大人の事情
パラパラパラ
ここは新生レーヴァン聖王国の城にある資料室。
普通の人間が寝静まった頃を見計らって入らせてもらっている。
「ありませんね」
「ここに無いのかもな」
「誰だ!?」
巡回の兵士が持つ光が俺達を照らす前に
キィキィ
小さなコウモリに変身する。
以外にも厳重な警備体制だった。
ボッ
兵士が立ち去って実体化する。
「簡単に見つかる場所にはないみたいですね」
「あぁ」
「貴様たち、何処から!」
不意に戻ってきた兵士に俺達は見つかる。
バッ
「魅了」
「ふわっ」
目線を合わせて兵士を堕とす。
「最初からこうしておけば良かったんじゃないですか?」
「持続効果が短いんだよ」
最近覚えた魅了では10分間しか続かない。
その度に魅了を重ね掛けするのは面倒だ。
兵士が堕ちている間に他の部屋を物色する。
「グォオッ」
「良く寝ていますね」
「睡眠の毒を送ったからな」
「これですかね?」
アキラがとある資料を引っ張りだしてきた。
「勇者観察日記」
どうやら、目の前で寝ている男は勇者召喚で呼び出した子供たちに剣技を教えていた人物らしい。
パラパラパラ
読み進めていく内に前衛になりそうな人物を選出して重点的に鍛え上げていく方針をとっていたようだ。
近くの森にいるモンスターを狩らせて実践訓練もしていた形跡があった。
途中で魔法の才能を持つ者があの学院に送られている事も書かれいる。
「上位文書は・・・」
こういう事は上に報告する決まりだろう。
「これか」
引き出しを漁ると宰相宛ての報告書の下書きが見つかった。
「宰相の部屋が怪しい。行くぞ」
「はい」
広い城をアチコチへと移動する。
「これは」
「魔法の鍵ですか」
魔道具による鍵がされていた。
「見張りがいないわけですね」
「俺達には無意味な事だ」
シャドウワープでいけない所はない。
ガッ
ジリリリリリリッ
シャドウワープで入ろうとしたら魔法障壁に阻まれた。
城中に鳴り響く警報に俺達は急いで脱出する。
「なにが、『俺達には無意味な事だ』ですか!」
「あれほど強固だとは」
城中が騒ぎになっている事を感じながら俺達は学院へと戻った。
翌日、学院でも城に賊が侵入した事で噂になっていた。
「賊だってよ。度胸がある奴もいるもんだ」
「ガルム様、王族としてあるまじき発言は控えてくださいまし」
ガルムの発言を咎めるロッテ。
「あちらは、大変のようだぜ」
城住まいのバーンや周囲の人々はこの話で慌てている様子だ。
ちょくちょく、城内の情報が漏れている。
噂の中心はアイツ等なんだがな・・・
一瞬、バーンがこちらを見るが首を振る。
流石に言いがかりにはしてこなさそうだ。
理性はまだある感じだな。
・・・
ジリリリリリッ
「またですか!」
「ちょっと失敗しただけだろ」
その夜、今度は警備兵や巡回兵も沢山いたが全員を寝落ちさせた上だったが宰相の部屋に再び入ろうとして防がれた。
・・・
「この国大丈夫かよ」
ガルムは賊が連日に渡って城に侵入されたことに心配し始めていた。
「しかも警備兵も沢山配置されていても目的の場所へ到着していますからね」
「ホホホッ」
俺はあまり会話に入らない様にした。
・・・
ガチャンッ
「やっとか」
「えぇ」
3日目の夜にして魔法鍵の開錠に成功する。
ギィイッ
「待っていましたよ」
まぁ、いるだろうな。
ここまで来るのに邪魔な兵士達は強制睡眠して貰い城はシンと静まり返っていた。
宰相の部屋には本人が机に座って待っていた。
3日連続で侵入されるという事態については驚いていないようだ。
「この部屋に何の用ですか?」
メガネをクイッと掛けなおして問う。
「この国の秘密を」
「賊がどのような人物かと想像していたんですが、外れましたね。お嬢さんがた」
月明かりが俺達を照らす。
「どの様な方法で兵士達を戦闘不能にしたのか気になりますが、この国の秘密を狙ってですか」
