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魔王城下町

春が訪れて雪が溶けきった後に計画が動き出した。


山脈に囲まれた盆地に水が流れ込む。


土の中に眠っていた雑草達が芽吹き草原を生み出していった。


カンカンカンっ


森から木を切り倒して家を次々に作り出す人間達と食料確保のための畑作りをする人間達で分かれて動き出す。


冬の間に農具や工具は用意していた為、着工には時間は掛からなかった。


「ここもダメだな」


畑予定地だった場所は水はけが悪くぬかるんでいた。


山から流れる水が広範囲に広がったのが計画を頓挫させた原因だった。


「畑より河川を作らないとな」


盆地の一箇所に向けて雪解け水が流れ込み湖を作り出しているが周囲から流れ込む水で土地全体がぬかるんで畑を作れる環境では無かった。


計画を練り直す必要が出て来た・・・


「まずは水が流れ込む際に水路を作り、湖へと流し込むのが先だ」


「どうやってするのかしらぁ?」


「森と草原の境目に溝を掘る。水は流動体だから無い所へと流れる習性がある。幸いに湖の方が低い位置にあるから流れ込みやすい」


「水はあの湖から汲んで来ますからな」


「あれだけあれば水には困らないだろう」


「土属性魔法が得意な奴を集めよう」


なにも力だけではなく魔法に特化した魔族もいるからな。


主にサキュバス達が魔法に特化していて各地へと割り振って溝を掘らせる。


当然、力のある魔族にも手伝ってもらう。


「これが、魔族達の力だな」


人間には無い怪力と魔力で溝が掘られて水が流れ込んでいく。


水が流れ込まなくなった事でぬかるんでいた土地は乾き、いい塩梅になった。


畑作りへとようやく立つ事ができる。


ここでもサキュバス達が活躍し土を柔らかくして怪力の魔族達が土を耕していった。


一方、人間達は難航していた。


非力で魔法使いの一人も居ない事で何度も鍬を土を耕して少しずつ柔らかくしていっている。


バサッ


「来たか」


ドラゴンの一頭が魔王城へとやってくる。


予め竜王に頼んでいた物が到着した。


「確かに受け取ったぞ」


袋には大量の貝殻が入っていた。


海辺に近い竜王の土地に貝殻を集めるように依頼していた。


ガンガンガンガンッ


ゴリゴリゴリゴリッ


貝殻を砕き粉末状にして畑に撒く。


ここの土地はやせ細っていて普通に育てるには向かない。


それは農民が多い村人たちから聞いていたから対処できた。


他にも高い山脈が日陰を作り育ち辛い場所もあり制限された。


ゴロゴロゴロッ


分厚い雲に覆われていて太陽光が届き辛いのも魔王領の悪い所だった。


逐一、アーガルム砦と連絡を取って人間達の侵攻が無い事を確認して魔王領を少しでも発展させるよう動く。


国を追われた人間達が魔王領へ流れているのも確かで徐々にその数を増やしているのも把握している。


「魔王様。これ以上、人間達を入れる訳にはまいりませんぞ」


魔王領は狭く人間達を無尽蔵に受け入れる事は出来ない。


「アーガルム砦に通達しろ」


「はっ!」


すでに200名を超えた頃でこれ以上は入れられなくなった。


魔王城周辺には住める土地より畑の面積を多く取っている。


「魔王様ぁ、怪しい人物が紛れ込んでいるわぁ」


サキュバス達から報告が上がってくる。


ある程度の感情を読み取れるサキュバス達は人間達の持つ憎悪やらを感知できるらしく怪しい人物をピックアップしてくれた。


流石悪魔系の魔族だなと思う。


俺には無い所を埋めてくれるな。


「泳がせておけ・・・何かするならガルゥ達が動け」


「任せておけ! そいつ等は食って良いんだよな?」


「好きにしろ」


「何かあったら報告させるわぁ」


定期的に会議を開いて、地盤を固めていく。


「何? 再侵攻だと」


春が過ぎた頃に竜王から告げられた。


「うむ、冬が明け。士気が上がっているのである」


「駄目だ」


「何故である?」


「先の戦いは勢いだけで突き進んだ結果だ。お前の武技アーツ:激竜破を防いで見せただろう」


「しかし、魔王殿が居れば」


「俺が攻め時ではないと言っているんだ」


「魔王殿よ臆したか」


「違うと言っている。俺は魔族全体を把握しているわけではない。攻めるなら一致団結して向かわなければ大敗を味わう事になるぞ」


「なら、私に指揮させて頂戴」


「おぉ、先代魔王の娘フレア殿か」


「お前な・・・コレは子供の遊びじゃないんだ」


「分かっているわ。でも、私だって役に立ちたいのよ。好きにしても良いって言ったのはアリアよ?」


よく覚えていたな。


「好きにしろと言ったが、兵を貸すとは言っていない」


「私に付いてくる魔族ならいいでしょ?」


「お前が集めて行くのか?」


「そうよ! これでも父様の娘ですもの」


一体、どこからその自信が湧き出てくるのやら。


「バホメット」


「はっ!」


「お前が副官を務めろ」


「なっ!? 姫様だけに行かせるのかよ。俺様達も出してくれよ」


「お前達はダメだ」


「な、なんでだよ」


「駄目だ。これは命令だぞ」


ズンッ


他の四天王達にも分かるように伝える。


「竜王、お前も行くことは許さん」


「仕方が無いの」


「フレア、これは遊びではないと思え。人間達は決して弱くはない。少しでも奢ればお前は死ぬ。それでも行くのか?」


