5 day ②
ーーーー 5 day ② ーーーーーー
探す。探す。探す。探す。探す。
見つからない。見つからない。いない。いない。ここにもいない。ならば安心。なのか、まあ。いいか。
ここは安全だ。
「やぁ。どうだった?ここらへんは?」
「問題なし..です..た..。」
「あれ?言語機能まで規制した覚えはないんだけどな?ーーはい。これで大丈夫。」
テレビのチャンネルを変えるように、神器を真也に向けて発動する。
「ありが..とうでござい...ます。」
「?ここまでくると神器どうこうじゃなくて、真也の意思の問題かなあ。そこまで反抗されるとぼく、もっと強く支配しなくちゃいけないんだけど。はぁ、気が引けるなあ。」
「まっ!とりあえずここらへんに神器使いはいないって事が分かっただけよしとするか。」
真也は無言で姿勢を崩さず、ただ立っていただけだった。その関係は一見、協力関係にも見えるが、その実、それは違う。まるで少女。ーー松岡綾が、真也を従えているような、言うなれば、主従関係。それもあまりにも不気味な空気が漂っていた。
「それにしても、もう全然時間がないのに、まともに神器使いってのに出会ったのが真也一人だけなんだよねえ。真也は結構会ってるけど、この戦い、期限以内に終わらなかったらどうなるんだろうね?」
「・・・・・・」
「ふぅ、ぜんっぜん喋んないからおもしろくないなあ。
なぁら、これ!」
神器を発動する。と、同時に、まるで拘束から解けたかのように真也は自由を取り戻した。
「これが・・・お前の神器だったのか...」
「そっ!凄いでしょ?人をあやつれるんだよぉ〜。」
綾が自分の神器の説明をしている最中、真也は拳を握り締め、思いっきり殴りかけた。
が、その拳は、自身を殴りその場に崩れ落ちた。
「うわっ!ビックリしたぁ。ていうか、人の話はちゃんと聞こうよ。ぼくに対する攻撃的な行動、言動、思想はぜぇーんぶ自分に返ってくるようにしたから。気を付けなよ。」
眉を細めて地面から綾を睨みつける。
「!?くっ!....」
予想だにしない頭痛を真也に降りかかる。
「はっはっはー!そういう考えもダメだって!わからないかなぁ。真也はこれからずぅっーとぼくと一緒に生きていくんだよ。家族みたいにね。ぼくが面倒見てあげるからぁ。安心して!」
「おまえ..!」
その先の言葉は言わなかった。否、言えなかった。自分もその類いだということ。その思想に段々と近づいていることを自覚していたからである。
「んじゃまぁ、手始めにお手。」
跪く真也にスッと手のひらを差し出す。だが、それは救いの手ではなく服従のための手。ただ先にあるのは実質的な敗北。
「ほら、はやく。ほら。」
手のひらをばたつかせ催促をする。
「ねえ、やれっていってんのわかんない?」
神器を真也に向け起動する。
「よぉしよし。いい子だね、真也は。」
真也は命令通りお手の姿勢をとる。ただそこには、真也の意志は介在しない。そこにあるのは、ただ一人の意志のみ。まるで、人形を思うがままに操って遊ぶ女の子のようだった。
「あの!」
ザッと、茂みからでてきた女が眉間にシワを寄せながらこちらを睨みつけている。その視線に綾は動きが一瞬止まる。だがなにも発しない。そこで気づいたのだ。この女はただの一般人だと。抵抗する力もなく、ただ無残に、一方的に殺される『弱者』だと。
「なに、やってるんですか...?あなた。」
震える声で問いかける。だが、目元に変化はない。彼女の中にある感情はたった一つ。
『嫉妬』のみだった。
「さっ!真也、もいっかいお手。ほら。」
「ちょっと..!人の話聞いてるんですか!」
「ほら、はやくぅ。」
「..っ!そこのブス女!聞こえてんのって聞いてるんですけど!」
「.....今、なんか言った?そこの超ブス女。」
「やっと聞こえましたか?ブス女のくせに耳まで遠いんじゃお終いですよ。」
「・・・・・」
返答はなかった。
静寂が続く。風が草木をなびかせ、葉音だけが響く。
「.....うっざ。」
手に握っていた神器の照準を目の前の女に向ける。
「っぐ...!ぐぐぎぎぃ..!」
その瞬間、女は自分の首を自らの手で締め始め苦しみだす。それを綾は満足そうに眺めている。
真也はただ地を見続ける。
一人でもがき、苦しむ。
それはあまりにも歪で、しかしそれは綾にとっては必然。
逆らえばこうなるのだと。それを死をもって教える。
彼女はいつもそうしてきた。この神器を手にしてからずっと。
知人。見知らぬ人。ライバル。自分を馬鹿にしてきた者たち全員に。
それは家族であっても例外ではない。
「...終わった?」
女が地面にひれ伏してから、ものの数秒で動きが止まった。気道閉塞、動脈閉鎖、静脈閉鎖。
どれも自分自身でできるものではない。必ずどこかでセーブをかけてしまうから。だから皆、自殺をするときはロープ類を使い自然の力で自らを殺すのだ。
だが、彼女。松岡綾にはそれを実行させるだけの力がある。
「神の権限」
それこそが彼女の神器。
「ぼく、結構短気だから。仕方ないんだ。」
反応があるはずもないそれに話し続ける。
「だってさ、人をバカにするのってやり続けて自殺しちゃう人だっているわけじゃない?例えば、学生のいじめとか、いじめってもう学生だけじゃなくて大人もしょっちゅうやってるけど。あれって立派な犯罪だよね。死刑だよ死刑。いじめダメ、絶対。加害者の中には人一人殺した罪悪感もなんもなくのうのうと今も生きてる奴だってこの世界には何人もいるし。あ、これはぼくの持論なんだけどね。加害者側って絶対複数人いるの。だから罪の意識が分散しちゃって自分はなにもやってないだから大丈夫って気持ちになっちゃうんだって思うんだ。酷い話だよね。って、話が逸れちゃったね。つまり、あんたは、ぼくに悪口を吐いて私を傷つけた。昔みたいな感じを思い出しちゃったんだよ、それで。だからあんたみたいないじめっ子はこの世から消えちゃわなきゃいけない。最初に言ったよね。いじめダメ、絶対。だからあんたは、死んで当然。」
それに語り続ける彼女の言葉は次第に早口になり途中からその言葉は、それに対してではなく、自分に言い聞かせ、自分の行いを正当化するための言葉に変わっていった。
「あーあ、綺麗な顔が台無しじゃん。」
女の頬をさすりながら、また語る。今度は涙を流しながら。
「真也、今日はもう帰っていいよ。疲れちゃった。」
「...はい。」
死体の傍らで膝をつき、笑っているのか、それとも泣いているのか、その叫びの真相を知る者はここには誰もいない。
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終
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