表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
45/45

対決

「もう終わった?」


母さんの後ろから声が聞こえてきた。


「「ルナ!?」」


ユズハとキョウが目を見開く。


「あ!いた!遥ちゃん!

会いたかった!」


ルナはキョウとユズハを完全にスルーして、勢いよく俺に抱きついてきた。


「ちょ、ちょっと!やめて!ルナさん!」


「ルナお姉ちゃん!」


「ル、ルナお、お姉ちゃん……」


「さあ、帰ろう!遥ちゃん!

お土産いっぱい買ってきたから!」


ルナは俺の手を掴み、そのまま引っ張って行こうとする。


……嫌な予感しかしない。


「ちょ、おい!ルナ!」


キョウが慌てて呼び止めた。


「あ、姉さんたち久しぶり!

二人とも変わらないわね」


ルナは素っ気なく手を振る。


1000年ぶりの邂逅って……。


「ちょっとルナ!

もう少し待ちなさい!」


「えぇ。

だって早く遥ちゃんに着せたいんだもん」


「な、何を!?」


「分かってる。

けど、それは後のお楽しみよ」


母さんが悪い笑みを浮かべる。


俺は、この後どうなってしまうのだろうか……。



「な、なあ……リン姉」


キョウが遠慮がちに口を開く。


「そいつ……あ、いや……その子は本当に姉さんの息子なのか?」


「ええ。本当よ」


母さんは優しく微笑むと、俺の頭にそっと手を乗せた。


「日向 遥。

17歳。私の息子」


その一言に、二人は黙ったまま俺を見つめる。


「ほら」


母さんが軽く俺の肩を叩く。


「アンタも挨拶しなさい。

一応これでも”叔母”なんだから」


「「お、お、オバっ……!」」


「は、初めまして……。

日向 遥です」


展開が異常すぎて、頭が全く追いつかない。


「挨拶も終わったし、もういいでしょ!

行こ!遥ちゃん!」


再びルナが俺の腕を引っ張る。


「ちょっと待って!」


今度はユズハが呼び止めた。


「何でアンタ、そんなに遥くんのこと知ってるのよ?

赤ちゃんの頃から見てたの?」


「ううん」


ルナは首を横に振る。


「知ったのは、つい先日」


「じゃあ、何でそんなに親しげなんだ?」


「ああ、それはね」


ルナは自分の頭を人差し指で軽く叩いた。


「リン姉さんに、遥ちゃんの記録を全部見せてもらったから」


ゴクリ。


二人が同時に唾を飲み込む。


「あ、あの……リン姉さん」


ユズハがおずおずと尋ねる。


「私たちにも見せてもらえる?」


「別にいいけど……」


母さんは首を傾げる。


「何でよ?」


「だって……」


ユズハは俺とルナを見比べる。


「あの”ルナ”が、一人の人間にあんなに執着してるのよ?」


「それに、私たちにも子供が産めるって……」


「気にならない訳ないじゃない」


「それもそうね」


母さんは納得したように頷いた。


「分かったわ」


そう言うと、自分の額に指を当てる。


「よし。

じゃあ二人とも準備はいい?」


「はい」


「ああ」


二人は目を閉じる。


母さんは二人の額へそっと手を当てた。


数秒後。


「……終わったけど、どう?

二人とも」


「「…………」」


二人は何も言わない。


そのまま、ゆっくり俺の方へ歩いてくる。


「……遥」


キョウが静かに口を開く。


「今日はもう遅いし、ウチに泊まっていけ」


「……は?」


「そうよ!」


ユズハも身を乗り出す。


「今日は”私”と一緒に寝ましょう!」


「へ?」


「いや!」


キョウが割って入る。


「ユズハはリン姉のところに泊まれ!

今日は遥と私で飲み明かす!」


「何でよ!ここの家賃、誰が払ってると思ってるのよ!」


呆然とする俺をよそに、二人は言い争いを始めた。


「ちょっと勝手なこと言わないで!

今日は私が遥ちゃんに色んな服を着せるんだから!」


さらにルナが参戦する。


「ルナはこの前、赤ちゃん服着せたじゃない!」


「今度は私たちの番でしょ!」


「何でそのことまで知ってるんだよ!」


……情報がアップデートされていた。



それから数分。


三人は揉めに揉めていた。


「よし、分かった!」


キョウがパンッと手を叩く。


「遥の背中は私が洗う!これでいいな!」


「何でよ!