「行くわ」


「バホメット、万が一があれば」


「畏まりました」


「ガルゥ、お前はアーガルム砦で後詰だ。勝手に出て行くことは許さんぞ」


「お、おぉよ!」


冬の間はずっと城に籠りっぱなしだった。少しはガス抜きも必要だろう。


ガルゥ達、猛獣系魔族達はアーガルム砦へと向かわせ。


フレアとバホメットは再侵攻する魔族達を集めに向かった。


「魔王様ぁ。フレア姫に何を教える気なのぉ?」


「恐怖だ」


「恐怖? 負ける前提なのかしらぁ?」


「あぁ、戦を知らない指揮官が何の役に立つ?」


「バホメットも居るのよぉ?」


「バホメットに頼り切りでアイツが納得するか?」


「しないわねぇ・・・」


何を焦っているのか分からないがフレアは魔族達を集めて人間領へと攻めていく。


「3000か。中々集まったな」


先代魔王の娘としての人気と前回の勝利した事で魔族達は集まった。


「バホメット、何度も言うが」


「承知しております」


「行け」


3000の戦力で何処まで行けるかは分からないが見守っておくとしよう。


様々な種族が入り混じった混成軍を率いて人間領へと向かう。


「アーガルム砦を通過か」


数日後にはアーガルム砦を通過して人間領へと侵入して行ったと報告を受ける。


・・・


「やはり大敗したか」


1週間と絶たずにアーガルム砦から大敗した混成軍が戻ってきたことを受けた。


生き残った魔族達を退かせる為にガルゥ達には追撃してきた人間達の相手をさせている。


「魔王様、フレア様が」


バホメットは怪我を負ったフレアを抱えて魔王城へと戻ってきた。


「ハァハァハァ」


血の気が失せて荒い息を繰り返すフレアがベッドに横たわっている。


「どうして・・・なの」


「言う事を聞かなかったようだな」


混成部隊とはいえ魔族達のはフレアのいう事を聞かずに暴れまわったとバホメットから報告を受けている。


「私じゃ、ダメなの・・・」


「お前には統率者としての力が無い」


「父様の様にはできなかった・・・」


「お前は何を焦っていた。父親のような魔王になりたかったのか?」


「そ、そうよ・・・でも」


「たった3000の魔族を従えられないのだから。魔王になるには夢のまた夢だな」


「魔王のアナタに何が分かるのよ! うっ!」


「姫様、怪我をしているのですぞ。安静に」


「クククッ」


「何が可笑しいのよ」


「お前は一つ勘違いしている。俺が元から魔王だった訳ないだろう」


「魔王だから召喚に応じたんじゃ」


「召喚時は魔王として君臨していたぞ。だが、最初から魔王では無い」


「じゃあ、何なのよ」


「元はドラゴンとヴァンパイアのハーフヴァンパイアだった。魔法の一つも覚えていない赤子のな」


俺は魔王へ至った経緯を話してみる。


「下級魔族から魔王へ至ったなんて」


「このバホメット感服いたしましたぞ」


「お前のように赤ん坊の頃、守ってくれる者もいなかったからな。環境が違った訳だ」


「・・・」


「お前に足りないのは総合的な力だ。それを知らずに飛び出して功を得ようとしても無駄だ」


「・・・」


「バホメット、お前は先代魔王から何か託されているんだろ?」


「姫様を頼むと」


「お前は上級悪魔だ。様々な世界を見てきた・・・そうだろ?」


「え?」


「はい」


「その知識の一端をフレアに施せ」


「宜しいので?」


「あぁ」


「畏まりました」


フレアの部屋を後にして戦後処理をする。


生き残り帰ってきたのは200名程、大敗も大敗だ。


混成部隊の大敗については瞬く間に魔王領全体に轟く事となった。


それは魔族全体の士気を下げる効果を持つ事となった。


「大負けじゃったな」


「俺様達がいなければ」


「やはり拙者等もついていくべきでござったか」


「姫様、可哀そうだモォ」


竜王も含めて玉座の間で話し合う。


「こんな物だろう。所詮は烏合の衆。指揮官次第になる」


「魔王様は辛辣だぜ」


「もっと優しい言い方も御座ろう」


「先の戦いと今回の違いは何だと思う?」


「「「?」」」


「連携力、統率力じゃな」


3人の代わりに竜王が答えた。


「あぁ。先の戦いはこの2つが揃っていたから王都まで行けた。四天王に加え竜王の纏め上げる力があったからな」


「そりゃ、そうだろう」


「お前達を行かせなかったのは戦う時期ではないと判断した。戦に必要なのは何も力だけとは限らない」


「力以外で御座るか?」


「食料問題だ。前線が長くなれば補給路も長くなり進軍速度が遅くなる。奥へ進めば周囲は人間達に囲まれる」


「そんなの奪えば」


「奪った食べ物を口にして死んでいった同胞を見て来ただろう。人間とはそういう事もやってくる」


「卑怯だモゥ」


「卑怯じゃない。戦争時における戦い方は単純ではないのは先の戦いで知っただろう」


町一つを犠牲にした焦土作戦によって戦力が減ってしまった。


「今は攻め時ではない、まずは内部を整える。竜王の協力を得たい」


「もちろんじゃよ」


「この地はサリーナに一任する」


「分かったわぁ」


「俺は各地を周囲の魔族達の様子を見てくる。留守の間は頼んだぞ」


俺は山脈の外側に住んでいる魔族達に会うために城を空ける事にした。

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