5話 未クリア
さて、昼食はカレーチキンピラフである。
タッパーに入れて公園で食べようかななんて考え中。食べた分だけ歩く作戦である。昼間ならカリクには会うまいて。
「ふっふー。おいしそー。」
炊飯器の米を起こしているとインターホンが。
モニターには何か箱を持った佐々木さん。
「うぇー。まじか。」
出ると菓子折りと封筒を渡してくる。
「これ、先日のお詫びとクリーニング代です。」
「ええ。あの、じゃあこっちのお菓子の方だけ頂きます。こっちは受け取れませんので。ごめんなさい。」
「でも怪我してましたよね?手のひら。」
佐々木氏は食い下がる。絶対に借り作らないマンだこいつ。
「え?見間違いじゃないの?」
私は手のひらを見せた。
「ええ?!嘘だあ!何それ!何だかなあ。腑に落ちないんですよ。色々と。」
この人よく見てるな。怪我なんか私自分でも気付かなかったよ?なんせ私はHP8000もあるのだ。
「他に何か気になる事が?」
「これは関係無いかもですけど。カリクの口臭が急になくなりまして。」
ううむ。クリーン使ったのはまずかったか。
誤魔化さないと。
「それはあれですね。美しすぎる私の顔を舐めたから浄化されたんですよ。」
「ブフッww何それwwやばい。面白い人ですね関屋さん。」
お。ウケた。意外なほど笑うなこの人。もしかしたら楽しい人かも。だがお腹がすいたのでそろそろ帰っていただきたい。
「実は今日ご飯が美味しくできてご機嫌なんです。」
「そうですか。カレーの良い香り。ご飯時にすみません。帰りますね。では。」
おお。強引な人かと思ったら気遣いもできる人だった。
「お気遣いありがとうございます。」
『報酬 イベント菓子折り 佐々木蒼太好感度大幅アップ ご近所付き合い技能極小』
大幅アップってなんだ!
『このイベント中に好感度が3度上がりました。タイミング的に理由は不思議な人だから、面白い人だから、帰らせ方がスマートだからといったところですかね。』
私はカレーチキンピラフを二人分お皿によそって夕食分とした。私は同じものが続いても平気な人なのだ。昼夜で一気に炊飯器調理とか楽勝だ!
とりあえず残りをタッパーに詰めて炊飯器をクリーン。カレー臭さが解消されて最高じゃないの!
カレーピラフとかタッパーに入れたら黄色くなっちゃうけど、クリーンがあるから平気だと嬉しくなる。
公園のベンチに座ってカレーピラフを食べていたら目の前にカリクが。お座りして尻尾振ってるがお前多分これ食べたら病気になるぞ?玉ねぎも香辛料もたんまり入っているのだ。
「カリク、これ人間のだから食べられないよ?」
というか飼い主は何をやっている。しばらくすると必死にカリクを呼ぶ声が遠くから聞こえる。カリクはお座りして私の方を見て嬉しそうに尻尾を振っているだけで呼び声に答える気配もなければ微動だにもしない。おい、飼い主信頼関係大丈夫か?!
「カリクー!カリクー!あっ!居た!!おいで!!」
「わう。」
呼ばれてカリクは佐々木さんの方に向かう。
「よしよし。勝手に出掛けちゃだめだよ。心配するからね。」
佐々木さんはしゃがんでカリクを撫でた。
「こんにちは。何やってるんですか。放し飼いはだめですよ。」
「すみません。よくリード外れるんですよ。」
いや買い替えろ!
「こういうワンタッチのやつじゃなく、もっとしっかりしたものに買い替えれば良いのでは。」
「そうですね…分かりました。そうします。」
と言って隣に座るのか。佐々木さん距離感分かんない人か?世渡り大丈夫か?
「カリク伏せ。」
カリクは目の前に伏せた。思ったより賢いな。
「カリク、おやつだよ。よし。」
佐々木さんはカリクに小さなおやつをひとつあげた。
「よく公園に来るんですか?」
「いいえ?昨日からです。この後ジョギングしようと思って。」
「ええ。食べた後にジョギングってお腹痛くなりません?」
「なるんですか?ジョギング自体昨日からなのでよく知らなくて。」
「じゃあお腹落ち着くまで少し話しません?あっ、嫌だったら良いんです。やっぱり僕帰ります。」
と言ってカリクを連れて帰ってしまった。何なんだ一体。情緒不安定か。
『露骨に警戒が顔に出ていたと思われます。』
そういうつもりは無かったのだけど。
ちなみに今のはイベントですか?
『公園で佐々木蒼太と遭遇 未クリア』
失敗じゃなく未クリアという事は追行可能?本日のみ?
『可能です。本日でも別日でも、遭遇できればまた始まります。』
報酬は?
『権限がありません。』
ん?なにそれ。
『分岐で変わるので現時点ではお伝えできません。』
良いものだったら頑張ろうと思ったのに。
『そ、そう言われても秘匿事項であるためお伝えできません。申し訳ありません。』
いやいや、プレッシャーかけてごめんよ。
ちなみに、ジョギング30分は頑張った。お腹は痛くならなかった。
『ちなみに痛くなる事もあります。その場合は治癒しましょう。』
ナビさんは優秀だ。
治癒極小は使いまくったので初日に治癒になっている。
カレーピラフのレシピが錬金術に追加された。
その日はインターネットでレシピ検索などして過ごしていると、父親が帰宅。
「お前に宅配が来たよ。」
全く気付かなかった。定期購買のプロテインバーだ。だけどご飯作る様にしているからもう定期購買をやめよう。
「ありがとう。毎日ご飯ものでごめんね。私レパートリー少なくて。」
「いいや、やっぱり手作りは美味しいぞ!ありがとうな。家の中も綺麗で嬉しい。風呂もトイレもピカピカでびっくりしたよ。」
クリーン様々である。
「へへへ。家事手伝いらしい事したくて。」
「家事は割と大変だから、無理するなよ?」
いや、割と大変な家事を今まで押し付けててすんません。言ってくれればやったのに。
「買い物の領収書はある?」
「あ、捨てちゃった。」
「そうかい。じゃあとりあえず三万円渡しとくよ。」
「ええ。お金とかいいよ。」
「いやいや。食費だから。足りなくなったら言ってくれ。」
『報酬 家事手伝い宣言 関屋豊好感度アップ』
領収書無いから困ったな。
『捏造すれば良いのでは。』
それは良くないよ。もし何かで使う場合偽造になる。
『では仮に家計簿を付ける癖を付けてみては。』
誰か領収書くれないかなあ。
『では明日スーパーのレジ前の箱に捨ててあるやつを取りにいきましょう。収納袋を使えば触らず取れます。』
ええ?!触らず取れるの?!というか、領収書を盗むのは犯罪では?!
それから始まりの部屋のプールをクリーンして泳ぎまくった!全裸で!!だって水着を持ってないんだもん!!水着って高いよね!
プールは体に負担なく痩せると聞いたから時たま泳ごう。