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【第14話】妖精族ルミナリア


 『忘却(ぼうきゃく)迷宮(めいきゅう)』の()(ぐち)は、巨大(きょだい)岩山(いわやま)亀裂(きれつ)(なか)にあった。


 周囲(しゅうい)には(ふる)びた石像(せきぞう)()(なら)び、数千年(すうせんねん)(まえ)文明(ぶんめい)がここに(ねむ)っていることを無言(むごん)物語(ものがた)っている。


 荒野(こうや)暴君(ぼうくん)()(ぐち)付近(ふきん)待機(たいき)させ、(おれ)たちは慎重(しんちょう)迷宮(めいきゅう)(なか)へと(あし)()()れた。

  

「……空気(くうき)(おも)い。ただのダンジョンじゃないわ。(ふる)魔力(まりょく)(よど)んで、まるで()きているみたい」

  

 リーナが(つえ)(かま)え、周囲(しゅうい)警戒(けいかい)する。


 通路(つうろ)(かべ)には不思議(ふしぎ)発光石(はっこうせき)()()まれ、(あわ)青色(あおいろ)(ひかり)(はな)っている。


 (おれ)先頭(せんとう)(ある)きながら、周囲(しゅうい)(ただよ)魔力(まりょく)(しつ)観察(かんさつ)していた。


 ここは、かつて(だれ)かが「管理(かんり)」していた場所(ばしょ)だ。


 迷宮(めいきゅう)そのものが、侵入者(しんにゅうしゃ)排除(はいじょ)するための意思(いし)()っているかのような、そんな(いや)予感(よかん)がする。

  

面白(おもしろ)いな。ギルドの連中(れんちゅう)(こわ)がるのも無理(むり)はない。だが、(おれ)にとってはここも巨大(きょだい)VIP(ビップ)ルームに()ぎない」

  

 (おく)(すす)むにつれ、通路(つうろ)(ひろ)がり、やがて巨大(きょだい)地下空間(ちかくうかん)へと()た。


 そこには、(おれ)たちが予想(よそう)もしなかった光景(こうけい)(ひろ)がっていた。


 一面(いちめん)(ひろ)がる地底湖(ちていこ)、そしてその中央(ちゅうおう)()かぶ小島(こじま)に、(うつく)しい建築物(けんちくぶつ)()(なら)んでいる。

  

「……あれは?」

  

 エルザが()(ほそ)める。


 小島(こじま)建築物(けんちくぶつ)から、数人(すうにん)(かげ)(あらわ)れた。


 彼女(かのじょ)たちは、人間(にんげん)とは(あき)らかに(こと)なる特徴(とくちょう)()っていた。


 背中(せなか)透明(とうめい)(はね)()ち、(はだ)月光(げっこう)のように(しろ)く、そして(みみ)(なが)(とが)っている。


 迷宮(めいきゅう)守護者(しゅごしゃ)なのか、あるいはこの()(かく)()種族(しゅぞく)なのか。


 彼女(かのじょ)たちは(おれ)たちを()つけると、一斉(いっせい)(ゆみ)(かま)えた。

  

「……侵入者(しんにゅうしゃ)。この聖域(せいいき)(あし)()()れた(おろ)(もの)よ。(わが)()は『妖精族(ようせいぞく)族長(ぞくちょう)ルミナリア。(われ)らの一族(いちぞく)(まも)りし(ねむ)りを(みだ)すならば、()(もっ)(つぐな)うが()い」

  

 ルミナリアと名乗(なの)った長身(ちょうしん)女性(じょせい)が、(するど)(こえ)()(はな)つ。


 彼女(かのじょ)たちの(ゆみ)からは、(かぜ)魔力(まりょく)(まと)った()(はな)たれた。


 リーナが素早(すばや)防御魔法(ぼうぎょまほう)展開(てんかい)するが、()威力(いりょく)(すさ)まじく、障壁(しょうへき)火花(ひばな)()らして(きし)む。


()て! (おれ)たちは(たたか)いに()たわけじゃない」

  

 (おれ)()()げ、あえて武器(ぶき)(おさ)めて(まえ)()た。


 彼女(かのじょ)たちが(おれ)のスキル(せい)捕食者(ほしょくしゃ)(あらが)えないことを確信(かくしん)している。


 ルミナリアは(おれ)唐突(とうとつ)行動(こうどう)戸惑(とまど)ったのか、一瞬(いっしゅん)だけ(ゆみ)()ろした。


 (おれ)はホスト時代(じだい)(みが)()げた「最高(さいこう)微笑(ほほえ)み」を彼女(かのじょ)()け、一歩(いっぽ)ずつ水面(すいめん)(ある)いて小島(こじま)へと(ちか)づく。

