Zランク
今まで、大魔王メインの戦いになってしまいましたが、今回は魔術要素もしっかり入れました。
楽しんでくれたら幸いです
この人生で大魔王の力を本気で使う機会なんてほとんどないと最初は思っていた。大体は魔術で済むし、わざわざ使うことなんてないだろうと。
けれど、ふたを開けてみればどうだ。一度は本気を出していないが、もう3回も大魔王の力を使っている。
これが意味することは、俺の魔術が大魔王の力と比べて圧倒的に弱いということだ。
だから、日々を特訓に注いでいるもののいざとなれば力を使ってしまう。
そして、今回もまた力を使っていた。
俺の拳は直撃していた。
「……っハ!?がっ…!」
楓学園長はその拳を受けて、例のごとく、とんでもないスピードで吹き飛んだ。楓学園長を追いかけるために俺は全力で地面を蹴る。バゴォォンと地面に穴が開くほどの威力だった。
俺は、その圧倒的なスピードによって一瞬で追いついた。
だが、次の瞬間、楓学園長の姿は見えなくなる。
「…この感じ…」
見えなくなる時の違和感はやっぱりどこかで感じたことがあった。
俺は急ブレーキをかけ、その場に留まる。
「…ふふふ、あははははは…」
笑い声がすぐ横から聞こえた。
強烈な打撃を受けた楓学園長がそばに立っていた。
「この私にダメージを受けさせるなんて…やっぱり君は私の思った通りだ」
俺は疑問に思った。
「思った通りってどういうことだ?これは実力を正確に測るためのものだろう?」
楓学園長は不敵に笑った。
「私はね、試験の時から君のことが気になっていたんだ。こっそりと見させてもらったんだけど君の動きは異常だった。まるでかの大魔王を見ているようだったよ」
その単語に思わずドキッとする。
勢いのまま全力を出してしまったがまずかったか?
今更ながら若干後悔する。
「この洗礼された動き。いったいどれほどの特訓をすればこうなれるんだ?」
いや、楓学園長はラッキーなことに俺がとにかく特訓した成果だと思っているようだ。
バレないようにするためにもその勘違いを利用する。
「…とにかくたくさんだ。血反吐を吐くほどの特訓をすればこうなれる」
「そうか…なるほど」
「ところでまだやるのか?」
「当たり前だ。たった一撃を見せてもらっただけでは君の本当の実力を測れない。次は魔術を使って攻めてきてくれないかな?」
「分かった…いいだろう」
俺は全身に魔力を満ち満ちさせた。昨日から大魔王の力を使ってばっかりだったため、俺はその感覚を久しぶりに感じた。
俺は魔法陣を発動させる。
魔法にはいくつかの属性がある。まだ、独学で学んだことが多いからはっきりとしたことはわからないが、大きく分けて5つの属性だ。
炎、水、大地、雷、そして闇。
それらは人それぞれに適性があり、俺には炎の適性がある。
魔法陣から巨大な火の玉が出現する。まるで太陽のようなそれは俺がイメージしたとおりに豪速で楓学園長に向かっていく。
だが、それは楓学園長の手でかき消されてしまう。
「…やっぱ、魔術ではかなうわけないか」
「いや、まだわからない。今のよりもはるかに早くはるかに強力な魔術が放つことができればさすがに私もダメージを負う可能性がある」
「それなら…!」
全身の魔力を右手に一点集中させる。魔術の特性で魔力は凝縮させればさせるほど魔術の威力は跳ね上がる。
こういっちゃなんだが、俺は大魔王の力のほかにこの魔術も、人間として生まれるときのこの体のおかげでかなり強力だという自信がある。
そんな俺の魔術を魔力を凝縮してさらに強力にすれば常人ならば一瞬で消し飛ぶほどの威力が放てるはずだ。
魔法陣に炎のイメージをのせる。火炎放射器のように、されど火炎放射器のそれとは比べ物にならない圧倒的な火力をイメージする。
ゴォォォォォオオオ‼‼
瞬間、魔法陣からは想像を絶するような業火が巻きあがった。
「やはり、魔術はその程度か」
その業火から冷静沈着な声が聞こえた。
「は?」
楓学園長が手で燃え盛る空間を凪ぐ。
地獄のような業火はそれだけで一瞬で消え去った。
「身体能力が足を引っ張っている感じがする。どうにかして魔術の腕を上げてもらいたいところだけど…」
中から出てきた楓学園長は全くの無傷だった。しかも考え事をしながらだった。
「…化け物じゃねえか」
その目を疑ってしまう光景に、そうつぶやいてしまった。
「そうかな?君のほうも身体能力だけで言えばきっと世界最強クラスだと思うよ」