ガシャガシャガシャッ
兵士が近づいてくる音が近づいてくる。
「アナタ達は此処までの様です。暗い地下室で余生を過ごしてください」
「それは勘弁願う」
「では」
淑女の挨拶をして、俺達は影の世界へと逃げる。
・・・
「おいおい、3日連続で侵入を許しているらしいぞ」
「凄腕の賊という事ですわ」
「そこまで欲しい情報があるのかしら?」
ガルム、ロッテ、アリシアの三人が話し合っている。
「アリア様、少しいいかしら?」
「構わなくてよ」
定例の情報交換会に呼ばれる。
「アリア様達ですよね?」
「何の事でしょう?」
「この連日の騒ぎのことですよ」
「知りませんわ? もし、そうだとしても城に侵入するメリットがありませんわ?」
「シラを切るつもりですか? では、アリア様と従者の方は昨夜何処におりましたか?」
「自室で寝ていましたわ」
「この3日間、あの声が聞こえてきませんでした・・・失礼を承知で魔力眼で見ましたが部屋の中は空っぽでしたよ」
魔力眼おそるべしだな。
「何を企んでいるんですか?」
「ちっ」
「え?」
「コレだから察しのいいガキは嫌いだよ」
「どういう?」
ドプンッ
俺とシズカは影の世界へと入り込み、自室へと移動する。
「きゃっ!」
ボスッ
シズカをベッドに落とす。
「ちょっと、何をする気ですか!」
「さぁて、ナニをしようか」
「私に危害を加えるつもりですか! 大声を出しますよ!!」
「アキラ」
「はい」
ズズズッ
影の中からアキラが出てくる。
「絶対施錠、絶対防音を」
「はい!」
アキラが部屋全体に鍵が開かなくなる施錠の魔法と音が漏れない防音の魔法を施していく。
「アキラさん?」
「はい」
ニコリと笑うアキラにシズカがキョトンとする。
「生きて」
「あれ? 記憶喪失ですか? それとも記憶封印ですか?」
アキラはシズカの反応に首を傾げる。
「私は生きていますが、敵ですよ?」
「どういう、いつっ!?」
シズカが頭を押さえる。
「あぁあああ!」
頭痛でワシャワシャと髪を振り乱し始めるシズカ。
「ハァハァハァ、すべて、思い出したわ」
雰囲気が変わり始めたシズカ。
「第九魔王アリア! 皆の仇!!」
両手に魔力を集め始めるシズカ。
「はい。霧散してください」
パチンッ
アキラが指を鳴らすとシズカの魔力が空気に溶けていく。
「な、んで」
「こんな所で魔法なんてダメですよ。優等生のシズカさん」
「どうして、なんで、貴女がそっちに居るの!」
「う~ん。価値観の違いですかね? 私はアリア様の物ですから」
アキラが俺の腕に体を擦り付ける。
「第九魔王、アナタがアキラさんを変えた」
「キッカケはアリア様ですが自らの意志ですよ」
「それだって魔法でどうとでも」
「そんな事より強盗を殺して何が悪い?」
「私達が強盗だというの!?」
「あぁ、俺達の住まう場所に土足で入ってきて沢山の命を強奪していった。中には酷い死に方をした者もいる」
「そんなの私達には」
「関係ないとは言わせないぞ。アイツ等も生きている魔族だ。魔族だから悪という考えなら間違っているぞ」
「そんな事ないわ! 魔族も魔王も悪なのよ!!」
「これは・・・」
生気を感じさせない目で語るシズカ。
「思考に深く掛かる感じの暗示ですね」
アキラがシズカの様子を見て原因を特定する。
人間は善、魔族は悪という思考が無理やり埋め込まれている。
「解けるか?」
「私では無理ですよ。光の魔法ですし」
「そうか」
光の魔法でも暗示とか出来る事に驚きだ。
どちらかと言うと闇魔法系だと思うんだが。
「光の女神様が絶対なのよ」
あぁ、信仰心を無理やり埋め込まれたのか。
なら光魔法でも出来るか。
40年前にも同じ人間を見たことある。
「これは荒療治が必要だなぁ」
「お手伝いしますよぉ」
2人して口の端を上げる。