  

(なに)をする……! ()まりなさい!」

  

 ルミナリアが警告(けいこく)するが、(おれ)()彼女(かのじょ)(こころ)奥底(おくそこ)見透(みす)かしていた。


 彼女(かのじょ)たちの(ひとみ)には、一族(いちぞく)(まも)るという重圧(じゅうあつ)と、何百年(なんびゃくねん)もこの(くら)迷宮(めいきゅう)()ごしてきた孤独(こどく)(かげ)として(きざ)まれている。


(きみ)たちは、(わす)()られた守護者(しゅごしゃ)だ。だが、(おれ)()っている。(きみ)たちが、本当(ほんとう)(そと)(ひかり)()びたがっていることを。(だれ)かを()っていたことを」

  

 (おれ)言葉(ことば)空間(くうかん)(ひび)くと、ルミナリアの(ゆみ)()から(こぼ)()ちた。


 (おれ)彼女(かのじょ)()(まえ)()()まり、その(ほお)()()える。


 彼女(かのじょ)(はだ)(こおり)のように(つめ)たかったが、(おれ)(ねつ)()れた瞬間(しゅんかん)、わずかに(あか)らんだ。

  

「あ……っ」

  

 ルミナリアが(ちい)さく(あえ)ぐ。


 彼女(かのじょ)たちの仲間(なかま)もまた、(おれ)(まと)うオーラに()()まれ、次々(つぎつぎ)武器(ぶき)()ろしていく。


 (おれ)はスキル『(せい)捕食者(ほしょくしゃ)』を、彼女(かのじょ)たちの魔力回路(まりょくかいろ)接続(せつぞく)するのではなく、彼女(かのじょ)たちの「孤独(こどく)」に浸透(しんとう)させた。


 この迷宮(めいきゅう)守護者(しゅごしゃ)たちを、(おれ)というホストの「顧客(こきゃく)」へと()()えるのだ。

  

「これからは、(おれ)(きみ)たちの孤独(こどく)(すべ)()()めてやる。(そと)世界(せかい)よりも、もっと(あま)く、もっと刺激的(しげきてき)(よる)を、毎日(まいにち)でも(あじ)わわせてやるさ」

  

 ルミナリアは(おれ)(むね)(あたま)(あず)け、(ふる)えながらも(おれ)()()れた。


 (ほか)妖精(ようせい)たちも、(おれ)にすがりつくようにして(あつ)まってくる。


 迷宮(めいきゅう)(つめ)たい空気(くうき)が、(おれ)たちの吐息(といき)(ねつ)()びていく。


「シオン。あんた、本当(ほんとう)(そこ)なしね。ダンジョンの奥地(おくち)で、(あたら)しい部族(ぶぞく)(まる)ごと()()れるなんて」

  

「これも必然(ひつぜん)出逢(であ)いなのさ」

  

 (おれ)はルミナリアの(かみ)(ゆび)()き、彼女(かのじょ)迷宮(めいきゅう)最深部(さいしんぶ)案内(あんない)するよう指示(しじ)した。


そこには、この()(まも)理由(りゆう)となった「遺物(いぶつ)」が(ねむ)っているはずだ。


 それをも(おれ)のものにすれば、この冒険(ぼうけん)報酬(ほうしゅう)は、ギルドの金貨(きんか)などとは比較(ひかく)にならないほどの価値(かち)()つことになる。

  

 妖精(ようせい)たちの(みちび)きで、迷宮(めいきゅう)のさらに(ふか)場所(ばしょ)へと(あし)()()れる。


 (おれ)たちの(うし)ろには、さきほどまで(おれ)(ころ)そうとしていた彼女(かのじょ)たちが、忠実(ちゅうじつ)従者(じゅうしゃ)のように(れつ)をなして(ある)いている。


 地底(ちてい)暗闇(くらやみ)が、(おれ)たちの到来(とうらい)(いわ)うかのように()らめく。

  

 この迷宮(めいきゅう)真実(しんじつ)()(もの)は、(おれ)たち以外(いがい)にいない。


 ……さあ、最深部(さいしんぶ)には(なに)(ねむ)っているのか。


 迷宮(めいきゅう)奥深(おくふか)く、未知(みち)秘宝(ひほう)(おれ)到来(とうらい)()っている。

  


  

(だい) 15()(つづ)





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