02-01 街での生活が始まる★
やっと二章に入りました。
この章では主に北の僻地を離れて街の生活になります。
20170724 改訂
2021 0725 手直し
2024 0209 手直し
……。
……。
そこは音のない世界……。
小さな身体に黒髪、そして大きな目で上目使いをしてから、屈託のない笑顔を見せる。
小さな肩、いろいろ控えめな身体の女性がベンチに座っていて、なにか一生懸命になって話しているが……、声は聞こえない。
いや、これはアリエルが心から待ち望んでいた癒しの空間、自分がまだ日本人だったころの思い出なのか、それとも脳が作り出した幻影なのか。そんなことは些末なことだと思っている。なにしろ美月の夢だ。音声が聞こえないのは残念だが、記憶の中の美月で補填できる。
記憶は再生しすぎると劣化するらしい、確かに色褪せてセピア色になりつつあるのかもしれない。
スムーズに動く動画ではなく、もう、ほとんど静止画でしか笑いかけてはくれない。やはり薄れてきてる。
10年たった。この世界に来てもう10年たったのに、記憶の中の美月も、いまはもう28歳になっているはず。だけど自分はというとまだ日本に帰るための方策を何一つ、始めようともしていない。
近頃は再生することが困難になりつつあるこの美月の記憶がアリエルのメンタルを支えている。思い出せなくなってるわけじゃなく、記憶が曖昧になりつつあるようだ。
美月と喧嘩した記憶はあるけれど、怒ったときの顔がフラッシュバックすると、なぜか優しく微笑んでいる。アリエルはもう希望的観測でしか思い出を引き出せなくなっている。
美しい記憶は存在理由に、ふたりで歩いたナトリウムライトに照らし出された夜の思い出は、アリエルが生きていく心の支えになっていた。
そんな大切な記憶が薄れていく恐怖と、思い出から切り離されていく孤独。
劣化する記憶とは裏腹に、美化される思い出。
そこは見たこともない夜の平原、一面を覆いつくすクローバーに似た背の低い植物が群生する丘に、満月の蒼い光の下、美月がぺたんと座っていて……。
泣いている。
思わず声をかける。
「ねえ、なぜ泣いているの?」
何も答えない。美月はアリエルに気付くことなく、月を見ながら涙を流している。
美月が悲しんでる。寂しがってる。
手を伸ばすけれど、美月に届かない。
ザワザワと突風が吹いて、美月の髪が翻ったところで、ハッと現実に引き戻された。
ぐっすり、ぐっすりと眠っていたようだ。
目が覚めたら朝だったと、そんな表現しかできない。カーテンの隙間から外の光が見えるけれど、かなりの早朝か。まだ空は藍色で光も鈍いようだ。
今の季節、日の出は午前3時台なんだけど……。いや、マローニはノーデンリヒト砦と比べるとかなり南に位置するからそれほどでもないかもしれない。
そんなことよりも目の前に……アリエルを至福に誘う豊かな双丘があって……お、起きられない。
がっちりと抱っこホールドが決まっていて身動きが取れなくなっている。
もう10歳なんだからさすがに乳離れしないと、おねしょと同じぐらい恥ずかしい。
いや、乳離れという言葉自体がナンセンスなのかもしれない。だって男は思春期になるともうおっぱいに釘付けになってしまうし、大人になったら自分専用のおっぱいが居て当然なのだから、別に乳離れなんかしなくてもいいのだ。
アリエルはビアンカの豊かな胸を思う存分顔で味わった。
人って、いつの間にか一人で寝て、一人で起きて、そして一人で歩くようになるのだけど、中身いい年したおっさんが子供を演じてきて分かったことがある。
抱き締められるってのは、本当に気持ちがいいものだ。
破格の安心感に包まれるから、悪夢を見ることもない。
