美しき毒の封を切る前に
完結済みです。
おや、よくお越しくださいました。
凍えるような夜ですよね。どうぞ、こちらへ。
……おや、手に持っているその手紙は……。
なるほど……。お会いできてうれしいです。
その手紙を、いただいてもよろしいでしょうか?
……ありがとうございます。
まずは温かいコーヒーはいかがですか?
今お持ちしますので、そちらのソファーでお寛ぎください。
あぁ、申し遅れました。わたくしは時雨と申します。
ここが何処で、なぜ自分がここに居るのか脳の認知が追いつかない、といったお顔をされていますね。
……さて、淹れたてです。
砂糖も用意してますので、ご自由にお使いください。
……お口に合えばよろしいですが。
では、ご説明しましょう。
ここは、現実と虚構の狭間の空間。
あなたは意識していないかと思いますが、あなたの脳の奥底にある「因果」が求めて、この場所に辿り着いたのです。
……失礼。先ほど頂いた手紙を開けますね。
あなたの心が求めている物語は、この手紙に書いております。
この手紙を誰から受け取ったか、ですか?
……そうでしたか。私が指摘されるまで、ご自身のポケットに入っていたことすら気づかなかったと。
わかりました。……いえ、気にしないでください。
……いずれ、嫌でもわかることですから。
これからお話するのは、とある青年が徐々に壊れていく哀れな人間の物語。
これは何を意味するのか。それは、あなたが最後までこの劇を見届け、感じたことが答えとなります。
……お味はどうですか?
あぁ、良かった。お口に合って何よりです。
「美しき毒をあなたに」
おや、そんなに身構えないでください。そのコーヒーに毒など入っておりませんよ。
……あなたは、私の大事なお客様ですからね。
この言葉は、この物語をコントロールする、とある「作者」が遺した言葉です。
この言葉の真意も、いずれ分かるかと思います。
では、冷めないうちにコーヒーを飲みながら、ごゆっくりお聞きください。




