冬の国侵攻③
夏の終わり頃に黒色火薬が完成を迎えて実験がてらエルフの隠れ里へとやってきた。
「紅玉、行くぞ!」
導火線に火をつけて黒色火薬が詰まった玉を夜空に投げる。
ドォオンッ
夜空に紅く輝く火花が散った。
「これが、花火ですか」
黒色火薬に石灰岩の粉末を調合させて小さな玉を幾つも作り1つの玉へ綺麗に丸くなるように入れさせた。
火薬の爆発力が周囲へと伝わり、高温が混ぜた石灰岩の粉末を焼き紅く輝かせていた。
「とても、綺麗ですね」
木々の間から顔を覗かせているエルフ達からも歓声が上がった。
「次、黄玉だ」
ドォオンッ
黄色い花が夜空に咲く。
花火は出来上がったが打ち上げる物が無く、1つずつ投げ上げている訳だ。
遥か上空まで到達するから森に火の粉が落ちる事は無い。
「これで火縄銃や大砲にも使えるな」
爆発力は申し分なく次なる戦争に使えると口が緩む。
エルフの里で行われた黒色火薬の実験を期に大きく動き出す。
その爆発力を一点に集中させる武器の開発をドワーフへと依頼する。
パァンッ
小さな黒色火薬玉を破裂させてドワーフの親方に見せる。
「なるほど、コレを筒でか」
図で説明をして試作品を作ってもらう。
「こんな物か?」
僅か1時間で試作品の火縄銃が完成する。
「試しに」
「お待ちください。私がテストします」
ドラードに止められて試作火縄銃を奪われる。
「火薬を入れて、玉を込めるんですね」
「あぁ」
サラサラサラッ
カシュッカシュッ
火薬を入れて金属の棒で圧縮。
更に小さな玉を入れて詰める。
シュッ
火縄に火を灯して構える。
パァンッ
バギッ
「っつ!?」
火薬の爆発力に鉄筒が耐えられず破裂した。
それがドラードの顔を傷つける。
「大丈夫か?」
「なに、これ位。魔王様が怪我するよりもマシですよ」
なんだ、このイケメンは?
と思いながらヒールで顔の傷を癒す。
「鉄が爆発力に耐えられんかったようだの。作り直してくるわい」
「完成したら呼んでくれ。ボウガンの方はどうだ?」
「軽量化は終わったわい。アレなら子供以外なら引けるじゃろう」
「そうか」
重心も安定したスマートになったボウガンを見せられて試射して納得する。
「銃の開発と大型にした大砲の開発を急いでくれ。暇な連中にはボウガンの量産しエルフの里へ」
エルフ達の弓術は普通の魔族がやるより命中率が良い。
「あの耳長が?」
「火薬もエルフ達の作り出した物だ。ポーションもな」
魔王領全域に渡るポーションはエルフ達が作り出した薬だ。今までは秘匿されていた。
「知らぬところで合作を作り出されていたとは」
「仲が悪いんだな」
「あんな、ひょろっとした連中がなぁ」
どうやら心底嫌いという訳ではないらしい。
「頼んだぞ」
「おうよ」
一旦城に戻る。
「今年も大豊作の様だな」
「去年と比べて肥料を増やしたからねぇ」
畑の統括者としてサリーナに任せている。
黄金に輝く小麦が今年も広がっていた。
今年は去年採取した腐葉土を畑に混ぜ込んで一層と濃い小麦が出来上がった。
「製粉工場が出来て、初めての稼働なのよねぇ」
手で行ってきた事を全て自動化する工場を夏の間に作らせていた。
流石に刈り取りや日干しの部分は人手が必要だが、運び入れさえすれば小麦粉まで自動製粉してくれる。
「昨年分の備蓄と合わせて今年こそはあの国を奪うぞ」
「遂に準備が整ったのねぇ」
周囲の魔族達との関係は良好だ、冬の国から引っ張ってきた魔族達も受け入れてくれている。
「収穫が終わり次第、あの国を奪うぞ」
こうして第3回大侵攻作戦が始まった。
1年で戦力が回復して新たな武器を手に向かう。
冬の国に残った戦力は殆ど居なく、避難も出来ない村や町を潰していく。
「あの山から硫黄を」
