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ホスト転生  作者: 阿門 甲斐吽


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【第62話】最後の営業


 黒石(こくせき)(もん)内側(うちがわ)から爆散(ばくさん)し、微粒子(びりゅうし)()した破片(はへん)紫黒色(しこくしょく)奔流(ほんりゅう)()って四散(しさん)していく。


 その()こう(がわ)(ひろ)がっていたのは、太陽(たいよう)(ひかり)すら(とど)かない永遠(えいえん)黄昏(たそがれ)(つつ)まれた、禍々(まがまが)しくも圧倒的(あっとうてき)威容(いよう)(ほこ)魔王城(まおうじょう)中庭(なかにわ)だった。


 (そら)には()(おも)わせる深紅(しんく)(つき)()かび、(つめ)たい(きり)地面(じめん)()うように(なが)れている。


 シオンは背後(はいご)(ひか)える無敵(むてき)軍勢(ぐんぜい)見返(みかえ)り、冷酷(れいこく)()みを()かべた。


 その(うし)ろには、かつての冷徹(れいてつ)さを完全(かんぜん)(うしな)い、ただ(あるじ)寵愛(ちょうあい)()下僕(げぼく)()()てた執行者(しっこうしゃ)()いつくばっている。


「よく()ろ、ここが最後(さいご)(しろ)だ。お(まえ)たちが(たば)になっても(まも)()けなかった、絶望(ぜつぼう)巣窟(そうくつ)だ」


 シオンが(ひく)()げると、八人(はちにん)美女(びじょ)たちはそれぞれに(なま)めかしい()みを()かべ、あるいは闘志(とうし)()()がらせてうなずいた。


 リーナは魔導書(まどうしょ)(かる)(ひら)き、城内(じょうない)から()()魔力(まりょく)潮流(ちょうりゅう)冷静(れいせい)分析(ぶんせき)(はじ)めている。


「シオン、(しろ)内部(ないぶ)から(つよ)魔力(まりょく)反応(はんのう)(かん)じるわ。どうやら魔王(まおう)最奥(さいおう)()で、(わたし)たちを()(かま)えているんだわ」


「ふん、()っていたところで結果(けっか)(おな)じよ。一族(いちぞく)(うら)()めて魔王(まおう)(はな)()かし、シオン(さま)足元(あしもと)にひざまずかせてあげるわ」


 シェリアが双剣(そうけん)(かま)え、先陣(せんじん)()るように一歩(いっぽ)()()す。


 その(となり)ではルナリスが戦斧(せんぷ)(かま)え、不敵(ふてき)()みを()かべていた。


 シオンたちは(しろ)正門(せいもん)(くぐ)()け、重厚(じゅうこう)石造(いしづく)りの回廊(かいろう)へと(あし)()()れる。


 そこはかつて魔王軍(まおうぐん)精鋭(せいえい)たちが(まも)りを(かた)めていた難所(なんしょ)だったはずだが、いまやシオンの(はな)圧倒的(あっとうてき)な「(せい)捕食者(ほしょくしゃ)」としての覇気(はき)と、四天王(してんのう)たちの調伏(ちょうぶく)された魔力(まりょく)充満(じゅうまん)しており、侵入者(しんにゅうしゃ)(こば)気配(けはい)微塵(みじん)もない。


「シオン(さま)、お(からだ)()えては大変(たいへん)です。(わたし)結界(けっかい)で、(つね)心地(ここち)よい(ぬく)もりを維持(いじ)して()()げます」


 セレナが優雅(ゆうが)(あゆ)()りながらシオンの(うで)にそっと()れ、信奉(しんぽう)()ちた(ひとみ)()ける。


 その反対側(はんたいがわ)からは、リヴァイアが(つや)やかな(むね)()らしながら()()い、(あま)吐息(といき)()としていた。


「ねえシオン(さま)最奥(さいおう)にいる魔王(まおう)(たお)したら、その(つぎ)(わたし)たちをたっぷり可愛(かわい)がってくれますよね? この(しろ)のすべてを、(わたし)たちの(あい)()たしましょう?」


「クフフ、心配(しんぱい)せずとも、お(まえ)たちの欲望(よくぼう)()たし()くすだけの時間(じかん)十分(じゅうぶん)用意(ようい)してある。魔王(まおう)という最後(さいご)玩具(おもちゃ)(こわ)()くした(あと)のご褒美(ほうび)だ、期待(きたい)しておけ」


 シオンのその言葉(ことば)に、ルビリアやアルテミシア、シェリアを(ふく)全員(ぜんいん)歓喜(かんき)(ふる)えを(おぼ)えたように(ほお)()め、一層(いっそう)(はげ)しい独占欲(どくせんよく)(ひとみ)宿(やど)す。