遥ちゃんの背中を流すのは私でしょ!」


ユズハが即座に反論する。


「順番が違う!

私が一番最初に遥ちゃんを知ったんだから、私が一番!」


今度はルナが割って入る。


……話がおかしな方向へ進んでいる。


「ちょ、ちょっと待って!」


俺は慌てて口を挟む。


「何でそんな話になってるの!?」


「え?」


三人が揃って首を傾げる。


「だって今日、遥ちゃんがお泊まりするのは確定でしょ?」


「うんうん」


キョウとユズハも当然のように頷く。


「……はい?」


確定なの?


「そうなると、お風呂に入るじゃない?」


「ええ……まあ、そうなる……のか?」


「だから誰が遥ちゃんと一緒にお風呂に入るかって話になるの」


「すみません」


「全然意味が分かりません」


本当に意味が分からない。


「遥!私と入るよな!

こう見えて私は背中流すの得意なんだぞ!」


キョウがタオルを振り回す。


絶対やったことないだろ。


「遥ちゃん!

私の背中流しはね、例えるなら、そうスケートリンクを滑るみたいに滑らかなの!」


ユズハが胸を張る。


傷だらけになりそうだ。


「ねぇ、遥ちゃん!」


ルナが満面の笑みを浮かべる。


「知らないおばちゃんたちに背中流されるより、若くてぴちぴちのお姉さんの方がいいわよね?」


俺から見れば、


どんぐりの背比べなんだけど……。


「おい!ルナ!」


キョウが額に青筋を浮かべる。


「お前も同じような歳だろ!」


「そうよ!」


ユズハも続く。


「アイドルやってたって実年齢は私たちと変わらないじゃない!」


「そんなことないですぅ!」


ルナが頬を膨らませる。


「私は毎日、お肌も髪もちゃんとお手入れしてるもん!」


再び三人の言い争いが始まる。


……もうどうするんだ、これ。



「いい加減にしてください!」


今まで黙っていたヒカリが立ち上がった。


全員の視線が集まる。


「だ、誰が一緒にお風呂に入るかなんて!

そ、そんな……ふ、ふ、ふ、不純なこと。

許せません!」


顔を真っ赤にしながら叫ぶ。


よし!

頑張れヒカリ!

今だけは全力で応援する!


「何だよ。ヒカリ。

お前には関係なーー」


「……あ!ああ、そうか」


キョウが突然手を叩く。


「悪い悪い!

そりゃヒカリも参加したいよな!」


「遥のことだし!」


「な、な、な、何を言って……!」


ヒカリが固まる。


「そっか。

ごめんね!気が利かなくて!」


ユズハまで頭を下げる。


「そうだよね!」


ルナも嬉しそうにヒカリの手を握る。


「じゃあヒカリちゃんも今日は遥ちゃんとお泊まりね!」


……どうやら、


余計な情報までアップデートされていたらしい。


「え、えっと……」


ヒカリは真っ赤な顔のままスマホを取り出す。


「ちょっと母に連絡してきます!」


「え?」


数十秒後。


ヒカリが満面の笑みで戻ってきた。


「OK出ました!」


「早っ!」


思わず叫ぶ。


「簡単すぎるだろ!

お前のお母さん大丈夫か!?」


男子高校生の家へのお泊まりを、

そんな即決で許す親がいるのか!?


「あなたと一緒にしないで!

私の両親は私を全面的に信頼してるの!」


ヒカリは胸を張る。


おーい!

ヒカリのお母さーん!

お宅の娘さん、

どんどんおかしな方向へ進んでまーす!


……まあ。


俺にも多少責任はありそうだけど。

そこは全力でスルーしたい。



「よーし!」


キョウが再び手を叩く。


「全員揃ったところで!」


「『遥の背中を流すのは私だ!』勝負を始めるぞ!」


「望むところよ!」


「勝ちは見えてるわ!」


「絶対に負けません!」


三者三様の返事が返ってくる。


「ちょっと待て!」


俺はヒカリを見る。


「ヒカリ!

お前、意味分かって参加してるのか!?」


「ふふふ……」


ヒカリが不敵に笑う。


「私が勝負事で負けるわけないでしょ?

見てなさい!

ふふふふふふ……」


目が据わっていた。


……アカン!

完全にテンパってる!


こうして全銀河を巻き込むことになる。

『遥ちゃんの背中を流すのは私だ!』対決の火蓋は、

今、切って落とされたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
SF / 学園 / ギャグ
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