3 モテモテのニコ
「がははっ。もう娘になれ!」
「遠慮いたします!」
「第2妃では納得できぬか?」
「そこではありません!」
陛下がいつものように頬杖をつきながら、楽しそうに玉座から見下ろし問いかけてくる。
王太子殿下が私を気に入ったらしく、妃に迎えようと熱心に口説いてきたが、断り続けていたら陛下に相談したようだ。王太子殿下は今も膝をついてこちらを見上げ、潤んだ瞳で求婚ポーズをとり続けている。眼鏡を外してくれと何度もしつこいし、ちょっと気持ち悪い。
王太子殿下は、すでに結婚されていて子供もいるし、この場にも同席しているのだ。王太子妃殿下ご本人は、顔に出していないつもりでいるのだろうが、めっちゃ出てるよ! 隠せてないよ! 鋭い目を向けてくるし、ミシミシと悲鳴を上げている扇子がもうポキッと折れそう。怖っ。小さな王子は不安そうにキョロキョロと視線を動かしている。かわいそう・・・。
第2王子殿下は呆れた顔をして兄を見ている。その隣にいる殿下の婚約者は、ドラシス伯爵家を婚約者好みに仕上げたので、私をキラキラとした目で見続けている。
んもう! なんなのよ、この状態は!
依頼料をもらって、すぐ帰りたいの!
そのお金は、陛下の横にある小さな台の上に置かれている。
さて、どうやって切り抜けようか。
陛下との出会いは私が8歳の時。
高貴な方の息抜きと言えば、平民の格好を真似たりして、街に出かけるのが王道だと思うが、陛下は自分の殺気? 威圧? 覇気?それだけを武器に魔物とやり合う事を息抜きにしていた変人だった。
護衛を撒いて、魔法も使えないのに、剣すら持たずにだ。
そんな無謀な陛下がピンチになっているところを私が助けた。
しかもその数、5回!
幼い私は隣国の王様だなんて知らなかったから、2回目の時には呆れた顔で「おじさん、バカなの? 」と言っていた。
豪快な音を出して腹が減ったと、へにょりと眉を下げたおじさんを哀れに思った。お金を持っていない私は、「ここで待ってて」と言って、急いで魚を釣って陛下の所に戻った。火魔法を使い、こんがりと焼いてから、陛下に渡した。陛下は興味津々で私の動きを見ていた。出来上がった魚を「うまいっ! 」と言って全部きれいに食べた。
その後、陛下は武器に釣り竿を2本持つようになった。
この竿は魚の食いつきがとても良い!
だが行動だけでなく見た目も変人になった。
「俺の娘になれ。息子2人でつまらん」
「奥さんとまた頑張りなよ。次は女の子かもよ?」
「俺の息子の嫁になれ」
「やだよ・・・。中身も似てるって言ったよね? ムリぃ」
「なあ、もう俺の嫁にならねえ?」
「・・・年の差を考えてよ。反対されるよ・・・」
この時はいつになく真剣な顔で言うから、ドキッとした。すぐにいつものおじさんの顔に戻ったけど。
冗談から不満まで、色々な話をするくらいまで仲良くなってから、おじさんの正体が王様だと知って、めっちゃ驚いた。
その後は、宰相に懇願され、私と月に1度お茶をする。もしくは釣りを楽しみ、釣れた魚を焼いて美味しく食べてから転移して王宮に帰ることが陛下の息抜きになった。
正直に言うと、陛下が陛下でなければと思う時もあった。
俺の嫁って言われた時は、ドキドキしてるのを隠して平然とするのに苦労した。
たぶんそんな私の思いもバレていて、悪い笑顔で私を見て楽しんでいるのだろうとも思う。
思考がズレて、陛下との出会いを思い出していたら、陛下と私が見つめ合う状態になっていた。
「ニコ・・・浮気は良くないよ? 」
突然、後ろから片手で抱きしめられ、もう片方の手で私の視界が塞がれた。
「求婚してるのは、そこでひざまずいてる王太子だよね? なのになんでそんな目で陛下と見つめ合ってんの? すごく腹が立つんだけど?」
魔法を使い、陛下の横にあったお金の袋をフワフワと引き寄せ、私の手に乗せた。
重っ。 え? いったいいくら入ってんの?
「ふっ、いいね。 お金に思考が移った。 素直で可愛いね、ニコ」
視界を塞いでいた手は、私の髪へ移動して指でクルクルと遊びはじめたが、もう片方の手は私を離さない。
面白がっていた顔をしまい、転移魔法で突然現れた男と目を合わせる陛下。
「月1でも我慢の限界なんですけど? もうやめてくれません?」
「・・・まだそなたのニコにはなっていないはずだが?」
「貴方よりは私の方がつり合うと思いません?」
「・・・」
「・・・」
会話をやめ、お互いが殺気を飛ばしあうと、周囲の者がバタバタと倒れはじめた。
「ちょ、ちょっと2人ともやりすぎっ!」
私は孤児で平民ですっ!
お2人とも身分違い過ぎて、私にはムリ!ムリ! ムリぃ!
もうここにいるのはやだと私は転移を使って逃げ出した。
あ、お金は忘れずにしっかりと抱えているわ!
その後、あの場にいた者達でワチャワチャとした騒動があったらしいが、私は逃げたのでわからない。
きっと次の釣りで愚痴られるのだろう。
もう片方は、帰ればクリス様か旦那様経由で呼び出されるのだろう。
その時はその時だ。
今はたんまりとありそうなお金を数えるのが楽しみでワクワクが止まらないのだっ!
ぐふふのふー。
ありがとうございました。
ご要望があったら続きを書きたいなと思っております。




