召喚獣魔闘大会③
「あっちが予選大会の会場だ」
ルーの案内の元、王都の至る所へと足を運んでいた。
翌日から各地にある中等部学校から集められた選手たちが集い闘う場所を最後に案内される。
基本的には中心には闘技場が置いてあり観客が見れるように周囲を囲んだ広い場所だ。
すでに似たような少年少女たちも来ていて中を覗いている。
「予選は誰でも見る事が出来るからアタシたちも楽しみなんだ」
予選の場合は盛り上がる事は無いが普段娯楽も無いスラム街に住む者達にとっては唯一の娯楽と言っても良い。
「本戦はお金が掛かるからさ・・・でも凄いって言われている」
中等部の勝ち上がってきた選手たちが集まる一段階レベルの高い戦いが見れるのだろう。
それに王都にある高等部の生徒達も参戦して良い娯楽にもなっているのだろう。
召喚獣魔闘大会というのは王都を活気つかせるのにも利用されているようだ。
「やっぱりドラゴン使いは俺だけじゃねぇか」
肩に小さなドラゴンを乗せている少年をみて呟くブルング。
「縮小化なんてブリューナクにも出来ないぞ」
本来は数十メートルになるドラゴンが子ドラゴン並みにサイズを調整していると見抜く。
それだけで強いと思っている様だ。
「アリアはどう思う?」
「アレか? 勝てない相手ではないぞ。あっちも若いドラゴンだしな」
「これだから魔王様は余裕しゃくしゃくでいらっしゃるなぁ」
ブルングが嫌味を言う。
「ま、ま、まっ!」
それを聞いていたルーが俺を指さして固まる。
「まお!むぐっ」
何かを言う前にアンロッドが口を塞ぐ。
「駄目よ。それじゃ面白くないじゃない?」
ニコッと笑いルーがコクコクと頷く。
「プハッ・・・魔王って本当の話?」
「えぇ」
「コイツ、魔王を引き当てやがったんだぜ。ずりぃよな」
「私に言われてもね」
「おとぎ話じゃなかったのか」
「本人が居るから」
「じゃ、じゃあ、絶対優勝できるじゃん」
「物事に絶対という物は無い」
「でも、強いんでしょ?」
「絶対に勝てると言う保証は無いが負けるとは思っていない」
「俺のブリューナクも完敗だったからな・・・本当にアリアより強い魔王が居るのかよ」
「居るのは確かだ・・・どうした?」
「なんでもないわ」
アンロッドの感情が揺れたのを感じたが一瞬だけだった。
「次は屋台街を案内して」
「わかったよ。こっちだ」
ルーが先導して屋台街を練り歩く。
主に食べ物を購入して食べ歩く。
「ここはとっておきの場所だ。食べ物に困ったら分けてくれる優しいおっちゃんの屋台が」
ニコニコとルーは笑って先頭を歩く。
バッ
「むぐっ!?」
屋台との間から人が飛び出してルーを抱きかかえて路地裏に消えていった。
「「ルー!」」
アンロッドとブルングの2人が追いかけようとするがルーを攫った人影は既に無かった。
「これ」
路地裏へ入る手前に手紙が置いてあった。
『この娘を返して欲しければ、夜7時にスラム街の廃教会へ』
「どうしてルーを」
「あの顔」
一瞬だが見たことのある横顔だった。
「まだ、追いかければ」
「駄目だ」
路地裏に入ろうとするアンロッドの手を掴む。
「なんで!」
「夜7時まではルーの安全は確保しているだろう。それに路地裏には他の悪意も潜んでいる。二次災害になるのだけはダメだ」
「見捨てるの!?」
「見捨てないさ。誰を相手にしたか知ってもらう」
「アンロッド、ここは任せようぜ。俺達じゃ手に負えない」
「・・・くっ」
出店街から離れて宿へと戻る。
「いるんだろ出てこい」
「バレてたね」
路地裏からが出てくる。
「あの制服は」
「飛竜隊の」
どうやら有名な制服らしい。
2人が即座に警戒を解いた。
「今回の件、あっちが先に仕掛けてきたんだ。文句はないだろう?」
「できれば衛兵隊への報告とかして欲しいななんてね」
「スラム街の少女を救出するのに動いてくれるのか?」
「まぁ、難しいよね」
「なら、自分たちで動くしかないだろ?」
「本当は非番なんだけどさ・・・僕が一緒じゃダメかい?」
「制服着て非番って言う方が無理あるぞ」
「これでも急いで着替えて来たんだけどね。たまたま見かけてしまったからさ」
「2人は先に宿へ戻れ」
「分かった・・・アンロッド行くぞ」
