟だからお前達にも少しは魔王としての動きを教えてサポートして貰うんだ。少しでも理解者がいないとドラードが全部仕切る事になるぞ」


「それは、それで癪にさわるな」


「拙者達よりドラード殿を推すで御座るか」


「頑張るブモォ」


新参者のドラードの指揮下に入るのは嫌な様子だ。


「続けますよ」


四天王の内、頭脳派なのはサリーナだけであり。


魔王城だけなら1人で回せていたようだが魔王軍としては難しいと判断した俺はドラードには他の3人にも四天王としての役割を叩き込んで貰っている。


魔王の下に着く4名の王、名ばかりではなく準王としての頭脳をもって貰うしかない。


この魔王軍の弱点は最強であった魔王を失っただけではなく有能な指揮者がいなくなり魔王軍として形成できなくなったのが大きい。


だから、人間軍に圧倒されてしまったのだろう。


戦いだけが全てではないという事を叩き込み、普段の生活を送れるように指導してもらう。


それは俺の役目ではあるが、この世界の事は極力この世界の住人から教えないとダメだ。


「魔王様、ガトリング砲の試作品が出来上がりました」


ザッツが故郷へと帰っていったが、ホビット達に魔法銃の改良を頼んでいたら思いの他早くガトリング砲の試作機が出来上がった。


「魔王様の注文の通り、このハンドルを回し続けると」


ガラララララッ


魔道弾は入っていない連結式ソケットがガトリング本体に入り込み、出て行った。


「連続使用200発が限界ですよ。距離もボウガンと変わりません。それでは連射させてみます」


ドルルルルルッ


魔道弾が入ったソケットに収まった物が同じ動きをしてガトリング砲に入って連射される。


シュゥウウッ


ガトリング砲の銃身が真っ赤に染まる。


「鋼鉄製でも耐久力はそんなに無いです。銃身を冷やさないと再使用が出来ませんよ」


「それで十分だ。改良は後世に託すとして、防衛能力の強化が最優先されるからな。親方に量産の指示を出しておく」


「魔道弾作成要員を増やしても良いですか?」


「構わない。ドラードに言っておこう」


200発の連射、並行で動かせば強力な兵器と化す。


「クラスター爆弾の方はどうだ?」


「魔道での再現は難しいです。小魔石では大した爆発は起こせません」


弾を飛ばす分には小魔石で十分だが、クラスターに使うには威力不足か。


「小魔石を入れる量を増やせば再現は可能かと」


「コストがかかり過ぎるな・・・その計画は凍結させてガトリングについて続けろ」


「承知しました」


「応用できそうなアイデアが在ったらガンガン言ってくれ。ここを守るのはお前達なのだからな」


俺は時々この言葉でそれとなく居なくなる旨を伝えている。


フレアにも魔王として自身で考えた指示を配下に出してみるように訓練を施す。


俺が居なくなってもこの世界で生きれる様に知識を広め安全を確保できるようにする。


「国境長砦が完成したか」


何千と言う魔族が建造に関わり秋の収穫時期前に完成を果たした。


これで、容易に人間達が魔族領へと入る事は叶わなくなったな。


防衛に必要な物資や人材を送り込んで安全確保の一歩が完了した。


ドンッ


「魔王様、そちらは?」


「俺が思うこの国に足りない物の企画書だ」


残り1年、おそらく全てを叶える事は出来ないだろう。


だから書面として残し此処にいる連中に判断して貰おうと思って作り上げた。


「これは、凄い量ですね。数十年は掛かりそうな位にはあります」


企画名と大体の概要でしか表現しておらず、細かい事は全く記載していないアイデア集の様な物だ。


「魔族は力の有無が顕著だからな・・・」


一旦はドラードに預けておく。


「残りは大規模な部分だけは終わらせていく」


パタパタパタッ


コンコンッ


執務室に白い鳩が窓ガラスを突いてくる。


ガチャッ


中にいれて脚についている手紙を取り外す。


「向こうも順調だな」


フブキの方も無事に帰還を果たして人間達を押さえている事に成功した報告が上がってきた。


「ラストスパートだ」


それからは魔族達の生活水準向上を目指して様々な企画を打ち立てて作り上げていった。


カチカチカチカチッ


砂時計の召喚可能時間が迫ってきていた。


「これで妹に」


フブキは第二魔王城へとやってきていた。


「フレア、今日を持って魔王の称号を渡す」


ブワッ


俺の中に在った魔王の称号が魔力に返還されてフレアの中へと入っていく。


「これで私が本物の魔王に」


「その力は巨大だ。振り回されるなよ」


「分かってるわ」


「皆もフレアを支えてくれ」


