第六章 集合的無意識とサヨナラグッバイまたあした 4 オーヤマ
鴨川河川敷――
晴れた気分の良い日だ。前は自転車で走るにはガタガタしすぎたのに、綺麗に整備され、快適に走行できるようになった。三条大橋と四条大橋の下では、いつもカップルが等間隔に並んでいる。どこかの大学の偉い教授がこの等間隔理論を取り上げたこともあったはずだ。
オーヤマはベンチに座りながら、煙草を吹かしていた。
「やっぱり気持ちいい」
「そうだね」
オーヤマの横にはケータが座っている。
二人の座ったベンチの前を、一匹のブルドッグをつれた女性が通り過ぎた。女性は大学生位の年齢だった。ブルドッグに手綱は付いておらず、一人の女性の前をブルドッグが歩いている。
「普通のアパートじゃ、犬は飼えないよな」
オーヤマは呟いた。
「だろうね」
ケータは立ち上がると、石を拾い上げた。
「石は落ちる」
ケータの投げた石が、放物線を描き、ブルドッグの体にちょうど上手く当たる。ブルドッグがくるりと後ろを向いたが、二人に気付いている様子はない。
「まあ、きっと人間の言葉が喋れるから大丈夫だろうとか言っているんだろう」
「わん!」
ブルドッグは一度吠えると、
「何に向かって吠えてるの。バカわんちゃん」
女性に引かれ、再び歩き出す。
女性は振り向きもせず、ただ右手を挙げて、オーヤマケータに挨拶を返した。
天国では京都旅行が人気なんだ。
そして、ここ、京都の鴨川の河川敷には、「鴨川等間隔の法則」がある人気スポットだ。「京都・鴨川河川敷に坐る人々の空間占有に関する研究」として研究もされている。
そんなガイドブックには書いていない人気スポットをみんなに語ることができる。
オーヤマとヨーコはよく鴨川河川敷に座って、鴨川のせせらぎに耳をすましていたんだから。




