二十一話 限りあるが故の美しさなんていらない
5日目スタートです。海回の始まりです。
コクン、コクン。車の揺れに合わせて頭が揺れる。ガタンと大きくな音を立てるとともに体が少しだけ浮き、その拍子に窓で頭を打った。
「いってぇ!」
何事かと辺りを見回すとここは車の中。海岸線を走る車の窓からは夏の太陽に照らされた海がキラキラと嬉しそうに輝いている。
「あぁ、海に行ってたんだったなぁ。」
今日行く海は瀬見家のプライベートビーチであり、他の人は一切いない。そんなことを思い出し、未だ微睡む目をこすりながらちらりと隣に目をやると、時雨が景色に魅せられていた。頬を赤らめ目を輝かせるその姿に海を重ねた。
「もうすぐ到着です。」
「楽しみだね、聖!」
屈託無く笑うその姿が妙に嬉しくて俺の頬も緩む。
「そうだな。」
その時、意外にも自分が海を楽しみにしていることに気づいた。厳密に言うと少し違う。時雨と一緒に見る海をだ。
♢
「ひろーーーーい!」
「こら!暴れんなって!ただでさえ砂浜で押しにくいんだからさ。」
身を乗り出したり、足をバタバタさせたり、手を広げたり、見ていて飽きない喜びの表現の多さに驚いた。そして何よりも時雨が海に着いて始めにしたことには息を飲んだ。驚いたと言うよりもなにも言うことができなかった。
砂浜で目を瞑り、天を仰いで耳を澄ます。うみねこの鳴き声に、海風に、漣の音に耳を傾けた。
一枚の絵画のようなその景色を見てなんだか泣きそうになったのを必死で堪えた。
一切の邪な感情なんてあるはずもなく、純粋に、一途に、ただひたすらに、この先も時雨と居たいと思った。
最終話の構想を考えていますがまとまっていません。シチュエーションはバッチリなのですがセリフが決まりません...。