そういえばまた美月の夢をみた。こんな巨乳に抱かれて寝て、どうやればあんな貧乳ちっぱいの夢を見られるのか不思議だけど……なんだか寂しい夢だった。10年前のままのちっこい美月だった。
次、美月が寂しそうな顔をして夢に出てきたら、何も言わずに抱き締めてやろう。現実でそんなことしたら鉄拳制裁されて前歯折られそうだけど、夢の中ならきっと大丈夫だ。
もし子供が出来たら、いや、女の子ができたら、年頃になっても毎日抱き締めて寝てあげよう。
なかなかに気持ちのいいもんだ。相手はすげえ嫌がるだろうけどね。
身体の疲れはない。マナが足りない訳でもなさそう。でもなぜか精神的に疲れているみたいなので、もうしばらくビアンカの胸に甘えておこう。これが、思ったよりずっと癒しになる。
抱き締めた手は温かい、忘れかけていた安堵感あふれ出して微睡の海へと引きずり込まれていく。ああ、いいな。このまま二度寝しよう。なんという幸福なんだろう。
前世の自分に自慢したいと思った。
―― コンコン
ノックの音がした。
「朝食の準備ができました」
至福の微睡はポーシャの声で終わりを告げた。
アリエルがゆっくり目を開けると、抱き締めながらずっと見つめている紺碧の双眸と目が合った。
近い。
何を意識したのか、思わず視線を逸らしてしまうほど近い。たぶん、トリトンが帰れないんで、ビアンカも寂しいのだろう。
「母さん、おはよう」
「おはよ。エル」
ビアンカの胸に顔をうずめたのはいつ以来だ……。
うーん、久しぶりだとかなり照れくさい。ビアンカも疲れてたのかな。
てかベッドのすぐ脇にポーシャが控えてるってのに……マザコンみたいじゃないか。
「あちゃ、外着のままで寝てしまったようです。先に身体を拭いて着替えてから朝食でいい?」
「分かりました。では、お召し代えを用意します」
何も見なかったと、そして何事もなかったかのようにポーシャが着替えを取りに行った。
空気を入れ替えるためにカーテンを引き、窓を開けるとそこは屋敷のぐるりを囲む格子のフェンスがあって、その向こう側は大通りになっていた。ノーデンリヒトなら鳥の鳴き声なんかが朝を告げてくれるのだけど、街ではそこまで優雅な目覚ましは期待できないようだ。でも、朝の空気は清々しく、温かい部屋の空気と入れ替えに凛とした頬に冷たい空気を迎え入れた。
アリエルはストレージに常備してある手桶と手拭を出すと『セノーテ』で手拭を濡らして手桶の上で絞ってから身体を拭く。外でも砦でも、いつもだいたいこうやって朝の身嗜みを整えてる。手拭を絞ったまではいいけれど、さすがによそ様の客間に干すような場所がない。しゃあないなあ……と湿った手拭を[ストレージ]にポイッと放り込んだところだ。
ビアンカはベッドに深く腰掛けたままだが、アリエルの一挙手一投足を見て感心した様子だ。
「ん? 母さん、何?」
「エルはまだ10歳なのに、もうお父さんよりもちゃんとしているのね」
「ポーシャに叩き込まれたので」
「そうね」とビアンカはまた微笑んでみせた。
なにしろ同じく子どものころからポーシャに叩き込まれたトリトンが朝の身だしなみを出来ないのだから。
「ノーデンリヒトの関所にお風呂作っておいたので、砦に居るときみたいなことはないと思うけど……。通行人から丸見えのところに露天風呂だけどね。いっぺん見に行きますか?」
ビアンカはけらけらとよく笑い、そして「やだ」と一蹴されてしまった。
トリトンに会いに行くかい? という意味で言ったのだけど、それを知ってか知らずか、オッサン連中の露天風呂を覗きに行こうかと受け取ったのだろう、あっさりと断られてしまった。
やっぱりビアンカは可愛い。
ビアンカはドレッサーのある部屋に支度をしにいったので、アリエルはポーシャが用意してくれた服に着替えた。ストレージから、あちこち剣で斬られ、エーギルにぶっ飛ばされボロボロになり、返り血でどす黒くなった服を出して手渡した。
