第54話 特殊クエスト
三章に入りました
「お、居たな。ちょっと来てくれないか?」
タルポ戦から一週間後、適当に選んだ軽いクエストを終えて、報告に行った時のことだ。騎士団長に呼び止められた。団長はいつも以上に深刻な顔をしていて、なんだか疲れている様子だった。
「何かあったんのですか?」
俺は団長が進む道に従いながら、おずおずと尋ねる。
団長はここじゃ話せないと言って、路地裏まで連れて行った。もちろんテュケーやプシケ、イリスも一緒だ。
「いや、何というか……王都から連絡があったんだ」
「王都から? 一体何の連絡だったんですか?」
団長はあまり言いたくないのか、少し躊躇った後口を開く。
「王都からと連絡によると、西の大陸に魔王軍幹部らしき人が現れたらしいんだ。そいつをどうにかしてくれって連絡なんだ」
魔王軍幹部? へぇ、そんな風に情報が入ってくることがあるんだな。
「でも、何で騎士団がしないのよ? 増援を送るくらい問題ないでしょう?」
テュケーが腕を組みながら尋ねる。
「いや、西の大陸は未だ種族間での内戦が続いていてだな。その中に人間の増援を送るなんて知れたら、多種族の反感を買いかねない。だから騎士団でない人々を秘密裏に送ろうってわけだ」
ふーむ。何だかめんどくさそうだなぁ。正直あんまり魔王軍幹部とは関わりたくないんだけどな。
「みんなどうする?」
「私は行ってもいいわよ。どうせここに居たって最近あまりいいクエストもないしね」
ほうほう。テュケーは賛成か。まあ、確かに最近は薬草を取ってきたり、害虫駆除だったりでいいクエストは受けられてないからなぁ。
「僕も行きたいな。寄りたいところもあるし」
おっ。プシケも賛成か。かなり乗り気みたいだな。じゃあ後はイリスだな。
「正直……あまり行きたくないです」
ん? イリスはまさかの反対ってことか?
「何で? それだったら待機していてくれてもいいけど」
「いえ、皆さんがいくのなら行きますよ。行きたくないだけで、行けないわけではないので」
「お? そうなのか? まあ、それならいいけど」
どうしたんだろ。危険だから止めたいのかな? でもそれだったらもう少し強く言ってきてもおかしくはないと思うんだけどなあ。
「では、4人とも参加ってことでいいな。行くだけで報酬は出るからな。討伐まででなくても何か情報を落としてくれたらいい」
「わかりました。ちなみに行くのは俺たちだけですか?」
団長は首を振る。
「うちの街からは12人出すように言われている。6人6人でパーティを組んでくれたらいい。俺は音ゲー大会に出ていた人を中心に声をかけているんだ。君たちはガイアとか言った女の子を誘ってくれるとありがたい。この街の人なのはわかるが、どこに住んでいるのかはわからないんだ。知り合いだろう?」
「ええ、まあ知り合いですけど、どうでしょうか? 音ゲー大会の時も調子悪そうでしたし、行くかどうかはわかりませんよ」
「いや、それならそれでこちらで人数を合わせるからいい。頼んだぞ」
そう言うと団長は忙しそうに別の場所へ向かっていった。また誰かに声をかけに行くのだろう。
大変そうだなぁ。そういえば団長の実力を知らないんだけど、どれくらいなんだろうか? まあ、街の騎士団長を務めているくらいだから、かなりの実力者だとは思うけど。
「西の大陸かぁ。行くのは初めてだなぁ。内戦が続くって言ってたけど安全なんだろうか?」
「少なくとも安全ではないわね。それぞれの種族がそれぞれ争っているから、それでも人間の勢力は大きいから、人間の街に居れば安全だとは思うけど」
うーむ。なるほどな。あんまり容易に受けるべきじゃなかったかな。まあいいや。
「ところでさ。プシケはどこか寄りたいところがあるって言ってたけど、どこに寄りたいんだ?」
「僕の故郷。西の大陸にあるんだよ」
……知らなかった。いや、あんまり個人の情報とかは聞いたりしないけど、他の大陸とは思ってなかったな。
「あれ? プシケも西の大陸出身だったんですか?」
イリスが驚いたように声を上げる。
おいおい。ってことはまさか。
「私も西の大陸出身なんですよ。何で言ってくれなかったんですか!? っていうかこの大陸の海辺のフルクの街出身って言ってなかったですか!?」
「あー。それ第二の故郷だよ」
もう訳がわからない。てか、イリスもプシケもお互いの出身地言ってなかったのかよ。プシケはともかくイリスも言ってないなんて珍しいな。
「ねぇ。何でプシケはイリスが西の大陸出身って知らなかったの?」
「いやー。出身地とかってあまり興味なかったから聞かなかったんだよね」
あ、なるほどな。確かに興味はなさそうだもんな。
しかし、二人の出身地か。物騒だけど楽しそうだよな。というかそうなってくるとプシケの故郷って言ったらヴァンパイアの街とかなのかな? ちょっと怖いけどそれは楽しみだな。
「で、この後どうするの? 私はガイアの元に行こうと思うけど」
テュケーが話を戻して、これからの話をしようとする。
「あー。なら俺もそっちについて行くわ。イリスとプシケは?」
すると二人で相談を始める。少し話しただけで意見がまとまったらしい。
「僕たちはランクを上げに行くよ。少しでも強くなった方がいいしね」
「分かった。じゃあとりあえず解散だな」
こうして俺たちはそれぞれの目的地に向かった。




