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第47話 執着する彼と盗聴する親。僕のこの涙さえなかったことにしたくなくて

"絶対に振り返らないで!左斜め後ろボックス席に変装した横井さんが居る!ソロで!"

"ええ?!横井さん活動範囲広くない?!"

"横井さんどこにでも出没してめっちゃ怖いんだけど"

『イベント、クレープシェアを目撃される。完了。報酬横井花恵好感度大幅アップ』

愛陽があえて佐々木さんに聞こえる様に終了告知をした。

"ちょっと何それ"

"ええ、その為のクレープシェアイベントだったの?てか愛陽たん。それ僕に聞かせたの、デートイベントは協力しろって事?"


そうか。私分かったかも。私のパートナー候補だった横井さんの地球でのフラグはまだ折れてないんだ。

彼女が佐々木家に何らかの報酬を貰ったと私に伝えてきた。横井さんを過剰に警戒する佐々木さんについて愛陽が苦言を呈したのも。色々繋がった。

愛陽は抜け道を突いて私達に伝えたいんだ。


"愛陽、好感度アップはナビの任意じゃなく即時告知して。ダウンも告知できるなら教えて。今会ってない人も、会った事ない人も分かる範囲で。盗聴と監視の対策にしたい。イベント発生時告知もお願い"

『了解しました』

"え?どういうこと?"


"佐々木さん、お母さんには全部筒抜けだと思った方がいいよ。横井さん多分お母さんに雇われてる"

"まさか?!"


だけど横井さんが噂を流す理由は何だろう。雇い主の家族の秘密を漏洩するとは思えない。横井さんの考えでないとしたら…。


"マンションでの噂もお父さんへの告げ口も、お母さんに警告されているのかも。気付くのが遅かった"

"ええ…!そんな"

"このままじゃ取り返しつかなくなる。一芝居打つよ"


私は言った。


「WEBの仕事は引き続き在宅でやるし、役員もちゃんと責任持ってやるからもうこれ以上貢がないで。お給料もいらない。貰った分は働いてちゃんと返すから」

「そんな。僕が勝手に貢いだのに返すなんて。君の負担になるだけじゃない」

「断らなかったのは私だよ。もう帰ろ。佐々木さん、途中からでも今日の仕事ちゃんとして」

佐々木さんは言葉に詰まった。迫真の演技だ。


「次はもう貢がないから。だから返さなくていいよ。迷惑かけたままとか嫌だ。僕借りを作るのは絶対に嫌なんだ」

分かってくれないふりをするつもりか。これで別れを演じて、横井さんに情報を持たせてミッションコンプリートだ。


「佐々木さん。何度言っても分かってくれないなら仕方ない。これからは仕事はメールでやり取りしよう。もうこういうのはやめよ。お互いのためにならない」

「ええ?!それはやだよ。次はちゃんと割り勘にするから。安いとこならいいでしょ?」

あれ?!これもしかして本気で言ってる?!なんで?!


"親の信用を得るためだよ。向こうではいつでも会えるから。ここは演技を続けて"

"だって。向こうでも別行動だったじゃない"


「このままじゃ私WEBの仕事すら関われなくなる。せっかく手に職付けて親から自立できると思ったのに」

「それは僕だって困るよ。本当に手が足りなくなる」

「じゃあ分かってよ。下手したら佐々木さん自身もWEBの仕事やめさせられるよ?」

本当に危機感持ってよ。夢なんでしょ?


だというのに彼はまだ食い下がる。


「君がアイディアくれた動画で仕事が増えてるんだ。感謝してる。仕事の事は分かったから、もう会わないとか言わないでよ」

「了承してくれないなら一人で帰る。私の自転車返してくれる?」

「マンション遠いでしょ?今日は車で一緒に帰ろうよ」

「じゃあ帰るのは一緒に帰る。でも今日で最後。帰ったら今までの借用書送ってね」

「……分かった。もっと仕事増やすね。勝手に貢いだのに返させてごめん。迷惑かけてごめん」

「私こそ甘えてごめん。今まで楽しかった。ありがとうね」

「うう。やっぱりやだよ」

「仕方ないよ。ね」

「うう」


佐々木さんの目から涙がこぼれた。この人は俳優の素質があるかも知れない。

『佐々木葵好感度アップ』

やっぱり!親に盗聴されてる!!


「帰ろ」

「わかったよ」

佐々木さんはぐずぐず言いながら店を出て車に乗り込んだ。

「関屋さん僕」

「話したくない」

「そんな。最後なのに」


"佐々木さん。帰ったらすぐに盗聴器探して。でも演技がバレるから破棄しないで。さりげなく探して場所だけ把握してしばらくそのまま過ごして後日撤去で"

"うう……え?!盗聴?!"

愛陽、もし盗聴されてた場合異世界の事バレてる?

『いいえ。異世界のインターネットはパーティメンバーのみ適応です。地球でその話をしてもゲームの話にしか聞こえません』

よし、方向性は決まった。

"これからは念話にして"

"ううう。地球でもう話せなくなるの?うう"

ええ。演技かと思ったらほんとに泣いてるし。向こうでいつでも会えるっての。

彼と私の認識の差があまりにも大きい。


『莉緒さんって結構ドライですよね』

ええ?私が変なの?!

とにかく地球で買ったものを異世界で食べるのもやめよう。彼にお金を使わせないようにしないと。きっとそのための農村イベントなんだ。


佐々木さんはお通夜みたいな顔で管理人室に帰っていった。

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