「嫌だ」
「何言ってんだよ。俺達じゃ力不足だ」
「私達が関わったんだから行く」
「足手まといになるんだから大人しく宿で待っていようぜ」
「でも」
「なら、僕が2人を護衛するよ。アリアさんがメインで戦う。でいいだろ?」
「良いのか?」
「身寄りのない子供を攫ったとしても犯罪は犯罪だからね」
「2人の事任せるぞ。何かあったら覚悟するんだな」
「これでも飛竜隊の一員だからね。さぁ、お友達を助けに行こうか」
スラム街の廃教会へとやってくる。
そこには30名近くのゴロツキ集っていた。
その中で体格のいい男ががルーを人質にして瓦礫の上に座って待っていた。
「ちっ、飛竜隊にチクりやがったか」
「っても1人だけだぜ」
「お人よしかよ。まぁスラムのガキを助けようなんて奴はいねぇか」
ゲラゲラと笑うゴロツキ共。
「用件は何だ?」
「そのネックレスだ。このガキと交換する」
どうやら俺のネックレスが狙いでルーを攫ったらしい。
「本当はお前さんを味わいたい所なんだが魔族なんだってなぁ」
「へ、へい」
あの時の男達がリーダー格の男に頷く。
「なら、そのネックレスでも」
ズブッ
「んだ、こりゃぁ」
男は自分の胸から生えた腕を見て呟く。
ゴボッ
「ぐぞっ・・・ついてねぇ」
死を悟った男は瓦礫の上から崩れ落ちる。
「シャドウワープ」
人質になっていたルーと共にミハエルの所へと戻る。
「兄貴ぃ!」
「この、化け物がぁあ!」
即死した男を見てゴロツキの幾人かが武器を掲げて突っ込んでくる。
「ブラッドアロー」
ビュシュッ
近づく男達の頭を射貫き即死する。
「ひぃいい!」
「今度は逃がさない。ダークテリトリー」
ブワッ
男達が逃げ出すより先に廃教会のエリアに結界を張る。
「なんで、出られねぇんだよ!」
「くそ、お前の仕業か!!」
破れかぶれで突っ込んでくる。
「遅い」
男が反応するよりも早く動きすれ違いざまにブラッドソードで切り伏せる。
「幾ら強いからと言っても」
「同時に切りかかれば」
四方から4人の男達が飛び掛かってくる。
「止めろ!?」
「ソイツは」
「ブラッドハンド」
グシュッ
2人をブラッドハンドで貫き、2本のブラッドソードで時間差で迫ってきた男を両断する。
ビチャビチャビチャッ
返り血を盛大に浴びる。
ブジュルッ
死体から大量の血液が舞って俺の体にしみ込んでいく。
「本当に男の血は不味いな」
「ひぃいい!」
「化け物だ!?」
数人のゴロツキ達は戦意を喪失する。
「ブラッドアロー」
背を向けた順に射殺す。
「逃がすと思ったか? 誰に喧嘩を売ったのか気づいても遅いぞ」
「た、助けてくれ」
「俺はいい仕事があるって言われて」
「こんな筈じゃ」
生き残った男達が命乞いを始める。
「駄目だ、お前たちを生かしておけば後に別の被害者を生み出すだけだ」
スッ
右腕を向ける。
「アリア、ダメ」
俺の腰に抱き着くようにアンロッドが止めに入った。
「どうした?」
「これ以上殺さないで」
「なんでだ?」
「お願い」
「お願いなら聞けない話だ」
ブワッ
ブラッドアローの準備をする。
「これは命令よ! アリア、これ以上殺さないで」
ヒィインッ
首の契約紋が反応して締め始める。
「甘いな・・・」
「甘くても良い。これ以上アリアには殺してほしくないの」
「はぁ・・・お前ら、命が惜しければ喧伝しておけ。俺達に手を出したらどうなるかをな」
パリィンッ
ダークテリトリーを解除してゴロツキ達は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「お見事だね。僕の出番は必要なかったくらいに・・・でも良いのかい?」
「マスターが止めろというんだからな」
「君ほどの実力者なら契約紋を無視しても出来たんじゃないか?」
「さぁな」
「まぁ、この件は一件落着という事で報告させてもらうよ。大丈夫、悪くはしないさ」
「裏切るなよ」
「僕の事信用して欲しいんだけどな」
「最低限はな」
「悲しいねぇ。じゃ、帰ろうか」
気絶していたルーをブルングが背負って宿へと帰る。
その日を境に十数人のゴロツキが一夜にして殺されたという噂が王都へと流れていった。




