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ホスト転生  作者: 阿門 甲斐吽


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【第70話伝説のホスト


 王都(おうと)の上空(じょうくう)を覆(おお)っていた熱気(ねっき)と恐怖(きょうふ)が嘘(うそ)のように霧散(むさん)し、穏(おだ)やかな青空(あおぞら)が戻(もど)った広場(ひろば)には、圧倒的(あっとうてき)な静(しず)けさと、それに続(つづ)く底知(そこし)れない歓喜(かんき)の波(なみ)が広(ひろ)がっていた。


 かつて世界(せかい)を絶望(ぜつぼう)の淵(ふち)に突(つ)き落(お)とした魔王(まおう)をも屈服(くっぷく)させ、牙(きば)の森(もり)の脅威(きょうい)を退(しりぞ)け、そして王都(おうと)を灰燼(かいじん)に帰(き)そうとした伝説(でんせつ)の古龍(こりゅう)――ファイヤードラゴンすらも、シオンの放(はな)つ「性(せい)の捕食者(ほしょくしゃ)」としての絶対的(ぜったいてき)な支配(しはい)と快楽(かいらく)の魔力(まりょく)の前(まえ)にひれ伏(ふ)し、いまや完全(かんぜん)なる従順(じゅうじゅん)な下僕(げぼく)へと成(な)り果(は)てていた。


 広場(ひろば)の中心(ちゅうしん)に立(た)つシオンの隣(とな)りでは、巨大(きょだい)な紅蓮(ぐれん)の竜(りゅう)がまるで主(あるじ)を慕(した)う愛玩動物(あいがんどうぶつ)のようにその巨体(きょたい)を小(ちい)さく丸(まる)め、うっとりと潤(うる)んだ金色(こんじき)の瞳(ひとみ)でシオンのに頭(あたま)を擦(す)りつけている。


「ま、まさか……あの伝説(でんせつ)の古龍(こりゅう)すらも、一瞬(いっしゅん)で従(したが)えてしまうなんて……。シオン様(さま)は、いったいどれほどの高(たか)みにいらっしゃるのだ……」


 近衛騎士団(このえきしだん)の副団長(ふくだんちょう)が、信(しん)じられないものを見(み)るような目(め)で呟(つぶや)きながら、額(ひたい)の冷汗(ひやあせ)を拭(ぬぐ)う。


 周囲(しゅうい)を取(と)り囲(かこ)む近衛騎士(このえきし)たちや歴戦(れきせん)の冒険者(ぼうけんしゃ)たちも、もはや驚愕(きょうがく)を超(こ)えて畏敬(いけい)の念(ねん)を抱(いだ)き、その場(ば)に崩(くず)れ落(お)ちるように膝(ひざ)をついていた。


 そんな喧騒(けんそう)の中心(ちゅうしん)で、王女(おうじょ)エルザはシオンの腕(うで)の中(なか)にしっかりと抱(だ)かれたまま、胸(むね)の高鳴(たかな)りを抑(おさ)えきれずにいた。


 過酷(かこく)な戦(たたか)いを乗(の)り越(こ)え、愛(あい)する人(ひと)が再(ふたた)び自分(じぶん)のもとへ戻(もど)ってきてくれたという現実(げんじつ)と、世界(せかい)を救(すく)う圧倒的(あっとうてき)な強(つよ)さを目(ま)の当(あ)たりにした高揚感(こうようかん)が、エルザの頬(ほお)をほんのりと赤(あか)らめさせている。


「シオン様(さま)……本当(ほんとう)に、ありがとうございました。あなたがいてくださらなければ、この王国(おうこく)は間違(まちが)いなく滅(ほろ)びていました……」


「ああ、よく耐(た)えたな、エルザ。お前(まえ)の国(くに)は、俺(おれ)がしっかりと守(まも)り抜(ぬ)いてやったぞ」


 シオンが優(やさ)しく微笑(ほほえ)みながらエルザの頭(あたま)をなでると、エルザは嬉(うれ)しそうに目(め)を細(ほそ)め、さらにその温(ぬく)もりに身体(からだ)を預(あず)けた。


 その傍(かたわ)らでは、アルベルトが頼(たの)もしい笑(え)みを浮(う)かべながら二人(ふたり)を見守(みまも)り、リーナやルミナリア、ルナリス、セレナ、シェリア、そして魔族(まぞく)や獣人族(じゅうじんぞく)の美女(びじょ)たちも、それぞれの誇(ほこ)らしげな笑(え)みを浮(う)かべてシオンの周囲(しゅうい)を取(と)り囲(かこ)んでいる。


 王都(おうと)の危機(きき)は完全(かんぜん)に去(さ)った。


 しかし、シオンの征服(せいふく)と救済(きゅうさい)の旅路(たびじ)は、ここで終(お)わりを迎(むか)えるわけではない。


 決戦(けっせん)から数日後(すうじつご)。


 広場(ひろば)に集(あつ)まった群衆(ぐんしゅう)のざわめきが静(しず)まり返(かえ)ると、シオンは悠然(ゆうぜん)とした足取(あしど)りで一歩(いっぽ)前(まえ)に進(すす)み出(で)た。


 その背後(はいご)には、かつての敵(てき)である魔王(まおう)やファイヤードラゴンから、王国(おうこく)の要人(ようじん)であるエルザやアルベルト、そして数多(あまた)の種族(しゅぞく)の美女(びじょ)たちに至(いた)るまでが従属(じゅうぞく)の証(あかし)として並(なら)び立(た)っている。


