第13話 非常階段を駆け降りて一万円浮かせてやる!
私は朝から茹でた胸肉をカットしたのと茹で卵、農村で貰ったブロッコリーとキャベツを茹でて中山田きんにく君の筋肉飯を作っていた。マヨネーズをラップでてるてる坊主にして爪楊枝とともに入れる。毎日買って来てくれるお惣菜やお弁当に付いていた醤油も入れた。
マヨ醤油は正義である。
ちなみにきんにく君はオートミールだがパパンには米である。
「今日はちゃんと作れなかったけど、次はきちんとした物を作るから。今日はとりあえずこれ。痩せるお弁当なんだって」
私が手渡したお弁当箱を、まるで宝物のように両手で受け取り、包みの上から数秒見つめていた父は嬉しそうに顔を上げて言った。
「ありがとう。これを食べると痩せるのか?」
「違うよ。これしか食べないと痩せるの。おやつにプロテインバーも入れとくよ」
「いや、嬉しいよ。まさか、お前が弁当を作ってくれる日が来るとは思わなかった。昔、母さんが作ってくれていた頃を思い出すな」
父は少し目を潤ませたように見えた。
「けどお前は一切痩せる必要は無いぞ。佐々木君の好みが華奢とは限らないだろ」
「え!何で佐々木さん?」
「横井さんに聞いたよ。公園でデートしていたんだろ?結婚すれば働かなくても良いとはよく考えたな!」
いや噂早すぎだろう!!てか下手な冗談やめろ!
私は着る服が無くてジョギングの為に公園に行っていると話して弁明したら父親は大笑いする。
「服が全部入らなくなったのか。前よりは健康的で何よりだ!服なんか新しいのを買えば良いだろ。せっかく外に出る気になったんだから」
と言って一万円くれた。
「や、痩せるから大丈夫よ!」
「思い立ったら吉日だぞ?痩せる必要は無い!一着でいいから服を買え。服を買いに行く服が無いならネットで買うんだ。親の言う事は聞けよ?お前は外に出た方が良い。そしてもっと太れ!」
と言って一万円札を押し付けられた。
まじかあ。外に出ない事をそこまで心配されていたとは。
ニート時代の孤独な時間は、お父さんにとっても大きな不安だったのだ。
通知が鳴る。
おっふ!ここでブティックイベントか?!
『ペットショップで猫のおやつを買う』
なんでやねーーん!!
通知が鳴るのと鳴らないの何ですか?
『突発イベントや対人イベント、会話中に突然発生した場合は通知が鳴らないことが多いです。発生タイミングが予め決まっているイベントや自室で一人の時は通知が鳴りますがオフにもできます』
なるほど。了解です。
とりあえず父を送り出したら非常階段を駆け降りる。そして30分ジョギングに。絶対に痩せてやる!!一万円浮かせてやる!!
戻りはもちろん階段駆け上がりだ!!!
水分補給をして冷凍した果物をつまんで一休み。洗濯をして掃除をして、ようやく朝10時。
異世界に行くと時間が余って仕方がないのだ。しかも活動時間が増えるとお腹は空くし普通に眠くなる。眠いからと向こうで寝るとこっちで眠れなくなる。時間配分が難しいのだ。
全色買ったウニシロのワッフル生地のワンピース、これだけは着られる。服を選ぶ時間ゼロ。最強の時短術だ。今日は水色を着よう。いつも同じ服だけど色が違うから噂されないと信じてる。
子供の頃親が大量買いした同じ靴下毎日履いてるとある男子に馬鹿にされたのだ。人に文句言いたい下らない人はどこにでも居る。
「さて、出発!」
徒歩でペットショップに向かう。歩くと痩せると信じている!
『痩せます!ですが小遣いは浮かさずきちんと言われた様に服を買う方が良いと思われます。Mサイズの服を買えば痩せる必要は無くなります!』
いやいや、今ある服勿体無いからね?!
でも何で猫の餌。
『猫の餌ではありません!猫のおやつです!!一番食いつきの良いものを買いましょう』
なるほど。これは先で猫イベント来るやつだな?
……
無視である。