「汚しちゃってごめん。これもうダメかな」
「ささ、それを見られると奥様が心配しますので私が処分しておきます」
ポーシャの配慮に感謝しつつ、そのまま会食場へ案内してもらう。
たかだか会食場に行くのに案内が必要だなんて、本物の貴族の家はすごい。
会食場は階段を下りて一階の玄関ホールから左手の大部屋だった。
アリエルはポーシャに連れられて、着座する席まで指定されることになった。
そしてそこにはテーブルにナプキンとグラスとカトラリーだけが置いてあった。
もしかして前菜から次々に出てくるタイプの食事か……、これは苦手かもしれない。
テーブルマナー満足に覚えてないのがバレたらポーシャに怒られる。
ん? 上座にもカトラリーが用意されている。別宅を間借りさせてもらうと聞いていたけど、伯父さん居るのか……。
とか考えていたら、その席の主はすぐに現れた。
アリエルはすぐさま席を立ち、挨拶をした。
「あ、初めまして、アリエルです。昨夜は疲れて眠ってしまい、ご挨拶が遅れました」
「ああ、そんな、かしこまらんでもいい。私はシャルナクだ。知ってるとは思うが、キミの父さんの兄だから、キミからすると伯父にあたる。よろしくな。さあ、椅子に掛けて……」
シャルナク・ベルセリウス。
ボトランジュのベルセリウス家は五男一女であると聞いたことがある。上の5人が男で、一番下に妹がいるという。その五男坊がトリトンで、シャルナクさんは次男だという話だ。トリトンとは歳が10歳ほど離れていて、奥さんはとても身体が弱くて満足に家から出ることも出来ないんだとか。
金髪に碧眼、トリトンよりも一回り大きな体躯をしているが、身体は細くスマートで、とくに筋肉が目立つわけでもない。
「お世話になります」
「ああ、堅っ苦しいのは苦手なんだ。ゆるくいこう」
シャルナクは値踏みするようにアリエルのつま先から頭のてっぺんまでを舐めるような視線で見たあと、アリエルの訝しむ視線に気付いた。
「いや、すまん。あのトリトンをして天才だ天才だというものだから会ってみたかったのだ」
「天才……ですか。くすぐったいです。俺はそんな大それたものではありませんよ」
「アリエルくん、謙遜は美徳じゃないぞ?」
ここで褒められたら謙遜するよりも、胸を張ってありがとうございますと礼を言うほうが良いのだそうだ。日本人のくせが抜けてないから照れくさい。
シャルナクさんに言われた通り、席に着くと、もうひとり、とても若い男が食堂に入ってきた。
見たところ14、5歳といったところ。ベルセリウス家の男らしく、見事なまでの金髪に、碧眼だった。体躯は細身ではあるが大胸筋は発達している。鍛えていることだけは分かる。この人も軍人を志しているのだろうか。
おっと、初対面の相手を値踏みするばかりでは失礼にあたる。
「初めまして、アリエルです。よろしくお願いします」
「あ、こちらこそよろしく。俺はプロスペロー。アリエルくんとは従兄になるな。プロスと呼んでくれ。14歳だから歳あんまり変わらないしさ」
「じゃあ俺のことはアリエルでもエルでも」
「うん。わかった、じゃあアリエルと呼ぶよ。……しかし、あのトリトンおじさんが砦の兵士より強いって言ってたぐらいだから、相当使えるんだろ?」
「砦の兵士が守備隊長の息子に本気で打ち込んでくるわけがないですから、その話もちょっと大きくなってますよね。先日も熊の獣人にコテンパンに負けましたし、過大評価されると困ります」
プロスペローはアリエルの話を聞いて、おいそれと信じることはできなかった。何しろベアーグ族の戦士というのは魔人族に次ぐ危険度超Sクラスの激ヤバ獣人だから。
「父さん、熊の獣人っていうと、ベアーグ?」