 その光景(こうけい)は、もはや一(ひと)つの王国(おうこく)を従(したが)えるどころか、世界(せかい)そのものを手中(しゅちゅう)に収(おさ)めた絶対的(ぜったいてき)な支配者(しはいしゃ)の君臨(くんりん)に他(ほか)ならなかった。


「お言葉(ことば)ですが、王都(おうと)の防衛体制(ぼうえいたいせい)や周辺地域(しゅうへんちいき)の復興(ふっこう)には、まだ多(おお)くの人手(ひとで)と時間(じかん)がかかります。私(わたし)たちも全力(ぜんりょく)でサポートいたしますが……」


 アルベルトが少(すこ)しだけ恐縮(きょうしゅく)した様子(ようす)で進(すす)み出(で)ると、シオンはふっと余裕(よゆう)のある笑(え)みを浮(う)かべて首(くび)を横(よこ)に振(ふ)った。


「心配(しんぱい)はいらない。この城(しろ)の周辺(しゅうへん)に漂(ただよ)う澱(よど)んだ魔素(まそ)の浄化(じょうか)は、すでにリーナやセレナたちが完璧(かんぺき)に網羅(もうら)している。それに、お前(まえ)たちの背後(はいご)には、かつて敵対(てきたい)していた魔王軍(まおうぐん)の戦力(せんりょく)すらも下僕(げぼく)として控(ひか)えているのだ。復興(ふっこう)など、ほんの数日(すうじつ)あれば終(お)わるさ」


 シオンのその力強(ちからづよ)い言葉(ことば)に、リーナや仲間(なかま)たちが誇(ほこ)らしげにうなずく。


 実際(じっさい)に、シオンが放(はな)つ圧倒的(あっとうてき)な支配(しはい)の波動(はどう)は、傷(きず)ついた大地(だいち)そのものをも癒(いや)し始(はじ)めており、王都(おうと)の周囲(しゅうい)に立(た)ちこめていた不穏(ふおん)な気配(けはい)は跡形(あとかた)もなく消(き)え去(さ)っていた。


「さすが、シオン様(さま)ですわ。私(わたし)たちだけでこれほどの偉業(いぎょう)を成(な)し遂(と)げてしまうなんて……もっともっと、あなた様(さま)の役(やく)に立(た)ちたくて仕方(しかた)がありませんわ」


 サキュバスのルビリアが艶(なま)めかしく身体(からだ)を寄(よ)せると、エルザは少(すこ)しだけ頬(ほお)を膨(ふく)らませながらも、シオンの腕(うで)にしっかりと捕(つか)まってその温(ぬく)もりを独(ひと)り占(じ)めしようとする。


 豹族(ひょうぞく)のレオナやウルフ族(ぞく)のルナリスたちも、負(ま)けじとばかりにシオンの周囲(しゅうい)で楽(たの)しげな笑(わら)い声(ごえ)を上(あ)げていた。


 種族(しゅぞく)や立場(たちば)を超(こ)え、すべての者(もの)がシオンという圧倒的(あっとうてき)な存在(そんざい)の求心力(きゅうしんりょく)の前(まえ)にひれ伏(ふ)し、その愛(あい)に酔(よ)いしれている。


「ふん、この世界(せかい)も、これでようやく正(ただ)しい秩序(ちつじょ)を取(と)り戻(もど)したというわけね」


 ルミナリアが背中(せなか)の羽(はね)を振(ふ)るわせながら満足(まんぞく)げに呟(つぶや)き、ルナリスも大(おお)きく頷(うなず)いた。


 シオンはそんな彼女(かのじょ)たちの様子(ようす)を温(あたた)かく、かつ冷徹(れいてつ)な眼差(まなざ)しで見渡(みわた)しながら、さらなる未来(みらい)へと視線(しせん)を向(む)ける。


「王都(おうと)の平和(へいわ)は取(と)り戻(もど)した。だが、この世界(せかい)にはまだ俺(おれ)の愛(あい)と支配(しはい)を求(もと)めている者(もの)たちや、あるいは誤(あやま)った道(みち)を歩(あゆ)む愚(おろ)か者(もの)たちが数多(かずおお)く残(のこ)されている。休息(きゅうそく)はここまでだ。我々(われわれ)はさらに領域(りょういき)を広(ひろ)げるぞ」


 シオンの冷徹(れいてつ)かつ艶(つや)やかな号令(ごうれい)に、八人(はちにん)の美女(びじょ)たち、そして新(あたら)しく加(くわ)わったレオナやエルザ、アルベルト、さらにウルフ族(ぞく)や豹族(ひょうぞく)の戦士(せんし)たち、果(は)ては下僕(げぼく)となった魔王(まおう)やファイヤードラゴンに至(いた)るまで、一斉(いっせい)に力強(ちからづよ)くひざまずき、忠誠(ちゅうせい)の声(こえ)を上(あ)げた。


 最強(さいきょう)の軍勢(ぐんぜい)と、世界(せかい)を揺(ゆ)るがす圧倒的(あっとうてき)な魅力(みりょく)を手(て)に入(い)れたシオンの歩(あゆ)みは、もはや誰(だれ)にも止(と)めることはできない。


 新(あら)たな宴(うたげ)と、さらなる深淵(しんえん)なる支配(しはい)へ向(む)けて、シオンの一行(いっこう)は次(つぎ)なる舞台(ぶたい)へと動(うご)き出(だ)すのだった。






第(だい)1章(しょう)(完(かん))






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