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夏休みだというのに朝の六時に目が覚めてしまった青年がこの古本屋兼父親の実家で祖父と朝食を取っていた時の事。
「毅、おめぇ今日は何か用事あるんかぁ?」
くちゃくちゃと行儀の悪い祖父は米粒を飛ばしながら言った。
「じーちゃん、行儀悪いよ・・・・・・今日は別に、何で?」
呆れた目線を送り、飛ばした米をティッシュで拭きとった後「おぉ、すまん」と悪びれる様子の無い祖父に応える。毅と呼ばれた青年は行儀よく白米を口に運んだ。
「ちぃと頼みがあんだけどよ、俺ぁ今日善さんとこで将棋指す約束してんだぁ」
米粒がテーブルの上やアサリの味噌汁の中に入るのをまた呆れた目線で見つめる毅、そんな孫に「おぉ、すまん」と返す。漫才でもやっているのかという体に、毅は半ばあきらめた様でため息をついた。さっき使ったティッシュでさっと拭く。
「んじゃあ俺店番やるよ、どうせ客なんて来ないんだし、宿題やってる」
「おめぇはほんっとに利口なやつだよなぁ」
子供を褒めるような口調に少しむっとしつつ、毅は残りの味噌汁を飲みほし、食器をシンクへ片づけた。「ほら早く食べな」と祖父へ食事を促し、食べ終えた自分の食器を洗いながら何時に約束しているのかとか、こないだ買った携帯を忘れないようにとか、杖を無くさないようにとか色々と注意をした。
「誰に似たのか、しっかりしよるよ」
祖父も大いに感心しながら食事を進める。
そうして今日は祖父の気が済むまで店番をすることとなった。小さい頃から世話になっている祖父の頼みだ、なんでも聞いてあげるつもりだった。とりあえず店を開けつつ洗濯を片づけ、和室と居間、二階の掃除を済ました毅は祖父を送りだした後、エプロンをかけてカウンターで宿題をしていた。
日が天辺を登りきる頃には休憩がてら昼食を取り、ある程度片づけた宿題をしまってただ店でぼーっとしていた。