「ああ、凄いなアリエルくんは。10歳で実戦を経験して無事に帰ってきた。将来はキミも王国騎士かな。トリトンも優秀な跡取りが出来て鼻が高いだろうな」
アリエルは褒められて謙遜するのは美徳じゃないと言われたが、いくらなんでも褒められすぎるとあとがしんどいことも承知している。過大評価されるとあとが面倒くさいので、今後のためにも、自分の考えをハッキリ言っておいた方がいいだろう。
「いえ、俺は、軍属になる気はありません。もう戦争には関わらないと約束しましたし」
隣を見るとビアンカは満足そうにうんうんと頷いている。アリエルは軍属にはならないと約束したし、そもそも戦争なんかもうまっぴらゴメンだと思っている。
ここまで話すと給仕のメイドさんがワゴンで朝食を運んできた。マフィンとバターとチーズと、なんだろう? ハムかな? ノーデンリヒトと比べたらここはだいぶ豊かな土地のようで、朝食についてくるオカズの品数に驚きを隠せない。
マフィンとかハムとか、転生して初めて口に入ったよ。本当に懐かしい、これは前世の味だ。
っと、真っ先にハムに手を出してしまった。これは行儀が悪かったか。しかしシャルナク叔父さんは好きに食べていいと言った。
話によるとマローニのベルセリウス家では食事をしながら雑談するのだとか。
助かった。マジ助かった。
「ざっくばらんでいいだろ?」なんて言われてしまうと頷くしかない。
食事するときの話題としてはちょっとアレだけど、アリエルたちがマローニに来る途中、襲ってきた盗賊のことを聞かれた。衛兵からの報告で避難民の人たちから事情聴取したらみんな口をそろえて領主の息子が盗賊の身ぐるみを剥いで馬と荷車を奪ってくれたんだとか言ってるらしい。それでいま早馬を飛ばさせて現場確認に向かわせてるという。
……これは仕方がない。もうバレてる。
「申し訳ありませんでした。それは事実です。避難民たちの中には長旅で足や膝を痛めた者や疲労のたまった女性や子供たちもいて、交代で馬車に乗せたりしていましたが、思っていたよりも旅慣れていない者が多くて、どうしようかと考えていたとき、盗賊の襲撃に遭いまして……。その、何と言いますか、盗賊なんだから逆に奪ってもいいかな……と」
「いや、構わん。盗賊行為を働いた以上は殺されても文句は言わせない。私はね、ボトランジュ領に盗賊がいて、あろうことか、ビアンカさんやアリエルくんたち避難民を襲ったことが問題だと言ってるんだよ。ボトランジュでは盗賊なんてめったに出ないんだがね。すまんな、そして礼を言わせてくれ。よくぞ家族と領民を守ってくれた」
「いえ、お手数をおかけして、申し訳ありませんでした」
「しかし、私はキミが盗賊から身ぐるみ剥いだって聞いたとき、笑ってしまったよ。トリトンはね、昔、ビアンカさんが人さらいに襲われてるところを助けたんだよな。あれ? 聞いてないのか」
「聞かせてほしいですね」
「トリトンは子どものころから腕っぷしだけは強くてね。領都セカでは有名なガキ大将だったんだ。ビアンカさんの実家は裕福な商家だったから、人さらいにさらわれそうになってるところ、トリトンが偶然通りかかって、その人さらいをコテンパンにのして、身ぐるみ剥がして裸にひんむいて、さらに三人まとめて縛って転がしたんだと。……トリトンから聞いたよ、そのときビアンカさんは人さらいから剣を奪って大立ち回りしてたらしいじゃないか……。そしてビアンカさんの決め台詞が……」
「ちょっと、お義兄さん、やめてください……」
「あはは、ビアンカさん、アリエルくんはトリトンとビアンカさんの子だ。血は争えないよ。アリエルくん、その辺の話は、ポーシャがよく知ってるから、機会があったら聞いてみればいい」
「はい。でも、母さんはああ見えてお転婆だと聞いてるから、大丈夫だよ?」