「畏まりました」


「任せろ」


「了解よぉ」


「承知で御座る」


「任せて欲しいブモォ」


「次期竜王として恥じないように致します」


「あの企画書については任せて」


バホメット、ガルゥ、サリーナ、ドラゴ、ミーノン、ドラード、ザッツ達が返事する。


カチンッ


ブワァッ


秒針がゼロを指示して足元に魔法陣が浮かび上がる。


「時間だ。この5年間、楽しかったぞ」


「「「「「「「お世話にな(りました/ったわ/ったぜ/り申した/ったぶもぉ)」」」」」」」


「フブキ、約束だ」


「あぁ。俺を妹の元へ連れて言ってくれ」


フブキの手を取り俺達は魔法陣に飲み込まれていく。


召喚された時と同じで光が満ち溢れる召喚穴が暗闇へと転じる。


世界と世界を移動する際に発生する現象だと判断する。


「アリア、これは?」


「世界を越える穴だ」


ブワッ


暗闇の中で光り輝く球体へと近づいていく。


「アレが、アリアの住む世界」


「ここは世界の裏側から見た光景だ」


ズッ


ヒュォオオッ


召喚陣から出されて俺達は空へと吐き出された。


「飛翔!」


即座にフブキが魔法を使って飛ぶ。


「飛行」


バサッ


俺も翼を広げて浮かび上がる。


「5年振りだな」


眼下に広がるアリアンロッドを懐かしむ。


フッ


アリアン城から凄いスピードで2つの黒点が近づいてきた。


「アリア様ぁ!」


ドッ


アキラが俺に突っ込んできて物凄い衝撃が背中を抜ける。


「アリア様、ご無事で」


シズカが俺達の近くまで近づいて正反対の反応をしている。


「久しぶりだな」


「アリア様が居なくなって随分探し回ったんですよぉ」


大粒の涙を流しながらアキラは俺が居なくなってから世界中を探しまわったようだ。


「すまないな」


泣き続けるアキラの髪の毛を優しくなでる。


「アリア様、こちらの方は?」


「あぁ、紹介しよう。アキラ、お前なら分かるな?」


「ふぇ?」


アキラは体を話して俺の隣を飛ぶ男に向き直る。


「お、お兄ちゃん?」


「アキラ・・・なのか?」


フブキはアキラを見て驚愕の表情をしている。


「なんで、お兄ちゃんがアリア様と一緒に居るんですか?」


ちょっ、お前・・・目のハイライトを消して見るな。


「アリア、お前! 妹に何をしたんだ!」


「アリア様を呼び捨てにぃ?」


「ハイハイ。よく分からないけれど城に戻りましょう」


シズカによって俺達はアリアン城へと戻る事にした。


「アリア様、お兄ちゃんと・・・なんで居るんですか?」


「今更かよ・・・順を追って説明する」


フブキは異世界で光の勇者をやっていた事を手短に話す。


「お兄ちゃんも光の勇者だったんですね」


「も?」


「私も光の勇者だったんですよ。今は魔族をやってますけど」


「それが聞きたいんだ。なんで魔族になってるんだ?」


「いやぁ、私も昔は光の勇者なんてチヤホヤされててアリア様にコテンパンにされましてね」


「で?」


「アリア様に頼んで魔族になっちゃいました! てへっ」


「アリアぁ!」


パシッ!


フブキが怒りで俺に襲い掛かろうとするがシズカとアキラに阻まれる。


「アリア様は私の守るべき存在です。いくらお兄ちゃんでも許しませんよ」


「第九魔王であるアリア様に手を触れる事は許しません」


「どうせ、負けている身だ。妹に会わしてくれただけ救いだ・・・これで未練もない」


「といっても、殺す気は無いんだがな」


「なんで?」


「種族は変わってしまったけど兄妹なんだろ。そこの所は話し合え」


「あんっ!」


「俺達は何時までも待っていてやる」


5年振りにシズカの体を堪能させて貰おうとするか。


「先輩、早く話し合った方がいいわ」


「ぐぬぬっ。行きますよお兄ちゃん」


「あ、あぁ?」


アキラに連れていかれるフブキを見送り、俺とシズカは寝室へと入る。


フブキがアリアンロッドに暮らす事を告げに来たのは翌日だった。


こうして5年と言う異世界生活は幕を閉じた。

これにて「脆弱から始まる吸血姫<TS転生して最強にいたる>」は終了となります。


ここまで、見てくれてありがとう御座いました。


2作品目に比べて質が落ちてしまったようですが、思うが儘に書かせていただきました。


3作品作ってみての感想としまして、キャラがブレてしまう現象は難しいですねぇ。


では、4作品目でまた会いましょう。

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