二十八話 貴方のためならば
近日中に更新の約束をなんとか守れました。
お昼過ぎ、きりの良いところで一度課題の手を止める。遅れを取り戻すどころか、このペースなら夏休みの半分は遊んで暮らせる。
「っと、ここらで昼飯にすっかな。」
「昼ごはんはどうするの?なんなら若葉に君の分まで用意させようか?」
「大丈夫、母さんに弁当作ってもらったからな。」
そう言って鞄の中から一人で食べるには少し大きい弁当箱が顔を見せた。聖はこれを当たり前のようにバクバクと食べ始めたのにはかなり驚かされた。
「一人で全部食べられるの!?」
「あー、こんくらいは食わなきゃすぐ腹減るんだ。なんだ?食いたきゃ食うか?」
「聖様!病人に管理されてない食事を与えないでください!」
いつのまにか若葉が現れていた。まるで初めからいたかのように会話に入ってくるものだから驚く暇もない。若葉はいつもこうだから驚き慣れてしまったとも言える。病院食の用意はいつも若葉がしている。
「冗談ですよ。ていうか、いつ来たんですか!全然気付きませんでしたよ!」
「初めからいましたけど。時雨様、お昼ご飯の時間です。」
「ふふっ。待ってたんでしょ、聖が手を止めるのを。」
「なんのことでしょう?」
若葉が薄く笑みを浮かべた。何もかもがお見通し。まったくもって彼女には頭が上がらない。
「あぁ!若葉さんも勉強教えてくださいよ!絶対できますよね、雰囲気的に!」
確かに若葉は頭が良い。偏差値の高い有名国立大学出のエリートだからこそ私の付き人ができるのだ。聖の課題も早々に終わってしまうことだろう。
「まぁ、不得意ではありませんが。見たところ充分手伝いなしにできているではありませんか。」
もやもやと、この気持ちはいったいなんなのだろうか。得体の知れないなにかが胸の奥でざわざわと私の心を掻き立てる。
「それに何よりも、私の大切な主人様がご立腹のようなので。」
図星だ。顔に出したつもりは毛頭無い。自分すらも理解及ばない感情すらも、彼女にとってはお手の物。嫌だったのだ。二人っきりでいられなくなるのが。
「奪いませんよ。大切な時間は。」
本当に頭が上がらない。これからもずっと。
♢
お昼の仕事は先ほど終わった。時雨様の昼食の用意と片付け。簡単な仕事だ。あの子のためならなんだってしてあげられる。その思いは少年となんら遜色ないどころかより強く、長きに渡る。
選ばれたのは彼なのだから、私はこの場は身を引こう。
「私だってもっと...一緒にいたいのに...。」
なんて損な役割だろうか。言いたい事が言えないのは同じだ。
涙が出るのをグッと堪える。そんな感じの昼下がり。
春に書き始めたこの作品ですが、気づけば秋に、もうすぐ冬がやってきますね。




