【第24話】受付嬢イリス
水の都『アクア・ヴェイル』の運河が浄化され、街には昨日までとは別世界の活気が戻った。
歌姫フィオナが沈黙を破り、愛と悦びに満ちた旋律を響かせたことで、淀んでいた水面は鏡のように空の青を映し出している。
都の長老たちはシオンを救世主として崇め、ギルド『青の雫』には彼への謁見を求める人々が列を成していた。
その喧騒の中、ギルドの受付として多忙を極めるイリスは、シオンに強く惹かれていた。
彼女はシオンのパーティーが抱える膨大な報奨金の管理、そして未知の土地での経理担当という重要な役割を志願した。
シオンはその申し出を快く受け入れる。
イリスにとって、それはシオンの側近として、彼の一挙手一投足を見守ることができる、夢にまで見た切符だった。
ギルドの閉館後、イリスは勇気を振り絞り、シオンを呼び止めた。
「シオン様、……一度だけでいいんです。ギルドの仕事でも、経理の確認でもない、私とだけの時間をください。……二人きりで、この街の美しい場所を歩いてみたいんです」
イリスの震える願いに、シオンは余裕のある微笑を返した。
街外れにある『星の滴る岬』。
そこは、月光を反射して青く輝く海を望み、都で一番美しいと言われるデートスポットである。
その夜、仕事着を脱ぎ捨て、淡い絹のドレスに身を包んだイリスは、普段の冷静な受付嬢の面影を消し、まるで夜の精霊のように繊細で美しかった。
岬の先端へ続く小径を、二人は静かな波音を聞きながら並んで歩く。
「……シオン様、私、この街にずっといたけれど、こんなにも景色が綺麗だったなんて知りませんでした。貴方と一緒だから、そう思えるんでしょうか」
イリスが恥じらいながら呟くと、シオンは足を止め、彼女の細い腰を優しく引き寄せた。
波の音が二人の鼓動を加速させる。
シオンの視線は、月光に照らされて艶やかに輝くイリスの鱗へと注がれる。
「イリス、君の瞳が昨日よりずっと輝いているからだ。……俺は、美しいものには嘘をつかない」
シオンが囁きながら唇を重ねると、イリスは驚いたように目を見開き、やがて蕩けるような吐息と共にその身を預けた。
岬の岩場、月の光が降り注ぐ特等席で、シオンは彼女の背中にあるドレスの紐を解く。
衣が滑り落ち、青白い肌が露わになると、イリスは羞恥に震えながらも、シオンの首に腕を回した。
シオンの指先が、彼女の鱗が細かく並ぶ肌の感触を慈しむように滑る。
イリスはシオンの情熱的な愛撫に、喉の奥から甘い声を漏らした。
それは女としての本能的な悦びの調べだった。
「ぁ……っ、シオン、様……っ。あぁ、なんて……なんて心地いいの……っ!」
シオンは彼女を柔らかな芝生へと横たえ、月明かりの下でそのすべてを愛でる。
シオンの舌先が彼女の敏感な場所を執拗に攻めると、イリスは弓なりに身体を反らし、星空を仰いで叫んだ。
シオンが彼女の中に深く、熱く突き刺さるたびに、波音とイリスの甘い吐息が重なり、夜の岬は二人のための楽園と化した。
イリスは、シオンの背中に腕を回して、夢中で彼を追い求める。
シオンという男の支配が、彼女の思考を真っ白に塗り替えていく。
何度も何度も繰り返される愛の交歓の中で、イリスは自分が経理担当という役職など忘れ、ただシオンを求める雌としての自分に気づく。
頂点に達した瞬間、イリスの瞳には星々の光さえも霞むような、至福の悦びが宿った。
愛の果て、シオンの胸の中で静かに息を整えるイリスは、もう二度と彼の手を離さないと誓うように、きつく彼を抱きしめた。
「シオン様……私、貴方のパーティーの経理として、一生……いいえ、死ぬまでお側にいます。私のすべてを、貴方様の管理下に置いてください」
シオンは彼女の額に口づけをして、満足げに微笑んだ。
彼の伝説は、次の街、次の獲物へと向けられ、さらなる広がりを見せようとしている。
大陸を巡るシオンの旅路に、終わりはない。
第25話へ続く




