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【裏話3】地球リセットと時間の不連続性

坂本隆二(香坂流星)


取り込んだデータを見る。青い波型と長時間の無音が繰り返されていた。


不可解だ。


昨日の今日なのに、録音時間がやたらに長い。

ときどき、レコーダーには二人の会話が入っている。マンションで話すのとは違うテンションだ。


「りおりお!会いたかった!てか何で自転車乗ってんの?!それ何アピールなの?!」

「だって乗りたかったのに佐々木さんが車に積んじゃって乗らせてくれなかったじゃない!」

「ねえ、もしかして別れたばっかでもう次の男の好感度アップ考えてるの?!ひどくない?!」

「はあ?!てかその言い方が酷くない?!」

そこに幼い子供の声が割り込む。

「りお、お腹すいたおー」

「わう!わう!」

「じゃあご飯食べて今日の分の仕事終わらせたらエーテーシーに魔力草取りに行こう。アトソーヌの群生地より近いから地球と往復で取れるだけ集めたい」

「そうだよね。村人のMP全然足りないし」

「ついでだから魚もエビも買ってこよ。今日はブイヤベースにするね。米かパスタかパンどれがいい?」

「ぶいやべー!」

「ノッテはにゃんこだからだめ。こっちの蒸したの食べな。ね。カリクも」

「ブイヤベースめっちゃ好き!佐々木さんよくこんなの自力で作れるよね。てか私炭水化物無しで」

「だめだよ。ちゃんと食べて」

「じゃあオートミールで」

「もう。わかったよ。でもブイヤベースの素がまさかアトソーヌの野菜と香辛料で再現できるとは!」

「アトソーヌの畑の恵みとエーテーシーの海の幸の融合や〜」

「ふふふ。なにそれ」


彼らは一体何を話している?一体どこで二人で会っている??


「うーん。ここから動画見ても視聴者数増えないね」

「知ってる。戻っても反映されない。向こうは時間止まってるしパーティメンバー限定回線だからね」

「回線については検証しないと」


回線?戻っても反映されない?ゲームの専門用語なのか?


「そうだね。ねえ関屋さん。また魔力草行こ」

「んー。そだね。エーテーシーこの前のイベントから時間経ってなかったのビックリだよね。ドア開けない限り時間経たない仕様なんだ」

「じゃあ今回は僕ここで待つからさ、君が地球リセットしてくれる?3回おきに僕の時間帰ろ」

「わかったけど一旦仮眠してからね。地球戻るのは私がやる」


地球リセット?僕の時間?彼らは一体何を言ってる?


「ノッテ、りお起こしてきて」

「あーい!りおー!おきてー!」

「わう!」

「りお起きて。新しい魔法作ったんだけど僕習得できないんだ。君が発動だけして魔法共有してよ」

「んー。これなに?」

「透明化。透明になれたら地球で飛べるでしょ?」

「んー。むずい。消えた私がどこにいるのかとかイメージできない」

「あー。そうか。無理か。じゃあ同じ理由で転移も無理かな。どこにどうやって出るか想像できないもんね。まず消えてるのに存在してるってのがね。うむむ。動画にするの難しいな」

「りおー。アオー。エーテーシーいこいこー。さかなさかなー」

「そうだね。いこか。ノッテ」


「てか自転車置きっぱだった」

「いいから。そんなのそこ置いて早くいこ。そんなのもう地球持ってかなくていいよ」

「もう。そんなことばっか言って。ねえ、もしかしてまた寝てない?」

「大丈夫。僕まだまだいけるから」


寝てない?


「だめだよ。一旦リセットして佐々木さんも仮眠しよう。また病んでくるよ?!」

「じゃあ魔力草一回取ってからその時リセットしよ。一緒に仮眠しよ」

「いや一緒は無理」

「ええ?普通この流れで断る?」


リセットって、なんだ。


彼らは自転車を置いたまま数時間どこかへ行く。無音、戻って来て会話、仮眠、どこかへ行くを繰り返している。ほとんど無音だが、レコーダーの時間は連続でもう40時間を超えていた。


どういうことだ。


「りおりお!やっと間取り終わった。次内装。魔力草任せてごめんね」

「ええ!仮眠する約束したのに騙したな!ちゃんと睡眠コンサルタントのいうこと聞かないとダメだよ!」

「ごめんね。僕らの家楽しみすぎてさ。じゃあ今日この辺にしよ。明日また夜念話して一緒に戻ってこよ」

「うん。あ、自転車しまわなきゃ」

「それもういらないでしょ。ここで乗ればいいし」

「だめだよ。地球の暇つぶしに必要なの」


無音になった。


頭がおいつかない。彼らは地球と異世界を往復していて、異世界では時間が経過しない。それを利用して二人で長時間過ごしている。ずっと。

だとしたら今ここにいる俺は何だ。彼らが異世界にいる間、俺の心臓が止まっているというのか?


彼女らは……何者なんだ。

知りたい。どうしても。本物の異世界がそこにあるのに。


俺が、俺が差し出せる対価はなんだ。


家の中を漁る。確かあったはずだ。


俺は非常階段一階の手すりの裏側に、小型カメラを設置した。

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