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スマホ × 電車=デス・ゲーム  作者: ネームレス・サマー
鈴木蒼汰はエゴイストなり
27/27

エピローグ 彼はいつか辿り着く

『酷いよっ、蒼汰(そうた)くん!』


 夏も終わりだろうに、そろそろ涼しくなって欲しいもんだ。

 照りつける太陽を手で覆い隠す。

 すると、哀愁すら感じてしまうような塩の風が吹き、鼻を刺激した。

 ……涼しくはないな。


『幽霊になってから蒼汰君が冷たいよ~

 ううっ、ハルちゃん』

『よしよし。蒼……こいつは元々こういう奴だったのよ』


 俺から少し離れた所で、夏恋とハルは抱きしめ合っていた。

 相変わらず仲がいいなと思っていると、ハルは体制を変えず首だけをこっちに向ける。

 そして大きな目を鋭くし睨んできた。もう慣れたので怖くない。


「幽霊のパンツに価値はない」


 まぁ、興奮した事実は存在するが。フリル付きのパンツは何度見てもいい物だ。

 死んだ時にスカートを履いててくれてよかった。

 まさか幽霊に触れられるようになるとはな。パンツもめくり放題だ。


「…………」


 自分の心の醜さとは裏腹に、空に浮かぶ雲は白く、綺麗だ。

 ……ああいった存在にはもうどう足掻いてもなれないだろうな。

 

『価値はなくてもっ、恥ずかしいんだよ!

 幽霊にだって心は……蒼汰君?』

「ん……ああ夏恋、悪い聞いてなかった」


 どこか憂鬱な気持ちになっていたら、夏恋がいつの間にか側に来ていた。

 どうして彼女まで幽霊として存在しているんだろう。今だにわからない。

 そもそも香本さんも光宙もなぜ幽霊として存在しているんだろう。

 他の幽霊は全く見たことがない。もう1ヶ月も経つのにわかった事の方が少ない。

 ただ、最後のゲームで見た景色が強く関係しているのだけは間違いないはずだ。


 考え事をしながら空をぽーっと見つめていると、


『もう……そういえば蒼汰君って空が好きなの?

 よく見てるけど』


 夏恋の言葉に思わず、太陽を見てしまう。

 あの明るさも今じゃ懐かしい。


「好きっていうより、なにかな……

 あいつを思い出せるから」


 最終決戦で俺を庇った光宙(そら)は……うう……。




『コラコラコラ! なに俺が死んだみたいになってんだよ!

 まだまだピンピンだぞ、幽霊だけど』

「おいおい、少しぐらい我慢しろよ」


 記憶喪失ネタに代わる新たな鉄板なんだ。

 バンバン使っていきたい。


『これで何度目だと思ってるんだよ!?

 流石にもう我慢の限界ッ! 家に帰らせてもらいます!』

「おう、帰れ帰れ」


 俺の肩の高さ辺りでプカプカ浮かんでいる光宙を手で払い除ける。

 光宙はその動きに反応するかのように、体全体を沈ませ、こう言った。


『まっ、帰る所なんてないんですがね……』

「……自分で傷つきにいこうとするなよ。

 俺も触れないようにしてるんだから」


『ネズミ、その話題はよしなさいよ。ネズミだけじゃなくて、私達共通のイタミなんだから……』


 ハルの憂鬱そうな声が上の方から聞こえる。

 どうして素直に横に移動せず、俺の頭上辺りを飛ぶのか。

 まさかパンツを見られたいわけじゃないだろうに。 


『お母さん、お父さん……秋、私の事を忘れちゃうなんて……寂しいよ』


 幽霊3人仲良く集まって重い空気を醸し出していた。

 俺だけが生き延びた世界……俺が元居た世界なんだろうか。


「…………」


 あの車両で起きた凄惨な事件は報道も何もなかった。

 ……そもそも、俺を除くあの事件に関わった全ての人間の存在がなくなっていた。

 より正確に表現するなら元々存在していない扱いだ。

 

 光宙との思い出も他の誰かが代替をしていた。

 その事実を知ったとき気色が悪くて仕方がなかった。というより吐いた。

 幽霊3人組を見る。こいつらがいなければ今頃俺は本当に狂っていただろうな……。


「駅……か」


 あの事件があったってのに俺も懲りないよな。早く免許を取ろう。

 はぁ……ナンパは上手くいかなかったな……。




『スマホ買い直そうぜ! 蒼汰っ』

「勘弁してくれ……」


 電車に乗るだけでも嫌なのに、トリガーになったスマホまで持ってられるか。

 にしても混んでるな。


「はぁ……」


 また乗り込んで来たよ。

 こりゃ俺の隣も埋まっちまうな。

 日常的な憂鬱さを感じていると、俺の目の前で女の子が物を落とした。


「どうぞ」

 

 優しい、優しい俺は女の子が落とした物を拾ってあげた。

 決して下心はない。


「あ、ありがとうございます」


 物を渡すと同時に女の子の顔をチラリと見た。

 どこかで見たような顔をしている……どこだ。記憶の底から探し出そうとして――――車内から光が消えた。


「おい、これって」

『……蒼汰、言いたくないんだけど今お前が持っているものを見ろ』


 スマホ……スマホかぁ。ありかよこんなの。

 そう思いはしたものの、この展開をどこかで俺は望んでいた気がする。


『だ、大丈夫だよ! 私達がついてるもん!』

『運がないというかなんというか……まっ私も手を貸すわ』


 何もわからないままで終わったあの事件――現象。

 今回の現象から、もう逃げることはできないだろう。ならば精々ノっていこう。そして解明して、今度こそ彼女のような存在も救って――――

 頭を振り、3人に声を掛ける。


『手を貸してくれ。俺が生き残るためにな」


 



 


 

ふふふ、ここまで読んでしまいましたね。どうか叩いて下さい!

ついでにポイントと感想を寄越せぇ!


さて、ここまでお読み頂きありがとうございます。

これにて本作は完結となります。

いつか、私が本来書こうとしていた物を書き直せればと思います。


それでは重ねてお礼を申し上げます。

ありがとうございました!

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