「……トリトンね。トリトンが言ったのね……」
ビアンカの目がすわった。……なるほど。こういうことか。
「ところで、アリエルくん、街は初めてだろう? 案内しようか?」
「あ、プロスさん、俺今日は何もなければ冒険者ギルドに行って登録したいと思ってました。案内してくれますか?」
「愛称に敬称いらないでしょ。プロスでいいよアリエル。せっかく年の近いイトコなんだからさ、仲よくしよう」
プロスに聞いた話だと、10歳なら冒険者になる資格はあるけれど、冒険者ギルドに集まる高ランクの依頼はたぶん戦場に出ている兵士と同じぐらい危険なのだとか。
旅をして暮らしたいと思っているから、職業は冒険者がちょうどいいと思っていたけど、10歳の子どもに高難度の依頼を斡旋することはないらしい。
アリエルは少し残念に思った。
トリトンもビアンカも、アリエルが冒険者になることは同意している。王国騎士や領兵なんかになるよりはいくらも自由な生き方ができるからなんだそうだ。戦争に関わってほしくないという事は何度も何度も、口を酸っぱくして言ってるので、冒険者ほど自由であれば他国に逃げても構わないからだ。
「そうか、なら食事が終わったら執務室に来なさい。冒険者ギルドの支部長に紹介状を書いてあげよう。……そうだな、10歳だからってナメんなよ! でいいな」
食卓が笑いに包まれる。……いい雰囲気だなこの家。
あともう少し狭ければ居心地もいいのだろうけれど……。
「ごちそうさまでした」
朝食は談笑のうちに終わった。親戚がいてくれるというのは心強く、大きな安心感がある。
シャルナクおじさんが執務室で紹介状を書いてくれてる間、庭で剣を振ることにした。いや、ここ数日は疲れてすっぽかしてたし、エーギルに手も足も出なかったという実力不足も露呈したことだし。こういう鍛錬は毎日続けることこそ意味があるんだと美月も言ってた。サボってたんじゃただでも足りない腕前がどんどん鈍ってしまう。
プロスがついてきた。興味深そうにアリエルを見ていて、[ストレージ]に収納されていた剣を出したところさっそく食いついた。
「アリエルー? ちょっといいか? いつ剣を?」
「ああ、魔法でちょっと収納してただけだよ」
ストレージの説明はできない。どうせわかっちゃもらえないんだからもう『魔法』の一言で済ませることにした。食い下がってくるかな? と思ったけど、プロスはそれで納得してくれたようだ。
しかしプロスペローがアリエルを見る眼差しが一瞬だけ厳しくなったことにアリエル本人は少しも気付かなかった。
そしてアリエルは剣を振る。いつもの日課とはいえ、見られているとちょっとやりづらい。
素振りで体が温まってきたら、二手、三手のコンビネーションに移行する。
『継続は力』と言うのは大げさでもなんでもなく、ただの事実だ。
エーギルに殴られて意識が半分飛んでしまった。たぶん、1秒ぐらい意識を失っていたはずだ。戦場で1秒意識を失うというのは致命的だけど、それを防ぐ手段は、たぶんあまりない。
だから最良の動きを身体に覚え込ませるだけだ。
やってることは以前と変わらない。ただ、毎日の積み重ねを続けるしかない。
日課の素振りがひとセット終わり、汗を拭っているとプロスが声をかけてきた。
「お見事。毎日それをしているのかい?」
全然お見事じゃないのだけれど、プロスはお世辞がうまいのか、話していてなかなかに気分がよくなってきた。
「だいたい防御魔法を常時展開してるってだけで結構な鍛錬になるんだから、剣を振るのは朝か夕のどちらかだけで十分じゃないかとは思うんだけどね」
「防御魔法を常時展開? マジかよ、俺だったらぶっ倒れてるな……さて、そろそろ行こうか。紹介状できてる頃だ」
「あ、はい。じゃあ冒険者ギルド案内してほしいな」