確かにそうだけど、俺はそれでは満足できない。この身体能力なんて所詮大魔王時代の残り物のようなものなのだ。それに頻繁には使えない。
それに、俺は密かにどうせなら魔術で倒したかった思いもあった。
大魔王の力を使ってしまったのは、目の前の楓学園長のレベルが桁違いだと戦闘本能で理解していたからだ。
「…それでは駄目だ」
「そうか。でも君のその力は誇れるものだよ。隠すこともないように思えるけれどね」
そう楓学園長は言うが見当違いだ。
「…どうしても隠さなければならない事情があるんだよ」
俺がそうつぶやくと楓学園長は不思議そうな顔をした。
「なら、なぜ私との戦いで隠さなかったんだい?」
それはすでに答えが出ている。
「…それはお前が異次元だからだよ」
俺はこれまでで一つ改めたことがあった。
試験の時に、世界最強クラスの人間がこの程度ならば人類も弱くなったものだと思ったことがあった。けれど、それは全くの見当違いだった。むしろ、世界最強クラスのレベルは少し上がっているように思える。
ただ、かなりの少数精鋭となってしまっているようだけど。
「それはありがとう」
楓学園長はその幼い顔を満面の笑みで埋め尽くした。
そんな様子を見ていると、やっぱり学園長には見えないなと思った。
「ひとまずそれは置いておいて、君のランクを決めなければならないの。君の実力的にかなり上のほうかと思ったけどなんかかなり特殊に感じた。だから、いま思いついたランクにするね」
「…今思いついたランク…?」
「君のランクはZランクだ」
「Z…?」
「そう、闇が深くて不思議な感じからしてそう思ったんだ。Zランクは異例中の異例だよ。レベル的にはAランクに匹敵するかな」
Zランク。
それが俺の新しいランクだった。
「もっとも、教室やほかランクが関係するものはすべて、Bランク基準だけどいいよね?」
「…まあ今更そこを変えるのもめんどくさいしな」
「うん」
楓学園長は首を大きく振ってうなずいた。
「それじゃ、この世界から現世に戻らないとね」
楓学園長がそう言った直後、来た時と同様に白い閃光に包まれた。
再び意識が戻った時には学園長室に来ていた。
「おかえり」
俺は立ち上がり、この部屋を見渡した。
「夢の中の私はどうだった?」
「夢の中?」
「君は閃光に包まれてあの世界に転移したように感じたと思うけど実は夢だったんだ」
「そうなのか」
「うん。ちなみに、夢の中で起きたことはすべて私に情報として送られてきてるから安心していいよ」
つまり、俺のランクがZに決まったこともとんでもない身体能力を持っていることも知っているというわけか。
「…ちなみに、夢の中だったからあんなに強かったのか?」
「いや、夢の中の私は現実の世界の私に基づいて顕現しているから、ありのままの実力だよ」
現実でもあんな強さなのか。俺は正直驚いた。
「じゃあ、必要なこともできたから、教室に戻ってもいいよ」
「ああ」
俺は学園長室のドアを開けて教室に戻ろうとした。
「…なあ教室ってどこだ?」
「…え?」
今日、強烈な攻撃を浴びても驚かなかった楓学園長がはじめて驚いた瞬間だった。
俺が教室についたころにはきっと結構時間がたっているだろうなと自然と思っていたが予想と反してまだランク決めがされている途中だった。
俺が教室に入った瞬間、一気に視線がこちらに向く。
「…なんだ?」
「お、おい、ランクはどうなったんだよお前」
突然近くにいた男に声をかけられた。
俺はさも当たり前のように言った。
「ああ、Zランクになった」
といった瞬間、教室の中は静止画のように一瞬の静寂が訪れた。
「…は?」
近くにいた男は理解できないという風に眼を見開いていた。
周りのやつらも同じで全員同じ顔をしていた。
「なんだよ、どうしたんだ急に」
俺がそう問いかけると教室は急にざわざわとし始めた。
俺は理解できなかったため、近くの男に説明を求めた。
「おい、これどういうことだ?」
「お前Zランクが何なのかわかってないのか?」
「何のことだ?」
そして、男はその言葉を紡ぐ。
「Zランクはこの世界の頂点に立ち、世界を救う英雄にのみ与えられるランクなんだよ」
と。
世界を救う英雄のみ与えられるランク。これがどういうことを意味するのでしょうか。わかりやすいかもしれませんが今後でどんどん明かしていきます。読み続けてくれると有難いです




