第64話 竜人の町
「えーっと。そうだね。まずはこの町を見て回ろうか。最寄りってったって、結構距離があるし、装備や道具を整えていったほうがいいでしょ」
ヨードュンは後ろ歩きをしながら、ついていく俺たちに話しかける。
「そうですね。そうするのがいいと思います」
「僕も賛成だよ」
それに続いて残りの人たちもうなずく。
「よし。じゃあまずは道具屋に行ってみようか。でも、あんまり派手なことはやめてね。君たちが人間ってばれたら面倒だし」
「大丈夫だと思います。あまり問題は起こさないパーティーだと思いますし」
それなら心強いと、ヨードュンはいうと、大通りを西に向かって歩き出した。
港から離れていくにつれて町にはより大きな建物が目立つようになってきた。そこにはあの不気味なタワーも含まれていた。
やっぱり大陸が違っても、このタワーだけは一緒なんだな。でも、町が大きいにしては、タワーは小さいような……
「タワーってちょっと小さくない?」
テスラが俺が思っていた質問を投げかけてくれる。
「ああ。それはね。この町には3つタワーがあるからだよ。ここともう少し北に一つ。後は、南西の方向に一つあったかな? うん。それは見えるね」
そういって指さした方向にはうっすらと黒色の建物が立っていた。
あれは明らかにこの建物よりも大きく、下手したら、ラクトのタワーよりも大きいかもしれない。
「あそこに見えるのが一番大きいやつですか?」
それにヨードュンは首を振る。
「あれが二番だよ。一番大きいのは北にあるやつ。あれは外の見た目はあまり大きくないけど空間魔法をふんだんに使っているから。異常に仲が広くなっているんだよ」
まじか。なんてスケールなんだと感心しつつ、歩を進めていると、一つの建物の前で立ち止まった。
「ここだよ。たぶんここが一丸大きい道具屋だと思うよ。道具屋っていうか雑貨屋なんだけどね」
そういわれて目の前の建物を見ると、かなり高くそびえたっていた。それこそひとつ目に見たタワーくらいは有りそうだった。
「うーんそうだね。必要な道具って言ったら、回復薬とあとは魔物除けの薬とかかな」
「魔物とか出るんですか?」
「うん。普通に出るよ」
へぇ。大陸が違うと魔物の出現具合も変わってくるんだな。と思っていると、テュケーが何とも言いたそうなかおでちかづいてきて、
「ここに魔物が多い理由は、大陸が違うからっていうより、討伐されてないからよ」
「討伐されてない? どういうこと?」
「人間や竜人なんかはともかく、ほかの弱い種族たちは、あえて村の周りの魔物たちを放置して、逆に防御として使っているのよ。ほら、今って戦争中だから、魔物の手も借りたいって状況なのよね」
「あー。なるほどな。それで魔物がたくさんいるってことか。でもその村は襲われないのか?」
「ええ。大丈夫よ。そもそも村自体に、魔物除けの魔法を放っているのよ。ラクトやこの町みたいに大きな町だとしんどいけど、小さな村なんかだったら、一人で補えるくらいだわ。かといって本当に音ゲーが苦手な種族は、立地のいい場所に村を作っているみたいね」
ほうほう。ちゃんと生活していくためにいろいろ考えてあるんだな。そう感心していると、ヨードュンが話しかけくる。
「一応必要なものは買い終わったけど、何か見てみる?」
「あ、そうですね。少しだけ見て回りたいと思います」
建物の中に入っていくと、中には人がいっぱいいた。その姿はまったくもって人間と変わらなかった。
尻尾があるわけでもないし、角が生えているわけでもない。まあヨードュンを見た時からそういうことには気づいてはいたが。
店内は思っていた以上に広かった。そこには大きな鍋や、物干しざおといった日用品も数多く置いてあった。
ある棚を見ると様々な液体が入った瓶が並んでいた。
そのうちの一つをとってテュケーに質問する。
「これはなんだ?」
「ああ、それはたぶん素早さを上げるポーションだと思うわ」
「じゃあこれは?」
「それは魔法のポーションね。その中には魔法一発分の魔力が詰め込まれているの。ええっと。それは……せいでんき☆ぱにっくみたいね。たぶんそれが一番安い魔法だと思うわ」
やっぱり最弱なのか……。じゃあ一番高いのってどれだろうかと探し回ると一つ高いものが見つかった。
「おいおい。これ10万チューンだぞ。いったい何の魔法なんだ?」
「ええっと。これは雷霆っぽいわね」
「は? 雷霆? それって俺らがよく使っている魔法だよな。そんなに高いのか?」
「まあ魔法を詰めるのが難しいしね。そもそもそれだけ強力な魔法を詰め込めるためにはそれなりに強度のある瓶が必要になってくるし……」
「なるほど。ちなみにこれってどうやって使うんだ?」
「たぶん飲み薬ね。自分がその魔法を持っていない状態で、飲めば復活するんだと思うわ」
ほうほう。まあ面白そうだけどさすがに高すぎるからな。これは返しておこうか。
そう思って瓶を棚に戻そうとした瞬間、手が滑った。
ふぁ!? おいおい! さすがにまずいだろ! これは!!
盛大な音を立てて瓶が割れる。その音に気付いた店員がすぐに駆け寄る。
「ちょっと! 君! 控室に来なさい!」
やっべぇ……さすがにこれはまずい気がする。まさかおれがやってしまうとは……
その後、残りのメンバーも集まってきた。そして一緒に控室に向かってくれた。




