第四話「ゼロネコドッグファイト」
極東防衛総合学園は朝日に照らされた。
「ん…っう…」
五二型は自分の部屋で目覚めるとググッと背を伸ばす。
そう目を覚ましたら洗面台で顔を洗って素早く着替えを済ます。
五二型がそうして部屋を出る。
「おっ、ZEROー起きてたー?」
F6Fがそう話しかけてくる。
「そりゃあ今話してるんだし起きてる…」
五二型は若干ぼやけた声で返事をした。
「眠そうだねZERO〜」
「おかげさまでね…」
F6Fはその様子を横目にふと昨日のことを思い出す。
「それにしても、昨日は大変だったねぇ〜私が助けた時とか!」
「んなっ…!あの時不意を突かれたのも爆撃機に気を取られてたからだし、もうそんなヘマ自分からする気もないし…」
思わず五二型は言い返す。
言い返されたF6Fは少しイタズラな笑みを浮かべる。
「へぇ〜…言うじゃん。じゃあ試してみようよ!dogfight…」
「…模擬空戦?」
F6Fの言葉に五二型が聞き返す。
「YES、どう?せっかくこっちに来たから手合わせくらいいいじゃ〜ん?」
F6Fがそう言うと、五二型は目を細めた。
「…望むところ、目にもの見せてやるから。」
「OK、何もなかったら昼前にやっちゃおっか?」
五二型はF6Fの声に静かに頷いた。
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空は曇一つない快晴。
滑走路に五二型とF6Fが並ぶ。
ユニットの調子も上々と言ったところだろうか。
五二型は無線機に呟く。
「離陸準備完了、発進許可求ム。」
『離陸準備完了了解。発進許可。』
無線越しに二人に司令塔から許可が降りる。
五二型は少しずつ動き出し、やがて高速で滑走路を駆け出した。
ほどほどに加速すると五二型は滑走路を蹴って、空へと飛び立った。
F6Fも同じように離陸して大空へと飛び立った。
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模擬空戦を見ようと皆が集まっていた。
「模擬空戦をするって聞いたけど…そろそろかな。」
二二型は二一型に聞く。
「うん。そろそろ来ると思うけど…あ、あれかな。」
『…空戦許可。始め!』
司令塔からの指令が無線に飛び込む。
するとまるでひとつの円を描くように二人で旋回を始める。模擬空戦が始まった。
今回は同高度の旋回戦。F6Fがよくする一撃離脱は使いづらいが、F6Fもなかなかの旋回性能を持っている。
上空では二人がお互いの背後を取ろうと旋回を続けていた。
旋回を続けるたびに凄まじい重力が体にかかってくる。
二人は凄まじい加速度Gに耐えながら旋回を続ける。
若干五二型が優勢だが、F6Fも速度の優位で距離を取りながら五二型を狙う。
すると突然、五二型が旋回をやめた。
「ラッキー!」
F6Fは笑みを浮かべ機銃を掃射する。
銃弾は模擬弾なので撃墜することはできない為、安全性が高い。
そのため今回の模擬空戦では制限時間以内で相手にできるだけ多くの弾痕を付けたほうが勝者となる。
五二型はF6Fが放った機銃弾を左に急旋回することで難なくかわす。
F6Fはこのまま逃がすものかと追いかけ機銃を放つ。
「…まあ流石についてくるよね。」
五二型も反撃を開始する。速度を下げやや失速状態にすると、体を上に上げF6Fをわざと追い越させた。
「!?なっ…!」
F6Fは驚愕して後ろを振り向く。
木の葉落としと言われるこの軌道は敵機に背後につかれた状態から急上昇し、意図的に失速状態を起こす。 失速した自機を敵機が追い越したところで、慣性による姿勢制御で失速状態から回復。相手の目をくらましつつ背後に回りこむ機動である。
その際の挙動が、さながらヒラヒラと舞い落ちる木の葉の様に見えたことから名付けられたと言われている。まさに零式艦上戦闘機のお家芸だ。
先ほどとは形勢が逆転している。今度はF6Fが逃げる番となった。
「…凄い…やるじゃん。」
思わず二一型はそう言葉を漏らす。
追いかけられる番となったF6Fは五二型から逃れるべく、急降下を開始した。
五二型もそれを見て追跡する。F6Fを照準器に捉えて機銃を放つ。
だが機銃弾はF6Fの上方に流れていき、一発も当たらない。
「…さすが、しっかり射線をずらしてる…米海軍を舐めてたわけじゃないけど、みくびってたのはあるかも…」
機銃は敵を射線に捉えて射撃しなければいくら撃とうが当たらない。F6Fはそれを利用して回避を行っていたのだ。そしてそのまま離脱し、一撃離脱に持ち込むために旋回する。
だが、なんと五二型が突然前に飛び出てきたのだ。
「なっ…!?Unbelievable!」
この奇怪な行動には見学していた零戦姉妹も驚く。
「なんで前出ちゃったの?これじゃあ撃墜してって言ってるようなものじゃん!」
二二型が思わずそう口にする。
すると同じことを思ったのか二一型も口を開いた。
「そうだよ!なんでそんな自殺行為を…。」
敵機の眼の前に出ることはまさしく撃ち落としてくれと言っているようなものだ。
F6Fは驚きながらも五二型を照準器内に捉えた。このまま斉射すれば撃墜判定となる。
F6Fが機銃のトリガーを引いた瞬間———
五二型が左に捻りこむように旋回し、そのままF6Fの眼の前から姿を消した。
F6Fは驚きのあまり目を見開いた。
「っ…!?ZEROが消えた!?い、一体どこに…!?」
F6Fは焦りながらあらゆる方向を確認する。しかし五二型はどこにも見当たらない。
するとF6Fはとある飛行技術を思い出した。
「まさか…J-SADSで聞いたことある…左捻り込み…!?」
左捻り込み。それは名前の通り左に捻るように旋回し、敵機の前方から後方に付く技だ。
しかし日本海軍最高の秘術と言われており、この技をするのは歴戦のそらむすめですら難しい。なぜならこの技をできるのは日本海軍でも一握りだけだからだ。
F6Fが後ろに振り向く。
するとそこには、五二型が構えた20mm機銃がF6Fにぴったりと突きつけられていた。
「…There is nothing more I can do…やるね、ZERO…」
その様子を見て、一一型は呟く
「…五二も、アレを習得してたのね…教えたつもりはなかったけど、さすがね。」
その言葉を聞いて零戦姉妹がわいわいと盛り上がる。
五二型は上から見て手を振る。
そんな様子を一人、物陰から見ていた。
「…零戦が勝った…日本海軍もやるわね。だけど…こっちだって負けてないわよ。」
そう言って去っていく少女のユニットには、日の丸が輝いていた。
4話を見てくださりありがとうございます。作者です。
今回は五二型とF6Fのドッグファイトを書いてみました。
なんか僕戦闘シーンになると急に文字が多くなりますね。今後もお願いします。