途中で火薬の原料が尽きても周囲を探索して使える物は使っていく。
「この川から先は隣国なんだな」
「へ、へい」
捕らえた兵士から情報を聞き出す。
「そうか」
ズブッ
「そんな、生かしてくれると」
「魔族にそんな約束が通じると本気で思っていたか」
本格的に雪が降り始める前に冬の国が完全に魔王軍の手に落ちる。
「雪が来る前に砦を建てるぞ」
冬の国に面している隣国は2つ、国境付近に簡易的に砦を建てて防衛線を張る。
ヒュォオオ
去年、人間達の手によって崩壊した王都跡へとやってくる。
「魔王様、ここには何も残ってないかと」
後ろに控えているドラードから進言される。
「まぁ、見てろ」
ザッ
ボワッ
魔力の放出を始める。
「時を戻れ、逆行!」
ブワァアッ
俺の全魔力が王都跡へと降り注ぐ。
ゴゴゴゴッゴゴッ
時間が経つにつれて防壁が王都が城を成していた瓦礫が浮かび上がり元の姿を取り戻そうとする。
ズシャッ
魔力を空っぽにして両膝を着く。
ハァハァハァッ
「魔王様!? お気を確かに」
グッ
ドラードに肩を借りて立ち上がる。
「ここを第二魔王城として機能させる。四天王達を集めよ」
「その前に休める場所へ」
人の居ないの王城へと連れていかれて使えそうなベッドに横たわる。
「魔王様は無茶をなさる」
「拠点がなければ動けないだろう・・・」
「これを」
真っ赤な液体の入ったグラスを受け取る。
「旨い」
「搾りたてですからね」
「そうか」
捕虜には男も知らぬ少女達も居たな。
「魔王様はヴァンパイアと聞き及んでいます。必要かと思い」
「あぁ。出来れば見目麗しい奴を見繕ってくれ」
「ドラゴンの目にはどれも一緒に見えますよ」
「種族によって美意識は違ったな・・・サリーナを呼べ」
アイツなら同じ美意識を持っているだろう。
「はい」
ドラードが出て行く。
「で、魔王様。これは一体?」
ガルゥがジト目で見てくる。
「気にするな」
ベッドには見目麗しい少女たちが息を荒くして横たえていた。
「そういう事は後にして欲しかったで御座るよ」
「うらやましいブモォ」
「仕方ないわよぉ。魔王様は定期的に純潔の血を摂取しないとダメなのだからか」
「会議は明日する。お前達も今日は休め」
四天王には下がらせて2回戦目を始める。
「さて、冬の国を手に入れて魔王領が広がった訳だがこの土地を運用するには手が足りない」
魔王領と同等の土地を手に入れる事ができた。
本格的に冬が始まり遠征に来ていた魔族達は最低限の見張りを残して王都へと集める。
元々人間達が住むサイズ故に大型の魔族達は城の広い場所で寝泊まりさせている。
その内、魔族サイズに変えないとダメだな。
これから起こる事を想定して計画を冬の内に立てる。
「薪が殆ど必要ないのは良いな」
北国出身である魔族達は体内にある魔力で体温を高く出来る性質を持っているらしく。
部屋を暖めなくても普通に活動できる。
寒ければハルピュイアと一緒に寝れば良いという事にも最近気が付いた。
「今回の戦いでは銃や大砲は使わなかったのは大きいな」
壁を破壊する必要性も無く殆どは従来の戦争で勝ち続けてきた。
「来年から大規模な畑を作り出す。空襲部隊には各地に飛び地形の確認を」
「野生の動物たちは?」
「食う分だけで良い」
数万という魔王軍を維持するには魔王領で取れた小麦では出来ないと思い大規模農場を作る計画が立てられる。
既に故郷へと帰らせた魔族もいるが前線を維持するには常備軍は必要だった。
砦建築組を除いた魔王軍は各地へと派遣して日々の糧を狩りに向かわせる。
川の近くに農場予定地を決めて水路を張り巡らせ、水を汲む無駄をなくさせる。
魔王領にいる故郷へ戻りたい人間を募り1つの村を任せてみるのも忘れない。