 回廊(かいろう)()けた(さき)には、幾重(いくえ)もの魔法陣(まほうじん)(きざ)まれた巨大(きょだい)大扉(おおとびら)がそびえ()っていた。


 そここそが、魔王(まおう)君臨(くんりん)する玉座(ぎょくざ)()へと(つづ)最後(さいご)関門(かんもん)です。


 執行者(しっこうしゃ)ネクロスは(ふる)える(こえ)でその大扉(おおとびら)見上(みあ)げて甲高(かんだか)(こえ)()げた。


「あぁ、()絶対(ぜったい)主様(あるじさま)……! あの(とびら)()こうには、かつて(わたし)ですら近寄(ちかよ)ることを(ゆる)されなかった魔王(まおう)玉座(ぎょくざ)がございます。ですが、(いま)主様(あるじさま)御前(ごぜん)では、あのような結界(けっかい)など紙屑(かみくず)同然(どうぜん)……!」


「ああ、()っている。()るがいい、(おれ)(ちから)でその(とびら)をこじ()けてやろう」


 シオンが右手(みぎて)(かか)げると、その指先(ゆびさき)から渦巻(うずま)くような紫黒色(しこくしょく)魔力(まりょく)オーラが(ふく)()がった。


 それは周囲(しゅうい)空間(くうかん)(ゆが)め、概念(がいねん)そのものを侵食(しんしょく)するほどの濃厚(のうこう)快楽(かいらく)支配(しはい)奔流(ほんりゅう)だった。


 シオンが指先(ゆびさき)()()ろした瞬間(しゅんかん)大扉(おおとびら)(きざ)まれていた幾重(いくえ)もの結界(けっかい)が、悲鳴(ひめい)()げるようにメキメキと(おと)()てて亀裂(きれつ)(はし)っていく。


 物理的(ぶつりてき)衝撃(しょうげき)ではなく、存在(そんざい)そのものを()()えられるような侵食(しんしょく)によって、強固(きょうこ)防壁(ぼうへき)数秒(すうびょう)()たずに粉々(こなごな)(くだ)()った。


 (くだ)()った(とびら)()こうから、圧倒的(あっとうてき)質量(しつりょう)()王者(おうじゃ)魔力(まりょく)()()せてくる。


 しかし、シオンはその威圧(いあつ)(はな)(わら)()ばし、一歩(いっぽ)()くことなく堂々(どうどう)とその(なか)へと(あゆ)みを(すす)めた。


 玉座(ぎょくざ)()最奥(さいおう)漆黒(しっこく)玉座(ぎょくざ)腰掛(こしか)けていたのは、世界(せかい)(ふる)()がらせてきた魔王(まおう)であだった。


 しかし、その表情(ひょうじょう)にはかつての絶対的(ぜったいてき)威厳(いげん)はなく、侵入(しんにゅう)してきたシオンの(はな)つあまりにも異質(いしつ)な、そして底知(そこし)れない快楽(かいらく)気配(けはい)()()たりにして、わずかに動揺(どうよう)(いろ)()かんでいる。


「……お(まえ)が、()四天王(してんのう)次々(つぎつぎ)(ほふ)り、ここまで辿(たど)()いたという人間(にんげん)(おとこ)か。ただの異物(いぶつ)ではないな、貴様(きさま)はいったい……何者(なにもの)だ」


 魔王(まおう)(おも)(ひく)(こえ)()いかける。


 その眼光(がんこう)(するど)く、全身(ぜんしん)から()()魔力(まりょく)(たし)かに圧倒的(あっとうてき)なものだったが、シオンの(くちびる)には()ややかな余裕(よゆう)()みが()()いていた。


(おれ)か? (おれ)はただの、ホストさ!お(まえ)のような存在(そんざい)(ふく)めて、この世界(せかい)のすべてを(あじ)わい()くす(もの)だ。『(せい)捕食者(ほしょくしゃ)』として、お(まえ)のその強大(きょうだい)魔力(まりょく)も、(ほこ)りも、すべてを(おれ)欲望(よくぼう)(うみ)(しず)めてやる」


 シオンが()げた瞬間(しゅんかん)空間(くうかん)温度(おんど)急激(きゅうげき)()()がり、八人(はちにん)美女(びじょ)たちと下僕(げぼく)たちが一斉(いっせい)殺意(さつい)(くる)おしいほどの愛執(あいしゅう)()めた視線(しせん)魔王(まおう)へと()けた。


 魔王(まおう)(おのれ)()(せま)異様(いよう)気配(けはい)察知(さっち)し、(はじ)めて(しん)意味(いみ)での恐怖(きょうふ)(おぼ)えたように()()がろうとする。


 しかし、すでにシオンが(はな)った紫黒色(しこくしょく)(あみ)玉座(ぎょくざ)()全体(ぜんたい)完全(かんぜん)(おお)()くしており、()()などどこにも(のこ)されていなかった。


「さあ、最後(さいご)営業(えいぎょう)時間(じかん)だ。()(さけ)ぼうとも、(おれ)(うで)(なか)永遠(えいえん)(おぼ)れるがいい」


 シオンの号令(ごうれい)とともに、世界(せかい)()るがす最後(さいご)決戦(けっせん)が、(みだ)らで圧倒的(あっとうてき)熱量(ねつりょう)(ともな)って(まく)()けようとしていた。





(だい)63()(つづ)





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